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第1話 かっこよすぎる父

杉沢スギサワ恵美メグミ


14歳。“M市立めぐみの中学校”の二年生。

勉強は中の上。得意科目は英語。

部活はバレー部。

彼氏は無し。


というか彼女自身別に彼氏を欲しがってはいない。


強がりとかではない。

部活も楽しく友だちと遊んでるのが面白いらしい。

同級生の男子が男そしてどうしてもみれない。


というのも…自身の父は格好が良すぎるからだと彼女は分析する。


父、和斗カズトは42歳だが見た目は30前半くらい。

顔だちがよく、笑顔が誰にでも好かれる。

小学校の頃、授業参観に来たが他のお母さんにキャーキャー言われていた。


身長は190cm、体重85kg。

帰ったら毎日筋トレして、若い頃の肉体を保っていると言っている。


仕事もできるらしく会社では、結構前から重役を任されてるらしい。

全然年上のお父さんから頭下げられて挨拶されてる。


そんな人と毎日いるから、審美眼が狂っているんだ。と思っていた。


子供たちにも、いい父親だ。

なにかあるとすぐ褒めてくる。

そして「やっぱお母さんの子だなぁ~」とかっていいながらチラチラ母の方を見て気を惹いていてる。


その母デレしてるところは格好悪いのだが。


そうなのだ母、恵子ケイコに対して一途過ぎる。

全て母向きに仕事も頑張り、スタイルも決めているのだ。


そんな父を振り向かせたい。こっちに興味を持ってもらいたい。


思春期なのに自分は変なのか?

それが彼女の悩みであった。


おそらく、父親がこちらに興味を持ってくれればこの悩みから解消されるかもしれない。

彼女の中ではそんな方程式が出来上がっていた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



その日、部活も終わり幼なじみで同部活の西条サイジョウ瑞希ミズキ沢口サワグチ美波ミナミと話しながら帰る帰り道。

やはり年代的に恋バナに終始してる。恵美は聞き役だ。


適当に微笑んでいる恵美に対し、美波と瑞希が呆れて水を向ける


「メグミは~いないんですか?好きな人は…。」


「うーん…今のところはねぇ~。」


「上木は?結構話しかけられたりしてるじゃん。」


「うん…。今度みんなでお祭り行こうって誘われてる。」


「え?あたしらも行っていいの。」


「うん。男子3人くるから、杉沢も連れてこいって。」


「じゃ、決まりだね。あたしたち3人。」


「うーん…。でもどうしようかな~…。やきそば食べたいだけなんだよね~。ミズキ買ってきて。」


「は?あんた行かなきゃ話しになんないでしょ!」


「そーなんだよね~。はぁ~…。誘われたから断って会場で見つかったら悪く思われるしなぁ~。花火も見たいし、やきそばも食べたいし…。」


「なんか…贅沢な悩みだねぇ~。上木のことキライなの??」


「いや~。友だちならいいんだけど…。」


「また、いつものファザコンですか。」


とさすがに小さい頃の付き合いの二人だ。恵美のファザコンのことはよく分かっている。

そう言われて恵美はため息をついてしまった。

否定ができない。


上木もカッコいい。女子の人気があるのも分かってる。

分かる…。分かるのだが…。

つい父と比べてしまう。

それがダメだということは分かっている。


恵美は顔を押えた。


そんな三人の横にレクサスが横付けされてきた。

三人がそちらに目をやるとウィンドウが下がる。


「よ!メグ!」


「あ!カズちゃん!」


父だった。

恵美は子供たちの中で一人だけ父を「カズちゃん」、母を「ケイちゃん」と呼んでいる。

そう呼ばれて和斗は口を弓のように曲げて笑った。


「今部活終わり?」


「ウン。カズちゃんも終わり?」


「いやぁ、会社戻っていろいろまとめてからだね。今日は早いよ。」


「早いっていったって、どーせ21時過ぎるんでしょ。」


「21時くらいだったら早いでしょ~。はは。乗ってくか?」


「いいの?やった!」


「ミズキちゃんとミナミちゃんも乗りなよ!近くまで送ってくから!」


そう言われて、友人の瑞希と美波はうれしそうに


「待ってました!」

「メグパパさんならそう言ってくれると思った。失礼しまーす。お願いしまーす。」


三人はレクサスに乗り込んだ。恵美は助手席だ。

友人二人は口々に和斗を褒めた。


「やっぱ、いい車ですね~。メグパパさん最高!」


「いや~これ会社の車だよ?」


「でも、この車に乗れるくらい仕事頑張ったってことですよね~。」


「まー昔、家建てるためにガムシャラに仕事したからね。普通の人よりはちょっと頑張ったかなぁ?」


「またまた、ご謙遜!」


「フフ。ありがとう。」


恵美もそこに割って入った。頼みたいことがあったのだ。


「カズちゃん、今週のバレーの試合、車出してくれるの?」


「そーいえば、お母さんそんなこと言ってたなぁ。お母さん行くなら行くけど…。」


部活の車出しだ。父は他の部員の母たちに人気がある。

自分の父を自慢したい気持ちがあったのだ。


しかし友人二人は和斗が自分の妻にぞっこんなところを突っ込んだ。


「出ました。ホントにラブラブですね~。」


「そーなんだよ。フフ。この前さぁ~。」


「ちょっと!カズちゃん!友だちにノロケ話しないでくれる??」


「あ…そうか…ゴメンゴメン。」


「フフフフ。」


笑う友人たち。そんなことをしている間に、めぐみの丘のみんなの家付近になってきた。

和斗は三人の家の中間地点で車を止めた。


「じゃ、ここでいいかな?3人ともここからなら近いでしょ?」


「ウン。ありがと!」


「じゃ、ゴメンね。まだ仕事あるから。気を付けて帰ってね!」


「ありがとうございましたぁ。失礼しまーす。」


三人を無事に降ろし、和斗のレクサスは会社に向けて走り去っていった。


その車の後ろを見て、やっぱりカッコいいと恵美は思った。そこに瑞希が


「ま~。メグパパさんなら…彼氏ができない理由もちょっと分かる気がするわ。かなーり年上だけどね。」


「フフ。…だね…。」


三人は互いに手を振って家路についた。


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