第18話 生活に必要なもの
家に帰ってくる三人。しかし、先ほどのような和斗ではない。
家の中には誰もいないのに「ただいまぁ♪」と大きく挨拶をした。
まるでそこに恵子がいるかのように。
勝算はある。恵子には必ずもう一度振り向いてもらえる。
大人の男として、ビッとするのだ!
和斗はとりあえず、明日着るであろうYシャツにアイロンをかける。
「すげぇ久々だわ。アイロンかけるの。」
「どんだけケイちゃんだよりの人生送ってんのよ…。」
「本当だなぁ…。」
恵斗は、和斗にこう切り出した。
「お父さん、明日の夕食…多分、メグも部活終わってからだろうから…オレがどうにかしなきゃなんないんだろうけど…。」
「あ、そうだなぁ。」
「あれ貸して。お父さんのカード。」
「あ~…。じゃ、1枚貸してやるわ。こっちは…そんなに入ってないけど…。」
「生活に必要なのも…買っていい??」
「あ、いいよ。お父さん、どんなの買うかよくわかんないから。逆によろしく頼むわ。」
恵斗の目があやしく光る…。すでに一計を案じていたのだ。
ふふふ。思うつぼだ…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日。恵美の部活が終わり家に帰ってくると、騒々しい…。
「ただいま~…。 アレ?みんないるじゃん。どうしたの?ケイちゃんは?」
といって辺りを見回す。恵子の姿はないようだ…。
しかし、リビングのテレビには自分を含めて五人兄弟が勢揃い。
「あ、新しいゲーム機!」
恵斗は、恵美に近づいて
「生活に…必要なもんだろ??」
「ふふ。だね。 ねぇ!おねーちゃんにもやらせて!」
和と恵悟と和音。そして和の彼氏の孝輔。その弟の圭輔がいる。恵悟の親友だ。
七人で楽しく過ごす時間がとても久々に感じた。
その時、玄関のドアが開く。
「たっだいま~♪」
「あ!早いお帰りだ!」
「え?」
和音が玄関に走って和斗を迎える。
和斗は突然のことでびっくりしていた。
「おー!チビたち!帰ってきたのか!」
といって、熱く熱く和音を抱擁した。そして、気付いたように立ち上がり
「え?ケイちゃんは!!」
といって、走り込んで全ての部屋を覗いていた。そんな和斗の腕を恵斗は掴んで
「お母さんはまだ帰ってないよ。」
「あ…そうなのか…。でもなんで…チビたちは…。」
「ジャーーン。新しいゲーム機。今週で夏休みだし…。チビ達がこっちにくれば、お母さんもだんだんこっちにくるだろ?」
「おー!ありがとう…よくやってくれた…。」
「いやいや、いいってこと!」
自分の計略が成功し、得意げな恵斗。
そこに恵美が近づく…。
「うまいこと言っちゃって…。ケイちゃんにダメって言われたから、いないうちにカズちゃんのカードで買うなんて…。それが新しい火種にならなきゃいいんですがぁ~。」
「いいから笑って、いい妹の顔してな。」
「ふふふ…。」
ニコニコしている上の兄妹。
和斗は下の子供たちに聞いてみた。
「チビたちは…どうする?お父さんの家に…泊まってくか?」
和は孝輔とイチャイチャしていたが、振り返って
「ウチは、チビじゃないけど…。ランドセル向こうにあるからなぁ…。学校もコースケの家もこっちからのほうが近いんだけど…。お父さん、早く仲直りしてよねぇ~。」
「ハイ…すいません…。ケイト…飯、みんなの分は…?」
「いやぁ。三人分の弁当しか買ってない…。」
というと、恵悟が
「うん、いいよ。お母さん、ハンバーグ作るって言ってたから…じいちゃんちに行くね。」
「そっか…。お母さんのハンバーグ…。」
「ケイちゃんのハンバーグ…。」
恵美は恵斗と和斗に冷たい視線を向けて
「ホラ!メソメソしない!」
と喝を入れると、二人して大きな声で「ハイ!!」と返事をした。
恵斗が子供たちを引き連れて、渡良瀬の家に行くのを見送る。
しかし、子供たちが来てくれた。それだけでも満足しなくてはと思う和斗。
そのうちに恵斗がハンバーグを皿にラップして持って帰ってきた。
「敵地から食料を奪って来たであります!」
「え?マジ?」
「いや、ウソ。なんかいつもの調子で作りすぎたから持ってけって言われた。」
「でも、じいちゃんもばあちゃんもいるよねぇ?あたしたち3人だから…余っても1個じゃない?ホントに…。」
「作りすぎたのかなぁ…。」
顔を見合わせる三人。
「まぁ、いいじゃんいいじゃん。食べよう食べよう。」
三人だけの晩餐を始める。
「まぁ~、このくらいちっぽけな団らんもいいんじゃない?さっぱりして。」
「まぁ…そうだな。いっつも熱気がすごいもんなぁ。」
「そうだ。もう夏休みだね。」
恵美がそう言うと和斗が
「おう。いつから?」
「今日、水曜だから…金曜の終業式終わったら。」
「あ、マジ?お父さんは金曜日から夏休み。」
「なんで??ああ、去年もそうだったっけ??」
「そう。重役は4人いるんだけど、社長と副社長がお盆に休みとるのね。でもウチの会社は盆休み関係ないからその間重役がでるのよ。毎年お父さんがその役なの。だから7月に長期休暇があるのだ!」
「へー。じゃ、いいね。」
「オウ。今年はどこにいこうか…。」
和斗はそう言いかけて言葉を止めた。
「ま、吉岡の実家の墓参りしにいくかぁ。お前達も来る?」
吉岡市は和斗の実家がある場所だ。
「杉沢の実家かぁ。久しぶりだから行こうかな?」
「あたしは部活があるからなぁ…。終業式だけなのよ。部活休みなのは。」
「そっか…。」




