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第17話 信用できない

玄関の扉がゆっくりと開く。

ズィっと顔を出してきたのは、義父だった。


「おじいちゃん…。」


「ま…そこにいてもなんだから…恵斗と恵美は中に入りなさい。」


恵斗は返事をして中に入っていった。恵斗には作戦があった。恵子の元に行ってただあれば恵美だったと伝えるだけだが。

義父は、和斗の背中にそっと触れて庭のほうに体を向けた。


「カズトは…ちょっと、外で話ししよう。」


「は、はい…。」


大きな庭石の並ぶ庭園だ。少し日の影になるぶどう棚の下に連れて行かれる和斗。

恵美も近くで二人の声を聞いていた。


「カズト。一時の気の迷いなんだよな?男なんだから…ちょっとはその浮ついた気持ちになるのも分かる…。オマエは逆に完璧すぎるからよくない。顔立ちも整ってるし、仕事もできるし、義理の両親との関係も良好だよな?」


「はい…。」


「娘のことを今まで一途に愛してくれてたことも知ってるから、分かってる…。どうなんだ?若い娘に…ちょっとだけ…ツバつけとこうと思ったのか?」


「いえ!そんな!オレ、浮気なんてしてません!」


「なんか…恵子は喫茶店で…その現場で…話しを聞いてたらしいぞ?その…まぁ…なんだ…会話の内容は、その若い娘に本気でもう一線を越えた仲で、愛人なのか?」


「なんでそんな話しになってるんですか!あれは…あれはメグなんです!メグミなんです!」


そこで、恵美もゆっくりと二人に近づいて行った。


「そーだよ。おじいちゃん。あれ、あたしなの…。ゴメンね。こんなオオゴトになっちゃって…。」


「え?ん??」



その頃、恵斗は家の中で恵子に話しをしていた。

恵子はボロボロの様相で、髪の毛すらとかしていない。うつむいたまま…。

歳も一気に老けたようで普段よりも10も20も年を取ったように見えた。


「お母さん、帰って来なよ…。お父さんショック過ぎて、仕事も行ってないんだよ?」


「………。」


「それに…、その…浮気相手?そんなの存在しないんだよ。あれ、メグミなんだってさぁ。」


ピクッと恵子の肩が動いた。


そしてスクッと立ち上がり、玄関に向かって歩き出す。

話しが分かってもらえたと思い恵斗はホッとしてそれについていった。



そして、庭園の3人。


「なんで、メグミを浮気相手と勘違いするんだ?」


「…化粧してたの。その…仮装よ。仮装…。」


「ほんとうかぁ?にわかには信じられんが…。」


「本当なんです!信じてくださぁい!」


和斗の真剣な表情に、義父は大きくため息をついた。


「まーカズトがそういうなら、そうなんだろう…。ま、たかだが一度くらいの浮気で…。」


そこへ、恵子がはだしのままで、和斗の前に立つ。


「あは…ケイちゃんだ…。」


恵斗の説得が功を奏したと思い、思わず笑みがこぼれる和斗。しかし…


ピシィ!!


平手打ちだった。和斗の頬はまた叩かれた。


「あたぁ……。」


「ちょっと…お母さんなんで…??」


「信用できない…こんなヤツ…。あんたたちも、お父さんにそう言えって言われたんでしょ!!?」


「…いや違うよ…。」


「あたし、見たんだから!じかに!あれがメグミのわけない!」


「あたしなんだよ?ケイちゃん。あの…薬屋さんとこの駐車場に入ってるコーヒー屋でしょ??」


「それだって!お父さんに言わされてるんでしょ!!あたし、聞いたわよね?帰ってきたとき。「どこかに出かけた?」って。なんで「メグミと出かけた。」って言わないの?「出かけてない」って言ったんだよ??」


「ゴメン…メグにヒミツにして欲しいって言われて…それで…。」


「ウソばっかり!もう、信じない!19年間も騙して!」


「いや…あの…。」


「それに、仕事も休んでるんだって?アンタ、会社の常務なんでしょう?それが、1000人の社員のことも考えず無責任に欠勤?もうすぐ上場するんでしょうが!」


「あ…ゴメンなさい…。」


「自分勝手だよ!アンタの給料に子供たちの未来だってかかってるのに!もう、信じられない!」


と言って、玄関を思い切り閉め、中に入って行ってしまった。

和斗は茫然自失…。


「まぁ…なんだな…会社休むのは…社会人としてちょっとダメだろうなぁ…。」


義父のそんな言葉など聞こえていないように渡良瀬の家を出て行く和斗。

ショックでフラフラになりながら途中、義父の育てているサボテンの鉢植えに足をぶつけ、高級スーツのすそもボロボロ…。

恵斗と恵美がそれを支えてやる。


「ごめんね。お父さん。オレ、よかれと思ってお母さんに言ったことが裏目にでて…。」


「わぁあああ。ふわぁぁぁああ…。」


もはや、言葉も満足にしゃべれもしない。


「もう…なさけないなぁ…。多分、そういうダメ人間が一番ケイちゃんキライなんだよ?カッコいいとかじゃないの。ケイちゃんが好きなのは、大人で引っ張ってくれる男なんだよ。」


足を止める和斗。思い起こしてみればそうだ。

恵子が情けない男に惚れるはずが…。


「そ、そうだよな…。ゴメン。お父さんどうかしてた…。頑張る!そして、もう一度ケイちゃんに振り向いてもらう!」


「その意気だ!さすが、杉沢家の家長かちょう!」


「バカ、オレは課長じゃねーよ。常務だっつーの。」


「どっちがバカなんだよ…。」


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