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58話 賊と再び.....

遅くなりました。

申し訳ございません!

 私はババランの案内で街の視察をしていた。

 ランディは私達を見送った後に用事に出掛けると言っていた。


 ババランが張り切って説明をしてくれるが、う~ん、普通の「街」て感じだった。

 このヤーマンドは陶器が作りが盛んで有名だ。ヤーマンドの収入はほぼ陶器で賄っていると言っても過言ではない。

 だからか、陶器のお店が多い。

 街行く人達も賑わっていると言えばそうだが、私から見れば微妙だった。


 今、私達が向かっているのは郊外の陶器工場だ。

 私の護衛は最小限にしている。コディアを入れて10人程度。なるべく軽症の者を選定した。

 ネネは宿でお留守番だし、ランディがいないので心細いが仕方がない。

 今はババランとコディアが一緒の馬車に乗っていた。


「アリア皇太子妃様!こちらの陶器工場がこのヤーマンド一番の規模の工場になります。」


 街から出てから40分ほど馬車に揺られながら行ったところで、ババランが小窓から指を指して教えてくれた。


 私は小窓から覗いて確認するとまだ先に方にある建物が見えた。まだ距離がありそうだが、それを差し引いても思ったよりかなり大きな工場だった。


 行き道でも、ちらほらと工場らしきものが見えたが、どの工場も一軒家くらいの大きさだった。


 ババランをチラッと見る。かなり装飾品を着けている。指輪も粒が小さいものから大きいものまで、全ての指に着けている。

 ひときわ大きいエメラルドのルビーの指輪は正直感じが良くない。成金です!って言っているようなものだ。


 そうこうしている内に工場へと到着した。


 私は気を取り直して、皇太子妃としての仮面を被った。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「疲れたわ~!」


 私は椅子にドスッと姫らしからぬ座り方をした。


「アリア様、お疲れ様でした。」


 ネネはいつもなら注意するのに、今回はクスッと笑って済ませてくれた。ホッ。



 あれから工場巡りを2軒ほどした。


 規模が大きい工場はヤーマンド工場。どうやら領主であるドカンド伯爵が経営をしているらしい。

 どうりで、大きい工場だと思った。お金を持っている人間ではないと無理な大きさだと思うからから。


 それにあとの2軒の工場の大きさは普通の家程度だったから。


 昨日の今日で疲労が重なった。


 もしかして、何か起こるのではないか!?と危惧していたから。


 だけれど、思いとは裏腹に何も起きなかった。


 良かった········。


 私はネネが入れてくれた紅茶を飲みながらホッとしていた。


 窓の外を見ると既に太陽が傾いている。


「そういえばランディは帰ってきたのかしら?」


「いえ·····まだではないでしょうか?」


 ちょうどそんな会話をネネとしている時に、ドアがノックされた。


「アリア様、ただいま帰りました。遅くなり申し訳ございません。」


 ランディが頭を下げ、帰ってきましたと報告をした。



 ランディは思ったより調べてものにかかってしまったとのこと。

 どうやらルイス殿下に頼まれごとをされているらしい。何を調べているかは詳細に教えてくれなかった。



「コディアが言っておりましたが、ドカンド伯爵が経営されている工場があるとか?」


「ええ。ババランがそう言っていたわ。凄く大きくて驚いたわよ!」


「そうですか······。」


 ランディは顎に手を当てて考え混んでいる。


「どうかしたの?」


 私が聞くと、ランディはハッとして慌てて手を振りながら


「何でもございません。」


 と答えた。


 ランディにその日にあった出来事を報告した。

 その報告にランディはかなり驚いた所を見せた。


 お互いの報告が終わったら、ランディはルイス殿下に報告書を書くために一旦部屋から出て行った。


 そのあとは食事が来るまでにゆっくりとお風呂に入ったが、お風呂から出るとババランが来たらしく、今日はドカンド伯爵と一緒にお食事を······と言われたらしい。

 ネネは私がお風呂に入っているので返事は後ですると言ったとのこと。


 面倒くさい!!


 自分の自慢ばかりする人は苦手なの!

 はあ······でも断る訳にもいかないので、ネネに了承の旨を伝えるように指示した。



 そして夕食。来なくてもいいのに、またドカンド伯爵がきて一緒に食事をした。

 ドカンド伯爵は相変わらず、自分の自慢ばかりで昨日と同様にうんざり!


