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第14話 愛人が…いるの??

和斗はそわそわしながら恵子の帰りを待っていた。

子供達もみな帰宅し、夕食時間少し前。

ようやく玄関のドアが開き恵子の声が


「ただいま…。」


とか細く聞こえた。和斗はすぐに立ち上がり


「あ!帰ってきた!おかえりぃ~~!」


と玄関まで迎えに行った。


「ケイちゃん、寂しかったよぉ~。ん~~」


とキスをせがむ格好をする。


「ハイハイ。」


といって軽く唇をあわす…が…


「あれ??…いつもより…短くない?」


という言葉を無視してキッチンに向かう恵子。

和斗は後を追ってキッチンの小さいテーブルに座る。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



少し前…あのコーヒー店で、恵子と冬子は話しをしていたのだった。


「でも…一時の気の迷いだと思うよ?カズト君はきっとケイコのところに戻って来るって…。」


「でも…知ってて浮気を黙認しなきゃいけないの??」


「辛いかもしれないけど…。子供にもアンタにも必要でしょ?カズトくんは…。」


「そうだけど…。」


「ずっとラブラブでいれたからショックかもしれないけど…。男なんだからそういう遊びもしたいってことなのかも…。」


「あたしより好きだって言ってた!本気だって言ってたよぉ!ああ…カズちゃん…。やだよぉ…。」


そういって、恵子はまたポロポロと泣き出してしまった。


「でも普通通りに生活しなよ…?気付かれたと思ったら女の家に駆け込んじゃうかもしれないし…。」


「ウン…。」


「カズト君…年上にしか興味ないのかと思ってたけど…。」


「あんな若い子がよかったなんて…。」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



いつも通りの生活をしろという冬子のアドバイスに従い、いつも通りにすることにした恵子。


「ケイちゃん、結構長かったね?どこで話してたの??」


「あー…ファミレスとか…喫茶店とか…。」


「あ、そうなんだ。ふふ。」


「ね?カズちゃん。」


「ん?」


「今日は…どこかに…出かけた?」


「いや…出かけてないよ…。」


とっさにウソをついてしまった。恵子に留守番をしていてと言われたので、出かけたというと、怒られると思ったのだ。



(ウソついた…。だめだ…。)



恵子の目から涙がポロリとこぼれてしまう。


「あれ…?ケイちゃん…どうしたの…?」


「ゴメン…体調悪い…。ちょっと!メグミィ!来てぇ!」


「はぁ~い。」


トントンと足をならして恵美は二階の自室から階段をおりて来た。


「あれ?どうしたのケイちゃん。」


和斗は、心配そうな顔をして恵子の背中を撫でさすっていた。


「お母さん、体調悪いんだってさ。メグ…お母さんの代わりにゴハン作ってあげて…。お父さん、お母さん連れて救急病院つれていくから。」


「あ…大丈夫…寝てれば直るよ…。子供たち…見てて?」


「あ…ウン…。じゃ、部屋まで連れて行くよ。」


といって、和斗は恵子をお姫様抱っこした。


「ちょっとちょっと!やめてよ…子供見てる前で…。」


「いやだよ…心配なんだ。ちょっとの間、ガマンして。」


と、ひょいひょいと階段を上って行く。

恵美はその後ろ姿を見ていた。



 ふふ…そういって触れていたい、そばにいたいんだね…。

 カズちゃんは。

 さぁて。生姜焼きでも作るかな?



恵美は冷蔵庫から豚肉を取り出した。


和斗は恵子を抱えて、二人の部屋に到着。

やさしく丁寧に彼女をベッドの上に寝かせた。


「大丈夫?どんな調子なの??」


「ウン…ちょっとだるいだけだから…。一人にして…。」


といって、ベッドに横になり和斗の背中を向けた。


「そーゆーわけにいかないよ。」


といって、和斗は小さいイスを出して腰を下ろしてその細い背中を眺める。

恵子の目から涙がこぼれて来てしまった。



 いつも通りのカズちゃんだ…。

 一体どっちが本物なの?

 “きゃん”って人にも本気だし、あたしのことも好きのままでいてくれてるの?

