第19話 “きゃん”その正体を見せる
次の日、恵美は学校。
そこに美波、瑞希。いつもの三人になっていた。
恵美は自分の机で一人、タメイキをつく。
「はぁ~…もうすぐ夏休みなのに気が重いわ…。」
「ん?どうしたの??」
「うちのカズちゃんとケイちゃん、ただいま別居中…。といっても勘違いからなんだけどね…。」
訳を話す恵美。それを聞いた美波と瑞希、大爆笑の渦を巻く。
「ちょっとぉ…当人たちは、笑い事じゃないんだから…。」
「じゃぁさぁ、あの格好すればいいんじゃない?そして、目の前でメグミの姿に戻ればいいじゃん。」
「あ~!それ、いいねぇ~!…でも、化粧に時間がかかるからなぁ~…部活やってからだと…ちょっと無理かも…。」
「あしたは…何の日?」
「終業式…。…ア…。カズちゃんも休みだから…。」
一計を案じた恵美はその日の部活も終わって帰宅した。
それに遅れて仕事が終わった和斗も帰ってきた。
「ただいま~。」
「オウ!おかえり!明日から休みだね!」
「ふふ…テンション高いなぁ~。そうだよ。明日から何しようかなぁ~。10日もあるからなぁ…。」
「金はあってもヒマはつぶせませんか。」
「ま、友だちと呑みにいったりしようかな??」
「明日は…ケイちゃんの好きな“キャベツの卵”からシュークリーム買って来ててよ。」
“キャベツの卵”はこのM市でも有名な洋菓子店。
中でもシュークリームは絶品なのだ。
「なんで?」
「まぁ、まぁ、後からのお楽しみ。」
「???」
その夜、恵美のスマホに上木からLMが届く。
LM:ヒット「明日は終業式だな!」
LM:メグミン「そうだね。あたしは部活休み!」
LM:ヒット「いいな~。ウチはちょっとだけある。でも早いよ。」
LM:メグミン「そうなんだ。何時くらい?」
LM:ヒット「3時くらいかなぁ?なぁ。メグミン。」
LM:メグミン「なに?」
LM:ヒット「デートしない?部活終わったら。」
LM:メグミン「いいよ。」
LM:メグミン「あ、やっぱダメだ…。用事があった。」
LM:ヒット「え?終日なの?」
LM:メグミン「いや…すぐ終わると思う。」
LM:ヒット「じゃぁ、終わったらでいいじゃん。」
LM:メグミン「そうだね。終わったら連絡するよ。」
LM:ヒット「りょ」
次の日、金曜日。小中学生は終業式。
恵美も早々に家に帰り、自室にこもる。
和斗は買って来たシュークリームを冷蔵庫に入れている。
「ヒマだ…メグのやつなんだって言うんだろ…。」
「ただいま~。」
「オウ。ケイト。」
「メグ、今日部活休みなんでしょ?あいつに飯作らそう…。」
「そうだな。そうしよう。」
そんな相談をしている男二人のリビングのドアの向こうから、恵美の声がする…。
「そんな志の低いこと言ってていいんですかぁ?」
「ん??」
ドアを勢いよくあける恵美。
その姿はあのキャバ嬢“きゃん”だった。
「オラオラオラオラ!男どもぉーー!!」
「わぁーーー!誰だぁ?? え? メ、メグ??」
驚く恵斗の前にポーズをとって
「はぁい。カズちゃんの浮気相手の“きゃん”で~す!お店の方にもいらしてね♡」
「マジかよ…こりゃ分かんねーわ。」
「なんで“きゃん”のカッコしてんの?」
「ニブいなぁ。ケイちゃんの前で変身を解けば、なんだメグだったんじゃん。あっはっはっは。終了。…でしょ?」
恵美の作戦に気付いた和斗は大きく手を打ってニンマリと笑った。
「なるほどォ!行こう!すぐに行こう!」
「シュークリーム!!」
「…そうでした。」
