第2話 デートのお誘い
二人と別れて、恵美は帰宅。
玄関の扉を開いて「ただいま~。」というと、家の中から母親と兄弟たちの「おかえり。」の声が聞こえてきた。
その声の方向の扉を開くとズラッと兄弟たちがいる。
母、恵子ははキッチンで父、和斗の酒の友、おつまみを作っている。
兄弟たちは、リビングでゲームしたり、テレビ見てたりしてた。
兄、恵斗15歳。中三。顔立ちは父似のスポーツマン。彼女有。
妹、和11歳。小五。母親に似た美女でスラリとした体形。小六の彼氏有。
弟、恵悟9歳。小三。未熟児で生まれたために母の実家、渡良瀬の祖父に溺愛され、将来は渡良瀬の家の跡取りとされている。
妹、和音7歳。小一。ひょうきんで明るい我が家のアイドル。今日もテンションが高い。
兄弟たちは先に食事を済ませたようだ。恵美はキッチンに入り自分の食事を母にもらいに行った。
自分の食事にはラップがかけられている。それを見ながら母に
「ケイちゃん、今、カズちゃんに送ってきてもらったんだぁ。」
「あら。お父さん忙しいんだから足に使っちゃダメよ??」
母、恵子は専業主婦。44歳。恵美たちが小さい頃は飲み屋でバイトしてた。
だから、恵美たちの夜は近所に住む母の実家…渡良瀬の祖母が見ていた。
でも恵悟が生まれたころから、主婦になった。
和斗も出世して、生活にに困ることはなくなったし、子供の面倒を見るので精いっぱいらしい。
「だって、カズちゃんが言ってきたんだよ?…お!今日はお刺身!…と山芋…。マグロの山かけね。大根のサラダ、あとコンニャクの炒め物…。ははぁ…またダイエットですか。」
「そ…。そしてお父さんの好きなもの。あんたも好きでしょ?」
「大好きでーす。」
「着替えてらっしゃい。」
「はいはーい。」
恵美は、二階の自室へ向かった。ジャージを汚したら母に叱られる。リラックスできるラフな格好に着替えるためだ。
机の上にはスマートフォン。学校に持って行くのは禁止だ。そのために自室に置いてる。
それがチカチカと点滅していた。
点滅色はラインの色だった。
誰だろ…?
ミナミかなぁ…。
あ…上木だ…。
上木からだった。先ほどの友人二人との会話を思い出す。
それにしても学校にスマホを持って行ってはダメなのに連絡をよこすとは禁を破っている。
そういうところも恵美にとっては減点対象だった。
恵美はラインの内容を見てみた。
Line:上木「女バレ、もう上がってたみたいだね。こっちも終わった。」
Line:上木「スタンプ:疲れたぁ~」
Line:上木「スタンプ:ま」
思わずプッと笑ってしまった。採点はプラスマイナスゼロに戻った。
「ま」ってなんだよ…。ふふ…。
と思い、返信を返した。
Line:☆彡メグ「お疲れ」
とそっけない返信。ちなみに“☆彡”は“杉”の字に似ているので好んで使っている。
返信を送った後、ものすごい体力を使ったようにため息をついた。
「ふーーーー。さぁ~って。着替えるかなぁ…。」
と、思うとすぐにまたライン音だった。
Line:上木「今電話してもいい?」
との内容。
あ…既読にしちゃったよ…。
これじゃ、いいって言うしかないじゃん…。
途端にスマホが「ブブブブブブ」と揺れた。
返事してないのに上木からの電話だった。
恵美は仕方なく電話をとった。
「なに?もー。返事してないのに電話してきてさ~。」
「ゴメン。既読になったからサ!はは!」
「はは!じゃないよ。なに?まだゴハン食べてないから手短かに。」
「なんだよ~。冷たいなぁ…。返事も「お疲れ」だけだし…。」
「もう、口がマグロの山かけなんだよぉ。なに?なんなの?」
「聞きたい?」
「切るね。」
プツ。
恵美は面倒くさがってすぐに電話を切った。
あまりにもそっけなさすぎる…。
「は~、おなかすいた…。」
と独り言を言うとまた着信。
「なによ!!」
「ゴメンナサイ。切らないで。」
「要件を言いなさいよ…。なんなの。一個も話し進んでないじゃん。」
「あのさ~。」
「ハイハイ。」
「お祭りの…話し…どうなったかなぁ~…なんて…。」
「あ~…、ハイハイ。」
「どう?行く?行こうよ…?」
「あのさ、男3人って誰と誰くるの?」
「あ、佐川と富沢。」
「おー!トミーくるんだ。トミー!」
「あ、…ウン。」
「トミー笑えるんだよ。この前、なんか変なフフ…なんかね…フフ…変なモノマネしてたの。なんだか分かんないんだけど、メチャクチャ笑えたぁ~。」
「あいつ、面白いよなぁ~。」
「休み時間、変なパントマイムしてた。傑作!」
「へー。」
「ププ。ふふ…あ~…おなかすいたぁ…。」
「今、そいつらとラーメン食ってんだ。」
「へー!いいな~。今、ウチのケイちゃんダイエット中で、そーゆーの食べさせてくれないの。育ち盛りのあたしは、父のおつまみを狙ってるの。」
「ケイちゃんって、お母さんだっけ?」
「そうそう。」
「だから…、あの…二人も返事待ってるんだ。」
「あ~…そっか。行こうかな?どうしようかな?」
「なんで?迷う必要なんてないじゃん。誰か好きな人と行きたいとか?なんて…。」
「あーウン…。」
とっさにウソがでた。脳裏に移ったのは父の和斗だった。
「え…。」
その返事に思わず言葉がつまる上木。
「どした?」
「あ、いや…。じゃ、どうする?」
「うーん。ミナミとミズキには話ししたよ。行きたいみたい。」
「じゃ…行く?」
「ふーーー…。うん。分かった。行く。」
「あ…良かった…。じゃ、二人に言っとくね。」
「ハイハイ。じゃぁね。」
プツ
電話を切った。行く返事をしてしまった。
あ~、行くって言っちゃった…。
ま、いっか。お祭り…行きたかったし。
さーてと…着替え、着替え…。
恵美は着替えて階段を降り、キッチンに向かった。




