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57話 ヤーマンドの街へ

長らくお待たせして申し訳ございません。

やっと更新できました。

再開します。


週1ペースで頑張りたいと思っておりますのでよろしくお願いします。

 

 夕方にはヤーマンドの街に到着した。

 事前に通るルートとして知らせていた為、スムーズに入門をすることができた。


 ランディがすぐに前もって予約しておいた宿の場所を門番に聞き、そちらに向かった。

 無事に宿に着き、その宿主に挨拶された。


「遠いとこからヤーマンドにご来訪頂きありがとうございます。私はこのダイナスの宿主のババランと申します。アリア皇太子妃様、ごゆるりとご滞在下さいませ。快適に過ごせるよう、我がダイナス一同が人力を尽くしますのでどうぞよろしくお願い致します。」


 ババランは50代くらいだろう。髪の毛も白い色に半分くらいなっており、黒とツートーンカラーになっている。

 顔は人が良さそうな笑顔を作っているが、アリアを見つめる目は笑っていなかった。

 アリアはババランを見て気持ちが悪いと思ってしまった。


「ババラン、ありがとう。とりあえず護衛の者を休ませてあげたいの。すぐに部屋に案内してくれないかしら?あと、悪いけど食事を護衛にさせて欲しいのだけど出来るかしら?」


 私がそう言うとババランは手をもみもみさせながら


「かしこまりました。すぐに用意をさせます。」


 ババランはすぐ側に控えていたメイドにすぐ食事の用意をするようにと指示した。


「出来ましたら、すぐお呼びに参ります。ではお部屋へご案内致します。」


 私達はそれぞれの部屋へと向かった。


 この宿はかなり田舎にしては······とは失礼かもしれないが豪華な内装をしていた。

 外装は王都の宿でも中級クラスをしているが、内装はかなり凝っている。敷いてある絨毯も階を上がるにつれてふかふかの赤い絨毯になっている。壁にも模様が入っていたり····しかも金箔を使っている感じがした。

 王都の超高級宿の部類に入る。


 ·······観光地ではないと聞いているけれど····。



 私は五階まで案内された。

 五階は二部屋しかなく、一つの部屋はかなり広々としていた。高位の貴族や王族の用の部屋だという。装飾品もかなり豪華だ。花瓶なんか金ぴかに光っている。

 ベッドも天幕付きだった。


 ババランは侍女のネネと違う部屋を用意したと言ったが、私はネネと同じでいいと言った。ババランは一瞬、険しい顔をしたが、すぐに笑顔になり、ネネが寝れるようにベッドなどを用意をしてくれた。


 ランディの部屋は一階下の四階らしい。ランディはすぐにでも見張りをしようとしたので、とりあえずゆっくりして欲しいとこちらからお願いをした。


 ランディは渋々だが了承し、一旦は自分の部屋と移動をした。


 私は部屋へ入り、汚れたドレスを着替えた。ネネも着替えてお茶の準備をしてくれた。

 まだ、残りの護衛は来ないのかしら·····。

 心配で、ティーカップを持っている手が震える。


 その時にコンコンとドアをノックする音がした。

 ネネが開けるとババランが立っていた。


「アリア皇太子妃様、ご寛ぎの所すみません。ただいま、領主様が来られまして、アリア皇太子妃様に挨拶がしたいとことですが、いかがでしょうか?」


 領主?早い到着ね。入門してからすぐに連絡でも行ったのかしら?

 ·····挨拶をしないわけにはいかないわね。

 出来れば明日にして欲しかったわ。


 護衛も私も疲労がピークだった。

 だけれども断る訳にはいかないので「わかりました」と答えた。


 早速ババランは領主を呼びに部屋から出て行った。

 私はネネにランディを呼んでくるように頼んだ。ランディは護衛の責任者でもあるから紹介もしておかねばと思ったからだ。


 このヤーマンドの領主はドカンド伯爵だったわね。

 観光地ではないけれど、ここ数年でいきなり資金回りが良くなったとルイス殿下が言ってたわ。国に納める税金も上がったとか。

 ヤーマンドは陶器の街と言われている。かなり輸出もしていると報告を受けているけれど·····。

 見た目は普通の街。どちらかと言えば田舎。町並みも、別に凄く活気があると感じなかった。まあ、今が夜だから特にそう感じたのかもしれないけれど。


「アリア様。」


 どうやらランディの方が先に着いたようです。


「ランディ、ゆっくりしている所を悪いわね。」


「いえ。」


 ランディはきっちりと近衛の正装をしていた。相変わらず真面目な人間だわ。


「······他の者はまだ街に入ってなくて?」


「·····はい·····。」


 ランディは悲痛な面持ちで答えた。


「そう······。無事でいてくれるといいけど。」


「はい。」



 そんな暗い雰囲気の中、ドカドカと足音が聞こえたかと思うと、部屋の前で足音がピタリと止む。


 どうやら領主のドカンド伯爵がきたようね。


 ババランがドアをノックしてから部屋のドアを開けた。そして最初に貴族です!と言わんばかりの雰囲気を纏った壮年の男が入ってきた。その壮年の男は白髪混じりのグレーの長髪を後ろで束ねていて、恰幅も良いが、一重の瞼で細い目は鋭い。