 だけど一度だけピリッとした空気になった出来事があった。


 ドカンド伯爵がランディに一緒に同席して食事をしましょう!と進めてきたのだ。一度はランディが「私は今はアリア様の護衛ですので」と断ったが、ドカンド伯爵は食い下がってしつこかったので、私がランディに一緒に食事をしましょうと言った。


 そして色々とドカンド伯爵がしゃべりまくっていたのだが、陶器工場の話になるとランディがそれを遮って問うたのだ。


「そういえばドカンド伯爵、ドカンド伯爵は工場を経営されているとか?初めてお聞きしました。」


 ランディの言葉にドカンド伯爵は笑顔から表情が険しくなった。

 そして一瞬すぐ後ろにいたババランの方を向き睨んだ。


 ドカンド伯爵は顔をひきつりながら笑顔を無理矢理作った。


「ランディ殿、それは間違いですな。工場の支援をしております。」


「····そうですか?ババラン殿がこの街の一番大きな陶器工場が領主であるドカンド伯爵が経営していると、説明を受けたとアリア様が申しましたので。」


 ランディはチラッとババランの方を向いて言った。

 ババランは青い顔して私の方を向いて弁解してきた。。


「私がドカンド伯爵様が経営していると説明しましたか?」


「ええ。確かに貴方は私にそう説明したわ。」


「そそそ、そうでしたか!申し訳ございません!言い違いでございます!あの工場はドカンド伯爵様が支援をしているのです!経営ではございません!間違ったことを説明してしまい誠に申し訳ございません!」


 ババランは汗·····冷や汗でしょうか、とりあえず汗を流しながらペコペコと頭を下げて謝ってくる。


 よくわからないが、説明を間違えたのよね?


「·····そうですか。分かりました。今度から気をつけてください。」


 私はその一言のみ言った。

 ランディはその光景を見て、目を細めて二人を見た。


「それは良かった。これが本当なら大事になるところでした。」


 二人は青い顔をしていた。



 後で、ランディに聞いた。


 領主は基本、領民の税金のみが収入だそうだ。経営もできるが、まずは王に申請し許可を貰わなくてはならない。また、私欲などで横領などを防ぐ為、必ず宮廷の者が経理に配属され、定期的に監査が入り、専門の人が報告書に偽りがないか、適切かどうかを確認するとのこと。


 結構貴族は経営をしたりしているが、全て王の許可を得ているらしい。

 ならキースの所もそうなのか。


 支援はそこまで厳しくないが、支援した所は王に報告が必要とのこと。

 ランディが言うには、ドカンド伯爵は支援をしていることの報告は受けているとのことだった。

 もし、今回のことで、ドカンド伯爵が経営となったら、偽りの報告したことになるので、大罪になり、かなり重い処分を受けることになる。


 一応、本人は否定したが、ランディは王に報告すると言っていた。そして多分調査が入るであろうと·······。


 何か怪しいし、調査はちゃんとした方がいいと私は思った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 夜になり、何か胸騒ぎがした。ランディがドアの前で守ってくれていると言うのに······。


「あら?アリア様、お人形さんを身につけて寝るのですか?」


 ネネは私のベッドを整えながら聞いてくる。


「ええ·····何かね·····。」


 いつもは二体を私の両側に置いて寝るのだが、今回は安心の為に一体を足に装着することにした。いつもならダンちゃん人形を太ももに括り着けるのだが、今回は何故かシャベちゃん人形にすることにした。

 そしてしっかりとダンちゃん人形を抱き締めて眠りについた。


 私は連日の疲れが溜まり、この日もすぐに寝付いた。



 ふと、ゴトゴトという物音で目が覚めた。


 何かしら。


 窓の方を見る。カーテンが閉まっているが、まだ外は暗い。


 何時かしら?


 私はそう思い、時計を見る為に明かりを灯りをつけようとランプのある方へ手を伸ばした。ところが何者かによってその手を取られ阻止された。


「あれ?お姫さん目が覚めたのか?」


「え?」


 私は声をする真上を見ると、カーテンから漏れている僅かな外の光が赤い目を映し出した。


 この目は!!


 私には見覚えがあった!忘れたくても忘れられなかった目だ!


「おっ、その反応は俺のことを覚えているみたいだな。」


 赤い目がニヤリと笑ったのがわかった。


 私はブルッと身体が震えた。私はとっさに近くにあったダンちゃん人形を抱き締める。


「シン殿早くしてください!」


 うん?もう一人いるようだ。しかも聞き覚えのある声。


「その声はババラン!?」


「!!!」


 賊がクックックッと笑い、手のひらの上に火を灯した。

 すると周りが確認できた。全身黒づくめな男、賊とやはりババランだった。そして壁に大きな穴が見える。その場所にはタンスがあった場所だったはず·····。よく見るとそのタンスはずれている。どうやら秘密の通路のようで、タンスで隠していたようだ。


「シン殿!火を消してください!」


 ババランが叫ぶ。


「はん!今さら隠しても仕方がないだろ?もうバレているみたいだし?」


「何故アリア様は眠ってないのだ!食事に薬を混ぜていたのに!」


 ババランは賊の後ろに隠れるように身を小さくした。


「ババラン、貴方······。」


 私は信じられない思いでババランを見る。

 それを嘲笑うかのように賊は言った。


「ハッハッハッ!ここの領主とババランはこちら側の人間さ!」


「!!!」


 私は驚きで声も出なかった。


「どうだ?裏切りられた気持ちは!!アーハッハッハッ!」


 賊は可笑しそうに笑う。


「何が可笑しいの!!ババラン、どうして!?」


 ババランは下を向いたまま何も言わない。


「こいつらはな、お前が邪魔なんだよ!そうだろ?ババランさんよ!」


「シン殿!」


 ババランは挙動不審になり、青い顔して、私と賊を交互に見る。


「貴方はこの人たちに雇われているの?」


 私が賊に訊ねた。


「いや、俺の依頼主はこんなチンケな奴らではない。もっと大物さ!」


「大物····!?」


 一瞬ママイヤ国を思い出したが、いきなり賊に腕を掴まれた。


「ちょっと!!」


「と、いうわけで、そこまで一緒に来てもらおうか。」


 私を担ごうとしてぐいっと引っ張られたが、身を丸めて今度は抵抗した。ヤバい!だけど身につけているイヤリングは反応をしなかった。

 もしかして魔法の付与が巧くいかなかった!?どうしよう!