恵美に指摘され、和斗は冷蔵庫から丁寧にシュークリームを引き出し、またもや三人肩を並べて恵子がいる渡良瀬家へ。
先陣を切ってテンション高く恵美が呼び鈴を押す。
家の中から恵子の母の声が聞こえた。
「はーーい。どなたさん??」
といって、玄関を開ける祖母。
「おじゃましまーーす!」
「え?ど、どなた?」
恵美は祖母を押しのけ家の中に。続いて二人も上がり込んだ。
「お義母さん、すいません。お邪魔します。」
「あ、カズちゃん…。あの人は…だれ??」
居間に入り込む、恵美。
ビックリしたのは恵子の父。恵美の祖父。
「あれ?おじいちゃん…ケイちゃんは??」
「は?あんた、勝手に人の家に上がり込んでナニ?」
「もう、おじーちゃんたらぁ!あたしよ!忘れたの??」
祖父は忘れたの?と言われて、思い当たる節があるのか腕を組んで考え込みだした。
「あ、お義父さん。勝手に上がり込んですいません…。ケイちゃんは…。」
「恵子は出かけてるよ。もうすぐ帰ると思うけど…。ところで、この方は…。」
「これが、今回の騒動のオレの浮気相手です。メグミです。」
「そーなのよ。おじいちゃん。ビックリした??」
そう言うと、祖母は気付いたようで
「あ、ふふ…。ホントだ。声はメグミだねぇ…。」
「え?そ、そう??」
そう言われてもなかなかピンとこない祖父。
「ケイコは、カズネを友だちの家に迎えに行ってるのよ。もうすぐ帰ると思うけど…。」
と、祖母が言うと、祖父はポンと手を打った。
「そうかぁ、メグミかぁ。どうだ。メグミ。久々におじいちゃんのヒザに座るか?」
恵美の色気のある格好についつい持ち前の遊び心を出してしまう祖父。だが祖母の睨みが一閃!
「なーんちゃって…。ここは、ケイゴの特等席だからダメでした…。」
その野望を打ち砕いた!
すると、玄関の方から、
「ただいま…。」
「おばーちゃん、ただいまぁ~。おやつあるぅ~??」
元気のない恵子の声と、何も考えていない元気な和音の声だった。
「カズネ!シュークリームあるぞ!」
「あ!お父さんだ!」
「え?」
居間に入ってくる二人。
“きゃん”を見て驚く恵子。座り込んでブルブルと震え泣き出してしまった。
ひょっとして自分を見限って、女を連れてきて残酷に離婚を迫るのでは?
と考えてしまったのだ。
「なんで、その女があたしの家にいるのよぉ!お父さん、追い出してよぉ!ワァァ!ワァァ!」
スクッと立ち上がる恵美。
「ホントにどうしようもない母親だね。」
「はぁ!?」
「ダンナのこともよく分からない、娘の顔をもよく分からないなんて。」
と言って、“きゃん”は付け爪や付け髪をはずし最後に大きなつけまつげを外し、全ての部品を外し終えた。
「どじゃぁぁ~~ん!浮気相手はこのあたしよ!依然変わりなく!」
「そうなんだ。ケイちゃん、この通り。メグミだったんだよ。」
和斗のスマホを取り、自分のスマホからLMのメッセージを送り恵子の顔に近づけた。
LM:きゃん「あたしだよ。ケイちゃん」
「ホラ、この通り。」
そのスマホを見て、恵子はスッと立ち上がった。
「ケイちゃん、シュークリーム食べて、ウチに帰ろうよ…。」
しかし、恵子は廊下にいたまま…。
「ケイちゃん…?」
「許さない…。」
「え??」
「だって、出てけっていったんだよ!!?あたしに…。もう、カズちゃんなんて!…カズちゃんなんて…。」
といって、家を飛び出してしまった。
和斗は居間の入り口で振り向き、みんなに
「ゴメン、追いかける。みんな、食べてて!!」
と言って、外に駆出して行った。




