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52話 なぞのぬいぐるみ

もう9月ですね·····。

本日は18時に更新しました。

 


 ある部屋の一室。



「どういうことですの!あの忌々しい女を殺すのは簡単だと!必ず殺せると言っていたではないの!」


 ダンッ!と持っていたワイングラスを乱暴に置いた。

 いかにも高質の深紅のドレスを身にまとい、真っ赤な口紅を付けている女がキッ!と目の前の男を睨んでいた。


 その男は向かい側のソファーに座り、身長は180センチ以上はあるでろうの長身で長い足を所狭しと組んでいる。この国ではあまり見ない青い髪の色で長髪、長い髪を後ろに一つ束ねて括っている。顔は面長で目は細い目で瞳は真っ赤な色をしていた。

 そう、この男はアリアを襲った賊なのだ。

 男は高貴そうな女を見て鼻を「フフン」と鳴らした。

 そして傲慢に言い放つ。


「黙れ、女。」


「まっ!私を誰だと思ってるの!」


 高貴そうな女は立ち上がり、侮辱されて顔を真っ赤にしている。


「知らないね。どっかのお姫様だろうけど俺には関係ない。」


「そんなことを言っていいと思ってるのっ!?すぐに···」


「黙れと言っているだろ!俺は今、機嫌が悪いんだ!今すぐにでもお前を殺すぞ!」


「!!!」


 男は殺気を込めて睨む。高貴そうな女はその殺気に()されて顔が青くなった。


「落ち着いてくださいませ。さあ、姫様も。こちらのソファーにお座り下さいませ。」


 高貴そうな女の側にいた50歳くらいの侍女らしき者が、男女を(さと)して、高貴そうな女をソファーに座らせた。

 男は何ごともなかったかのように、その侍女に話しかけた。


「おい、女、この国には魔法を使える者なんぞいないと言ったよな?」


 高貴の女は落ち着きを取り戻し、怪訝そうな顔をして答えた。


「ええ。この国·····いえ、この大陸には魔法なんて代物ないわよ。あったら私がこの手であの女を亡き者にするわ!」


「·············。」


 男は考え込む。


 確かに、殺そうした女····お姫さんが首に掛けていたあのペンダントから眩しい光が出た後、吹き飛ばされた。魔力も感じられた。

 あのお姫さん自身からは魔力を感じられなかった。俺の他に誰か魔法が使える者がいないとあのペンダントの魔力や魔法はできない。それに自分の魔力をペンダントに封じ込めるとういう高度なことができるならかなりの実力者のはず。


 すぐに暗殺できると高をくくっていたが、用心せねばなるな。


 男は今度の計画を頭で考えていた。



 余談だか、男が依頼してきた人物を「女」と呼び、暗殺しようとしていたアリアをお姫さんと呼んだのは、アリアの方がお姫様ってオーラが感じられたからである。高貴な人物の方は単にその辺にいる女のオーラと変わらないと思ったからだ。

 どんなに着飾っていても、持っているオーラがショボい。圧倒されるオーラがない。


 自分は魔法が使える。この国には魔法が使える者がいない。この大陸か世界か変わらないが、今は誰よりも強いと自負している。きっとこの国だけではなく大陸全土を征服でしるはずだ。そう思っている男は例えどこかの国のお姫様や王子様、王様であろうとも見下すのだった。






 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「ちょっと!キース!何故ギルバードお兄様に殺されかけたこと報告したのよ!」


 私はたった今、キースから例のことをギルバードお兄様に報告したと聞かされたのだ。


「やはり、アリア様に危険な目にあったことは報告すべきだと思いましたので。」


「だけど!ルイス殿下にも報告はしないでと言って止めて貰ったのに!」


 私の暗殺騒動の後、ルイス殿下はすぐにでもサマヌーン国へ報告しようとしてくれた。

 だけれども、まだ犯人も特定できないし自分は生きている。それに······私は嫁いだ身。お祝い事ならいざ知らず、こんなことを報告するのは躊躇われた。暗いことを報告する時は自分が死んだ時でいいと思っている。

 ルイス殿下は私を意志を尊重してくれて報告はしなかったのだ。


「アリア様、暗殺未遂でも報告すべき事柄です。それに関してギルバード殿下に協力をお願いしました。」


「協力?」


「はい。近隣諸国に不振な動きがないかを。」


「······そう。」


 まあ、今さら報告してしまったのは仕方がないわ。私も弁解のお手紙でも送らないとね。向こうで『何故すぐに報告しないんだ!ルイス殿下は何を考えている!』

 なんて思われて、両国に溝が出来てはいけないしね。


 私は一つため息をつき、お手紙を書く為に机に向かった。





 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 私を襲った犯人はまだ捕まっておらず、特定も何も出来ていない状態なので外出禁止で大人しく部屋でハンカチの刺繍をしていた。


 ドタドタと部屋の外から人が走る音が聞こえたかと思うと私の部屋の前でその音は止み、次はドン!ドン!ドン!と荒々しくドアをノックする音が部屋に響いた。

 私が返事をする前にドアが開き、そこに立っていたのはネネだった。


 あら?ネネは今日は休みだったはず。


「アリア様!フレアちゃんからまた贈り物が届きましたわ!」


 ネネは興奮していた。手にはるぬいぐるみや、前より大きめのペンダントを持っていた。


 うん?ぬいぐるみ?