 それとも演技なの?



「ホントに辛そうだね…。」


優しい和斗の気遣いに、涙がとめどなくこぼれてしまう。


「ウン……ゴメンね…。」


「熱は…?」


といって、彼女を抱え額を合わせる…。


「んふふ…。顔近づけたいだけでしょ~。」


「ふふ…ゴメン…わかる?辛い時にゴメンね?」


「ウン。大丈夫。あ~…ゴメンゴメン。」


「あ…良かったぁ~。なにか食べる?お菓子かなにかでも…。」


「ウン、そうだね。じゃぁ、ゼリーでも…。」


「じゃ、行って来る。このイスにスマホ置いて場所取り。ふふ…指定席。」


「んふふ…。誰も来ないよ。ふふ。」


「じゃ、行って来る。」


和斗は扉の音がなるべく鳴らないように気遣いながら出て行った。

階段を降りる足音も小さい。



 あは…。カズちゃん…。

 やっぱり…あれはウソだったのかなぁ…。

 友だちと一緒だったのかも…。

 冗談で行ってただけかもね…。

 きっと、あたしの勘違いだったんだな。ウン。きっとそうだ!



その時、イスの上に置いてある和斗のスマホのバイブ音が鳴った。

画面が点灯し、LMのアプリが起動し、ポップアップメッセージが出でてきた。


LM:きゃん「今日のパパは最高だったよ!パパ合格です!」


思わず掴んで目を大きくして見てしまう恵子。

アイコンにあの女の画像…。

ショックで卒倒しそうになる。



 パパってことは…愛人?愛人なの?

 そりゃ、カズちゃんは稼ぎがいいから…おこずかいもたくさんあげてる…。

 それで、女の子を囲ってるの?

 ウソ?やだ…マジ…気持ち悪い…吐きそう…。


 それに、このアプリ…ラインじゃないんだ…

 LMってなんだろ…。



急いで自分のスマホで検索してみると、ネット辞書に



LMとは

アプリ名:ラブメッセージ。

恋人と自分たちだけの会話をしましょう!



と書いてあった。



 なに?これ?こんなの…二人でやってるんだ…。



時間が経ち、画面は暗くなる。

恵子はバレないようにそっとイスの上にスマホを戻した。


和斗はキッチンに降りていた。


「メグ。お母さんが食べれるのない?」


「あ、カズちゃん。んふふ。LM初送信しといたよ~。後で見といてね。」


「お、おう。」


「あ、ケイちゃんの食べれそうなのね~。ハイハイ。」


冷蔵庫を覗き込む。


「ダンナ。メロンがございますぜ?」


「え?メロン?キター!」


和斗は恵美にフルーツをカットしてもらい、ゼリーをトレイに乗せ恵子の元に静かに戻って行った。


「ゴメンゴメン。メグにフルーツも切ってもらって遅くなった。メロン。食べられるでしょ?」


先ほどのLMを見てしまったケイコは、声をしぼりだして明るく振る舞う。


「ゴメン。カズちゃん。やっぱり調子悪いや…。ちょっと寝るね…。」


「あ、そっかぁ~。ゴメン。じゃ、ここにいるから何かあったら言ってね?」


スマホを見て、「ふふ」と笑う和斗。

スマホをいじりながら、イスに座る。

“きゃん”にメッセージを返しているのであろう。


和斗のいる方でない壁側を見て寝たふりをする恵子。

涙がポロリポロリとこぼれてくる。


次第に、鼻をすする音が聞こえてきたので、辛いのだろうと和斗は気遣って体をさすり始めた。


「ゴメンね…カズちゃん…ちょっと辛いや…。」


「あ…ゴメン…電気消そうか。」


「ゴメン…一人でいたい…。」


「そっか…一緒にいたいのは…オレのわがままだもんね。ゴメンね辛いときまで…。」


といって、電気を消してリビングに静かにおりて行った。


楽しい日常が、何度も何度も頭の中を回っては、ヒビが入って行くことを感じる恵子。

悔しくて、情けなくて、自分の大事な人が自分から離れて行ってしまうと悪いことばかり考えてしまう…。

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