50話 とうとう命を狙われました!
なんと50話です!
これも読んでくださる皆様のお陰だと思っております。
完結まで頑張りますのでよろしくお願いいたします。
口を押さえている片手に力を入れ、もう片方の手は首に持ってきて、グッと力を入れ絞めてきた。
「死ね!」
「うぅぅーっ!!」
苦しい!!
鼻も口を塞がれてて息が出来ない!
首も絞められて苦しくこれまた息が出来ないっっっ!!
誰か助けてぇぇー!!!
あまりの苦しさに涙が出てきた。
苦しくて苦しくて、何とか離そうと両手で首を絞めている賊の手を除けようとするけどビクともしない!
次第に目の前が白くなっていく。
ああ·····私は死ぬのかなって思ったら走馬灯の様に、ネネやキース、ランクスやランディ、ルイス殿下、お母様の顔が過った。
もうダメ······
私の意識が無くなりかけたときに、首に掛けてあったペンダントから眩い光がピカッと光りが賊を直撃した。
「うわっっ!なんだ!!」
賊はその眩しさに当てられ、私の口や鼻を抑えていた手や首を絞めていた手を離し、自分の目を押さえベッドから降りて大きく二、三歩さがり踞った。
私はその瞬間に一気に空気が身体に入ったが、上手く空気が入らないのか噎せた。
「ゲホッ!ゲホッ!」
上手く空気が吸えずヒューヒューと喉がなる。今は頭に酸素が足りてないので、上手く考えれないけれど、さっきの魔法?
光に目をヤられ踞っていた賊が、ヨロヨロと起き上がり、こちらを睨んでいる····と思う。何せ薄暗くて良く見えない。
「よくもやってくれたな!さっきのは何なんだ!」
そんなの知りません!
多分魔法だと思うけど、ネネのお友達の贈ってれたペンダントが助けてくれたのは確かね!
賊は少ししたら目がはっきりしたらしく、また私の方へとやってくる。
ヤバいっっっっ!
私はまだ上手く呼吸が出来ずゲホゲホ言い頭が働かないが、何か物を投げて抵抗しようとしてベッドの上を探る······が、無い!ベッドの上に何も置いてない!
あわわっっ!
だが、賊はペンダントを警戒しているのか、ベッドの手前で立ち止まり、何やらボソボソと言い始めた。
何か呪文みたいなものを言っているたみたいな???
「△▼○▷□~ツゥア!」
賊が呪文(?)を唱え終わったと同時に賊から小さな光が見えたと思ったら、ペンダントが浮き上がり、そのペンダントから風······というか突風みたいなものが放たれ、その小さな光を消し去り賊が壁まで勢いよく飛ばされ、ドンッ!と強く打ち付けられた。
·····賊が壁にめり込んでいる。その壁は天井の方にまで亀裂が入った。
さっきペンダントが浮き上がって·····それから!???
私は何が起こったのはよく分からなかった。
普通の人間なら気を失っていると思うけど、その賊は立ち上がった。
「魔法?何故だ。この大陸の人間は魔法は使えないと聞いているが······▼□○△」
その賊は簡単な呪文(?)を唱えると、手のひらに小さな火がいきなり出た!
「!!!」
まっ、魔法!?
その火により、顔が見えた。細長く真っ赤な目をしていた。ただ顔全体を黒い布で覆っており目しか見えなかったけれど。
「そのペンダントだな!そのペンダントに強い魔力を感じる!」
賊はカッと目を見開き、再度こちらへ向かってこようとしたが、
ドンドン!
ドアを激しく叩く音が聞こえた。
「アリア様!アリア様!いかがなされましたか!?」
先ほどの賊が壁に打ち付けられる音に気づいた警備兵なのだろう。
賊はチッと舌打ちをすると、窓の方へ走って行き窓を開けた。
えっ!?そこから飛び降りる気!?
死ぬわよ!死ななくても下には警備兵がいるはず!
そして、賊は警備兵がドアを開けた同時にやはり窓から飛んだ。
そう飛んだのだ。だが下へ墜ちずそのまま空を飛んで去って行った。
私と警備兵は呆然と賊が見えなくなるまでその光景を見ていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「アリア!大丈夫か!?」
荒々しくルイス殿下がドアを開ける。
「大丈夫です。」
やっと普通に呼吸ができるようになったところだけどね!