 そう思ったが、なら助けを求めないとと思い行動を起こす。



「冗談じゃないわ!ランディ!賊よ!」


 私は大声を出してランディに助けを求めた。

 あの時は恐怖に怯えて何もできなかったけど、今度は違うんだから!


「アリア様!?」


 ランディは焦ったようにバン!とドアを荒く開けて入ってきた。

 そして部屋の灯りをつけて、賊を確認し驚愕の顔をする。

 


「何だ、お前らは!アリア様を離せ!」


 ランディはすかさず剣を構える。


 そして賊の隣にいたババランを見て瞳を見開いた。


「ババラン殿!貴方は!?」


 ババランは急いでランディから顔を背ける。


 今度は違うドアからバン!と荒々し音させて開ける者がいた。


「アリア様!?どうかなさいましたか!?」


「ネネ!!」


「!!!」


 ネネもこの状況にかなり驚いた顔をしたが、すぐに気を取り直し、半ば持ち上がっている私を助けようと賊に突進をした。


「アリア様ぁぁぁ!」


 ドスンッ!


「うぉ!?」


 そのネネの突進で少しよろめいた賊。そして私を掴んでいた手が緩んだ隙に、賊に腕を掴まれる時にダンちゃん人形を離してしまったので急いでダンちゃん人形を掴み咄嗟にネグリジェの胸の中に突っ込んだ。


「アリア様逃げてください!」


 ネネは賊に抱きついたまま、私にそう叫んだ。


「なかなかやっくれるな。」


 賊は必死に抱きついているネネを引き離して、ポイっと放り投げた。


「きゃ!」


 ネネは勢いよく倒れ込んだ。


「ネネ!」


 私はネネの所に行こうとしたが、賊に捕まってしまった。


 ランディが賊を斬りつける。


 バシュッ!


 賊の右腕にうっすらと赤い血が浮かび上がった。


「ちっ!やってくれるな!」


 賊はそう言うと何か呪文みたいなものを唱え始めた。


 これは!きっと魔法だ!

 私は咄嗟に言った。


「ランディ逃げて!」


 それと同時に空気がぶわっとなりその風がランディを直撃。ランディは勢いよく飛ばされ壁にドスンッ!と激突した!壁には大きな亀裂が入った。


「くっ!何だ今のは!」


 ランディはどうやって自分が飛ばされたのか分からないようだ。ランディは口の中を切ったのか、口から血が流れている。ランディはお腹を押さえヨロヨロと立ち上がる。


「はあ、お前ら鬱陶しな。しかも剣だけで俺に勝てる訳ない。」


 賊はフンとバカにしたように鼻を鳴らす。


「この大陸の人間は弱い。殺すのは本当に簡単だ。本当は殺したいけど、主にここでは殺すなと言われているからな·····不本意だが止めておく。お前ら俺の主に感謝しろよ?アーハッハッハッ!」


 賊は高笑いをして、私を軽々と担ぎ上げた。


「きゃ!離して!!」


 私は足をバタバタとさせて抵抗を試みる。


「アリア様を離せ!」


 ネネが私の足にしがみつき、引きずり下ろそうとしたが、賊がネネの頬をバシッと叩き、かなり強く叩いたのかネネは飛ばされドサッと倒れた。

 ネネはそのまま動かなくなった。


「ネネェェ!」


 私は必死にネネに手を伸ばすが届かない。


 賊はノシノシと窓の方へ行き窓を開ける。


 やだ!もしかしてここから逃亡する気!?


 私は前回、この賊が飛んでいる姿を見ている。この賊はまた同じように窓から逃げるつもりなのだ。


「くそぉぉー!アリア様を離せ!」


 ランディがまた賊に斬りかかった。


「お前ら本当に鬱陶しい!」


 賊は怒ったように言うと、また呪文を唱えた。

 すると、何もしていないのに、ランディの身体の数ヶ所から血飛沫が出たと思うと勢いよく血がドクドクとは流れ始めた。


「ランディィィー!」



「····ア···リア様····。」


 ランディは苦痛な顔をしながらパタリとその場に倒れて意識を失った。


 賊はすでにランディを見ておらず、窓から飛び降りた。


「キャャャー!」


 私も初めての空の飛行で、恐怖で意識を失ってしまった。

 意識を失う瞬間は、どうか、ネネとランディが無事でありますようにと願いながら·······。



 意識を失ったアリアの胸の隙間からキラリと光る碧色の宝石が2つがあった。





いつもお読みくださりありがとうございます。

ブクマ、評価、感想、誤字報告もありがとうございます。

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