表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/80

第八話 日焼け対策はメアリーにおまかせ

 今までなら、午前中はルイスと一緒に一般教養やマナーのお勉強、ダンスレッスンなどをして、お昼からは主に音楽系のお稽古をしていた。ルイスはプラスして剣術や乗馬も習っていて私よりハードな毎日を送っている。次期公爵として、恥じないようお父様が鍛え上げているようだ。

 私の場合、セシル先生が来てからはお昼を丸々錬金術のお勉強に使えるようになった。

 昨日は先生がお屋敷に来たばかりであまり時間がなかったので、錬金術とはどういうものか基本を習って水見式をしただけで終わった。

 いよいよ今日から本格的に訓練を初めて行くわけだけども……



『錬金術士はまず体力がなければ始まりません。ということでリオーネ、アトリエが完成するまでは体力強化訓練を重点的に行っていきましょう。明日は動きやすい服装に着替えて玄関前に集合です』



 昨日の先生の言葉を思い出し、クローゼットの中を漁るものの、私のクローゼットにはドレスやワンピースしかない。それはそうか、お嬢様としてお淑やかに過ごす生活にズボンなんて必要ないから当たり前だ。スカートで運動は抵抗がある。


 かくなるうえは……私は迷わず隣の部屋へ向かった。部屋の主であるルイスにお願いして動きやすいシャツとズボンを借りることにしたのだ。



「どうしたんだい、リィ?」



 優しく微笑んでルイスは私を部屋に入れてくれた。どうやらヴァイオリンの練習をしていたようで、開きっぱなしの楽譜と窓際のテーブルの上に置かれたヴァイオリンが目に入る。

 練習を中断させてしまい申し訳なく思い、私はすぐさま要件を切り出した。



「ごめんね練習の邪魔しちゃって。実は動きやすい服を貸して欲しくて」

「それは全然構わないんだけど……リィ、無理だけはしないでね」

「うん、分かってる。ありがとう。ルイスも最近遅くまで練習しているみたいだし身体壊さないようにね?」



 私が錬金術を学びたいと打ち明けたあの晩から、ルイスはヴァイオリンの練習量をかなり増やしている。夜も遅くまでレッスンルームに籠もって楽譜と向き合っている姿を何度も見た。



「バレてたんだ……リィの姿で無様な演奏は出来ないからね。頑張るよ」



 やっぱりか。私のために頑張ってくれてたんだ。昔から自分のことより私のことを優先してくれる優しいお兄様。精神年齢は私の方がかなり上なのに、何だかこのままでは申しわけなさすぎる。

 私もルイスのために何かしてあげたい。アトリエが完成して錬金術で何か作れるようになったら、いっぱいプレゼントしよう。



「私も頑張るね! アトリエが完成したら、ルイスのためにいっぱい便利なアイテム作るから待っててね」

「うん、ありがとう」



 ルイスに別れを告げ、借りた服を大事に握りしめて自室に戻ると、侍女のメアリーがベットメイキングをしていた。



「お嬢様、もう出来ますから少しだけお待ち下さいね」

「いつもありがとう。着替えたら出て行くから急がなくても大丈夫だよ」

「ではお手伝いしますね……って、お嬢様。それに、着替えるのですか?」



 私が手に持つ服を見て、メアリーが驚いたように目を見開いて尋ねてくる。いつも着替えるときは、彼女が相応しいドレスを見立てて髪のセットから全てやってくれる。でも今はこの簡素な服に着替えるだけなので別にお手伝いは必要ない。



「う、うん。先生に動きやすい服装に着替えてきて下さいって言われたから、ルイスに借りたの」

「まさか、お外に出られるのですか?!」



 『玄関前に来て下さい』って先生は言ってたから、多分外で特訓するのだろう。

 メアリーの言葉に頷くと、彼女はベットメイキングをしていた手を止め「お嬢様、少々お待ち下さい」と言って部屋を出て行ってしまった。


 時間もあまりないし、とりあえず着替えよう。ワンピースを脱いで前開きの白いシャツのボタンを閉めて、七分丈の黒いズボンをはく。ずれないようにサスペンダーをつけたら完成。流石は双子、サイズもピッタリだ。髪を一つに束ねたら、ルイスみたいになった。