ルイス殿下は私の姿を見た途端に顔を歪めた。
あっ、やっぱり目立つのか······。
私の首にはくっきりと首を絞められてた痕が残っていたのだ。
あれから私達は我に返り、当たり前だけど凄い騒ぎとなった。
ちょっとしてからレイナが「大きな音がしましたが、どうかされましたか~」と気が抜けるようなセリフで部屋から出てきた。
私の部屋の前を警備をしていたのは全員で五人。
ドアの前に二人、その向かいの窓の前に二人、階段の所に一人だ。
警備兵は言うには、何者も来訪はなかったとのこと。いきなり私の部屋の賊が壁にぶつかる音以外は怪しい物音もしなかったとのこと。
どうやって私の部屋に入ってきたのか·····多分だけど空を飛んできて、部屋の窓からと考えた方がいい。だって逃げる時、空を飛んで行ったんだもの。
ルイス殿下は私の前までやってきて、優しく首を撫でた。
「アリア、痛かっただろう。」
「アリアさまぁあああ!」
ドタドタと廊下を走る音が聞こえ、またもや荒々しくドアを開けるネネがいた。
ネネは余程急いできたのでしょう、かなり髪が乱れている。
「アリア様!ご無事で何よりです!」
ネネはルイス殿下が私の首を撫でていた手を払い退けて私を抱きしめた。
ネネ····ルイス殿下の手を払い退けるなんてやるわね。
ルイス殿下は呆気にとられていたけれど、苦笑している。どうやらネネを許してくれるらしい。
しばらくしたらネネも落ち着いてきたようで、お茶の用意をすると言ってレイナに指示をしたりと忙しく動いている。
とりあえず私達は椅子に座り、ルイス殿下に襲われた時の状況の話しをした。
「うむ。空を飛んで逃げたなど、にわかには信じられないな。」
私の話しを聞いてルイス殿下の顔が険しくなる。
「そうですね。人間が飛べるなど聞いたことはありませんね。」
ルイス殿下の後ろで立っているイーサも信じられないと言った。
まあ、当然だわ。
「ですが、警護に付けていた者も見たと言っています。さすがに信じるしかないでしょう。」
「そうだな。所謂、おとぎ話の魔法ってやつか?それとも悪魔か?」
「ルイス殿下、悪魔なら既にアリア様はここには座ってないと思います。」
「·····まあ、それはさて置き、誰がアリアを亡き者にしようとしたかだな。」
それよね。三年半前にママイヤ国から狙われていたけれど、ララベルが女児を産んだからもう大丈夫だと思っていたわ。
あとは······
「とうとうモッコロ帝国が動き始めた····かですね。」
「それも考えられるな。ところで賊は見つかったか?」
「いえ、そのような報告はまだ受けておりませんが捜索はまだしております。ただ、アリア様が言うように空に飛んで逃げたとしたら見つけるのは至難の技だと思います。しかも明るさも出てない夜明け前ですし。」
「確かに。だが、もう少し捜索をし、この辺に住んでいる住民に目撃者がいないか探せ。」
「畏まりました。」
イーサはお辞儀をして部屋から出て行った。
ルイス殿下は私の方に向き直った。
「さて、アリア。しばらくは私の宮で過ごしてもらうよ。」
「えっ!?」
「当たり前だろ?アリアは命を狙われたのだよ?賊が飛べるのが本当なら護衛を増やしてもそこまでの成果がないだろう。この離宮でまた何かあってもすぐに対処は出来ないからね。その点私の宮なら護衛ももっときっちりできるし、私が隣に居れば相手も早々に手は出せないだろう。勿論、外出は当分禁止だよ!」
「えっー!そんなあ。」
私のしょんぼりした姿にルイス殿下はくすりと笑い、すぐに真顔になった。
「果たしてアリアを狙った黒幕は誰か·····。多方面で調べる必要があるだろう。モッコロ帝国か、はたまた·······」
ルイス殿下はその後に続く言葉は言わずに窓の外を睨んでいた。
そう、私を狙ったのは誰なのか。賊も言っていた「この世界には魔法がないはず」という言葉も気になる。賊も確かに魔法らしきものを使っていた。
これはネネにも相談しなくては。
明日····もう今日ね。後にでもネネに相談することにした。
私達の知らぬ所でそれぞの思惑のもとに確実に闇が動き始めていた。
お読みくださりありがとうございます。
ブクマ、感想をありがとうございます。活力にさせていただいております。
 