 その男は私を見た途端に値踏みをするように目を上下させて見た。そして笑顔になり挨拶をしてきた。


「これは皇太子妃様、はるばるこのヤーマンドにご来訪いただきありがとうございます。私はこのヤーマンドを治めているドカンドと申します。以後お見知りおきを!」


「ドカンド伯爵、少しの間お世話になります。気を使わなくて結構よ。」


「いえいえ、皇太子妃様が来られるのは初めててございます。皇太子妃様が最適に過ごせるように、このババランと一緒に尽力を尽くしますので何でもお申し付けください。」


 ドカンド伯爵もペコペコと腰低くなった。


「ありがとうございます。あと、こちらは私の近衛隊長のランディですわ。用事などがありましたら、このランディか侍女のネネを通りして下さい。」


 ランディとネネが私の後ろでお辞儀した。


 するとドカンド伯爵は真顔になり、細い目をもっとスゥっと細めた。


「ほぉ······ホーン公爵の····次期当主と噂をされているランディ殿ですか····。」


「·····ランディです。アリア様にご用がある時は私にお声かけをお願いします。」


 あれ?ランディは今、次期ホーン公爵の当主と噂されているの?聞いたことないけれど。

 ランディはドカンド伯爵の言葉には反応せずに、アリアの近衛として接した。


 ドカンド伯爵もそれを察したのか、それ以上は何も言わなかった。


 少したわいもない話をしたが、ほとんどがドカンド伯爵の自慢だった。アピールと云うのでしょうか。


 私はうんざりして


「ドカンド伯爵、申し訳ないのですが本日は疲れましたので····。」


 ドカンド伯爵はポンと手を叩いて、いかも今気づいたように言った。


「そうでしたな!長旅でお疲れですな!これは気づかず申し訳ない。ではごゆるりと休んで疲れを取って下さいませ。」


 ドカンド伯爵とババランは部屋から出て行った。

 それを見届けたら安心したのか、ドット疲れが出た。


 考えてみれば夕食もまだだった。とりあえず、ネネに夕食のことを聞きに行かせ、すぐに用意をさせた。(聞きに行った時にちょうど出来上がったとのことだった。)


 他の護衛たちは食堂に移動し食事をしたようだ。

 私とネネとランディは明日からのことを話し合う為一緒に食事をした。


 ランディは明日は用事があるから少し出かけるとのこと。私の方は明日は視察を兼ねて少しヤーマンドの街を案内してもらうことになっている。その際はランディの代わりに副隊長のコディアが護衛に付くとのことだった。


 ああ·····視察よりも護衛達のことが気になる。

 出来れば戻って確認したいが、狙いが私である以上は迷惑になるだけ。今は黙って他の護衛達が無事にヤーマンドに来ることを祈るのみしか、今の私には出来ることはない。


 お互いの明日のスケジュールを確認し、各自部屋へ戻る。


 私もネネと一緒に風呂入り、疲れを取る····あまり取れなかったがベッドに入るとすぐに睡魔が訪れて······ダンちゃん人形とシャベちゃん人形を抱いて朝まで爆睡した。





 同じ時刻の別室。

 窓の外は気持ち悪いくらいの闇夜が広がっている。

 男が二人、丸いテーブルの席に座ってお酒を嗜んでいた。

 一人の男が、王都でもなかなか手に入らない他国の白ワインを揺らしながら話を始めた。


「予定通りですな。」


「そうだな。しかし幼い。あれが皇太子妃か。顔に似合わず胸は育っているが。」


「確かに。ヒッヒッヒッ」


男はいやらしい笑いをする。


「ルイス殿下も何故、小国の姫なんぞ正妃したんだか。やはり我が国は先がないな。」


「全くです。」


「例の決行は明日だぞ。準備は出来ているか?失敗は許されんぞ!」


「勿論でございます。」


「うむ。これが成功したら我が身も安泰だな。」


「そうですな!領土も······ヒッヒッヒッ!」


「ふふふ。では明日に。」


「はい。明日に········」



 こうして不穏な闇夜が更けていった。



いつもお読みくださりありがとうございます。


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