 来るべき社交界に向けて、ルイスは髪を伸ばし始めた。最近は少し結べる長さになっていて、1つに束ねていることが多い。まだ私の方が髪は長いけれど、結んで正面から見ると本当にそっくりだ。


 お母様譲りのプラチナブロンドに、お父様譲りのエメラルドグリーンのぱっちり二重の碧眼。最近はきちんと食べるようになって体重も少し増えて血色もよくなった。前世の言葉で例えるならフランス人形を連想させる容姿。流石は人気を博したキャラと一卵性の双子だけあって、リオーネの容姿は非の打ち所がないほどの美少女だ。



「お、お待たせしました」



 その時、息を切らしてメアリーが戻ってきた。手に小瓶を携えて。



「お嬢様、くれぐれも日焼けだけはしないで下さいね。折角の綺麗なお肌が赤く腫れてしまっては、メアリーの楽しみが減ってしまいます」



 液体を私の露出した肌に塗りたくりながら、メアリーは涙ながらに訴えてくる。

 可愛いものに目がない彼女は以前、私とルイスにお揃いのドレスを着せてお人形さんに仕立てるのが夢だと言っていた。たぶん、そう遠くない未来にその夢は叶うだろう。よかったね、メアリー。


 全身がレッドラズベリーの甘酸っぱい香りに包まれた。この世界には前世にあったような白い日焼け止めは存在しない。

 その代わり、自然の素材から作られたオイルが日焼け止めの代わりとして使われている。中でも1番サンスクリーン効果が高いのが、このレッドラズベリーのオイルだった。

 私の肌を気にかけてくれたメアリーにお礼を言って、日焼け対策をばっちり終えた所で先生の所へと向かう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍1巻が『角川ビーンズ文庫』より発売中です!
呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ
(クリックでAmazon作品ページへ)

『B's-LOG COMIC』より、コミックス1巻が7月1日(火)に発売します!
呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ
(クリックでAmazon商品ページへ)

コミカライズの試し読みは下記のリンクをご利用ください!(1話無料でお読みいただけます)
カドコミ

+ + +
「第11回ネット小説大賞」で小説賞受賞
書籍1巻が『ブシロードノベル』より発売中です!
訳あり令嬢は調香生活を満喫したい! ~妹に婚約者を譲ったら悪友王子に求婚されて、香り改革を始めることに!?~
(クリックでAmazon商品ページへ)

『コミックグロウル』で、コミカライズの連載始まりました!
訳あり令嬢は調香生活を満喫したい! ~妹に婚約者を譲ったら悪友王子に求婚されて、香り改革を始めることに!?~
コミカライズの試し読みは下記のリンクをご利用ください!(1話無料でお読みいただけます)
コミックグロウル

+ + +
「第1回BKコミックスf令嬢小説コンテスト」で佳作受賞
コミカライズ単行本1巻が、『BKコミックスf』より、発売中です!
汚名を着せられ婚約破棄された伯爵令嬢は、結婚に理想は抱かない
(クリックでAmazon作品ページへ)

コミカライズの試し読みは、下記の先行配信先をご利用ください!
ピッコマ作品ページ

+ + +
COMICスピア コミカライズ原作大賞で、
準大賞と特別賞を頂きました!
2月22日(土)より、コミカライズ連載開始!
異世界転生して幻覚魔術師となった私のお仕事は、王子の不眠治療係です
(クリックでRenta!販売ページへ)

小説の電子書籍はコチラ↓ 異世界転生して幻覚魔術師となった私のお仕事は、王子の不眠治療係です
(クリックでRenta!販売ページへ)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