 しかも二体持っていた。


 ネネは興奮したまま説明を始めた。


「フレアちゃんがアリア様にまた護身用の品物を贈ってくれました!こんなにすぐに贈ってくれるなんて本当にフレアちゃんは優しいです!」


 うん!うん!優しいね!でもそのぬいぐるみは何?しかも男の子のぬいぐるみっぽい。髪の毛は両方長いんだけどしかも銀髪······。


 私はじっとぬいぐるみを見ていてるとネネは気づいて、ぬいぐるみの説明を始めた。


「私も詳しくはよく分からないのですが、このぬいぐるみも護身用らしいです。常に持っていて欲しいそうです。」


「えっ!?ぬいぐるみを?」


 いやいや、私は小さな子供ではないんですが·····しかも男の子のぬいぐるみなんてルイス殿下がどう思うか·····想像するだけでちょっと怖いし、持っているのを想像すると恥ずかしいわ。


 ぬいぐるみをよく見ると、一体は口がへの字になってて、もう一体はニッコリ笑っている口だった。目の色が同じ青い色なんだけど、微妙に違う。あと着ている服が違う。両方共に騎士みたいな·····格好いい制服みたいなのを着せていた。特にへの字のぬいぐるみにはマントを着せている。


「この口がへの字になっているのがフレアちゃんのお父様で、ニッコリ笑っているのが一番上のお兄様の人形らしいです。」


「そうなんだ。向こうの男の人って髪の毛が長いのね。てか、何故お父様とお兄様のぬいぐるみ!?」


「そうみたいですね。何故このぬいぐるみにしたのかは分かりませんが、この人形はかなりの魔力が込められいて、アリア様に危機が起こったらこのペンダントが反応して、この人形に何かの信号というものを送り、この人形が身を呈して護ってくれるらしいのです!勿論、このペンダントにも魔法が発動するようになっているようですよ!」


 ペンダントのことは置いといて!凄く気になることを言ったわ!


「え?それってこの人形というかぬいぐるみが動くってこと??」


 本当にそんなことが可能なの??


「それが多分だそうです·····初の試みらしく前列がないそうです。しかも遠く離れた大陸ですし·····もし、動かなくても何らかの魔法は発動するようにしているようです。ただ急いで作ったので何も実験とかしていないから、不確定なのですみませんと誤ってました。私達のことを考えてくれて早く送らないと!って思ったらしいです。本当に感謝しきれません。」


「そうね。何もかにもしてもらってばかりね·····。」


 それにしても、すっっ凄いわ!魔法って!!何故こちらの大陸にも魔法がないのかしら!!


 本当にこんなぬいぐるみが動くのかしら?

 というか今は動かないのかしら?


「このぬいぐるみに『動いて!』って言ったら動かないかしら?」


 ぬいぐるみをツンツンしてみる。


「普通では動かないみいですよ。アリア様の危機のみに動くのですから。それにぬいぐるみに声をかけても意味ないですわ。このペンダントを通して動くみたいですから。」


「そうだったわね。残念。」


「あと、例の賊の件はまだ調べている最中だそうです。大昔の人が、大陸から大陸へ行ったこともあるという前列もあるので、魔法のある国からこちらへ何らかの拍子で来ている可能はあると。」


「·····そう」


 分からないか·····やはり可能はあるということね。


「フレアちゃんの大陸で何年か前に大規模な戦争が合ったらしく、滅ぼした国から逃亡した人物が居ないか今、調べてくれているそうです。また賊の特徴を詳しく教えて欲しいとのことでした。」


「分かったわ。ありがとう。」


 賊のことはまだ時間がかかりそうね。それはフレアさんにも頼むとして······。


 さて、問題はこのぬいぐるみをどうやって常に持っておくかよね·····。





 ー後日ー


 ルイス殿下にやはり持ち歩くことを反対された。一応は訳は言ったのだけれど。


 それに負けず持ち歩いていると·······


「お可哀想に······まだお子様がいらっしゃらないから·····」

「余程、お子様が欲しいのですわ。もうご結婚されてから何年も経ちますもの。だからお人形で気を間際らして·····。」


 などと、腫れ物を扱うような目で見られ宮中でそんな噂が立っていた。


 全然違うー!!


 私はしっかりと周りには残念な皇太子妃のレッテルを貼られてしまったのだった。


いつもお読みくださりありがとうございます。

ブクマ、感想もありがとうございます。執筆の活力にさせていただいております。

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