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第六十三話 さぁ、共に戦おう!

「リオーネ! 怪我はないか!?」


 壇上からリヴァイとルイスがこちらへ駆け寄ってきた。


「はい、私は大丈夫です」

「後は騎士団に任せて避難するんだ。ほら、いくぞ」


 私の手を掴んでリヴァイは歩きだす。けれど私はそこから動かない。


 戸惑うように振り向いたリヴァイを真っ直ぐに見据えて、私は口を開いた。


「私はここに残って、エルンスト様を援護します」

「何を言っているんだ。そんな危険なこと、させられるわけがないだろう!」


 ここでワイバーンを止めなければ甚大な被害が出る。幸いここにはエルンスト様が居らっしゃるし、動きを止める手伝いさえ出来ればきっと倒してくださるはずだ。


「リヴァイド。今から王立魔法院に連絡して、魔術師に来てもらうのは時間がかかる。魔法の援護がなければ、あの硬い皮膚に覆われたワイバーンを落とせない。伝令は出しておくが、今はリオーネ嬢の力を借りたい」


 どうやってリヴァイを説得しようかと思っていたら、エルンスト様が後ろから手助けしてくれた。


「兄上……ですが!」

「今ここで止めなければ、数多の民が犠牲になる可能性がある。それに彼女はあの規格外なセシリウス様の弟子だ。そこらの魔術師より断然強いぞ」


 エルンスト様が、私を認めてくれている……もしかして、先生が何か仰られたのかな?


「バルト海岸で、リオーネ嬢は一人でクラーケンに立ち向かった。しかも的確に弱点攻撃を仕掛け、敵をノックバックさせていた。強敵に立ち向かう勇気に、あこそまで正確に魔法を命中させられる優秀な魔術師は、残念ながらこの国には少ないのだよ」


 シューティングゲームは任せて下さい!

 倉庫から素材取ってくるのに毎日モンスター倒してますから、命中力には自身あります!


「リヴァイ。一緒に強くなろうって、約束しましたよね?」


 ここでワイバーンを倒しておかないと、また現れるかもしれない。王妃様の命がいつまでも危険にさらされたまま放置は出来ないよ。


「私は貴方を守れるように強くなりたい。そして人々を幸せにする錬金術士になりたいのです。挑戦もせずにここで逃げたら、私の夢は叶いません」


 不安そうにリヴァイの青い瞳が揺れる。


 賢いリヴァイなら分かっているはずだ。あの大型ワイバーンがもし城下へ行ったら、壊滅的な被害を受ける事を。


 きっと今、数多の国民と私の身の安全を天秤にかけて揺れているのだろう。王子としての使命をとるか、一個人としての願いをとるか。


 それなら私がやることは一つ。危険なことはやらないよーってアピールして、リヴァイを少しでも安心させてあげることだろう。


「先生に頂いたこのバッグ、私のアトリエと連携されているので色んな便利アイテムを取り出せます! それに飛行モンスターは、倉庫で何度も倒して訓練を積みました! 無茶はしません。私はエルンスト様が戦いやすいように、あくまでも援護するだけです! それに……」

「言い出したら聞かないのが、リオーネだったな」


 必死に説得していたら、リヴァイがふっと表情を緩めて笑った。


「お前はいつも、夢に向かって真っ直ぐに進む。それを無理やり止めたって、無駄なことは最初から分かっていたのにな」

「リヴァイド、心配なら傍で守ってやれ。魔法の腕は優れていても、防御面は紙のように薄い。そんなお姫様には、ナイトが必要だろう?」


 エルンスト様、よくご存知で。


 魔術師タイプだから打たれ弱いし、俊敏性もあまりない。体力だけは地道につけてきたけど、実戦においては前衛が居ないと安定した攻撃は出来ないんだよね。


「分かりました。リオーネは俺が守ります」

「リヴァイ、ありがとうございます!」

「二人が残るなら僕も残るよ」

「え、ルイスも!? 出来ればお父様達と一緒に避難を……」

「お父様はお母様について、休憩室だよ」

「お母様、どこか具合が悪いの!?」

「少し気分が悪くなったんだって。光に浴びすぎたせいかな。リィがお友達と話し込んでた時に、お父様が休憩室に連れていかれたから」

「そうだったんだ……」

「それで、まさか一人だけ避難してろなんて、言わないよね?」

「でも、危ないから……」


 出来る事なら安全な場所にいて欲しい。

 でもルイスは絶対に引かないだろう。

 

 お父様が大事にしていた置物を誤って私が壊してしまった時も、その欠片を拾ってわざと床に落とした後、『壊したのはリィだけじゃないよ』って一緒に怒られてくれた。


 私を置いていくっていう選択肢が、お兄様の中にはない。むしろいつだって、その苦労を一緒に背負おうとしてくれる。


「心配なら、僕のステータスを確認してごらん」

「分かった」


 え、嘘!?

 冒険者レベルが60もある!

 私はまだ50になったばかりなのに……


「いつの間にこんなに強くなったの!?」


 私はどうやら大きな勘違いをしていたようだ。

 いつからお兄様が、私より弱いって思っていたんだろう。

 偉大な先生に教授してもらって、エルンスト様にも誉められて、強くなった気でいた少し前の自分が、恥ずかしい!


「毎日リチャードに鍛えられているからね」


 確かにリチャードは今は亡きとある島国で軍隊に所属してたって、聞いた事あるけど。


 あれ、もしかして実はすごい隠しキャラだったり……? ま、まさかね。


「久しぶりに共闘するか、ルイス」

「いいね、腕がなるよ」


 リヴァイとルイスは懐から、私があげたミニマムリングで小さくしていた魔法剣を取り出した。二人とも、何気に用意周到……有事に備えていたのは私だけじゃなかったのね。


「ルイス君は万能型だからな! 二人でしっかりリオーネ嬢を守ってやってくれ」

「はい、お任せください!」


 一緒に戦った事がないから、お兄様の実力を見れるのは楽しみだ!



 器用貧乏だと言われがちな風属性。

 でもそれは逆に言えば、美味しいとこどりして基本は何でも出来る。


 攻撃も防御も回復も、味方をサポートするバフやデバフスキルまで備えている使いやすいハイブリット傭兵、それが作中のルイス公だった。


 強敵相手に味方の生存率を上げ、安定した戦いをするって意味では一番の実力を発揮する、まさに縁の下の力持ち。


 リヴァイド陛下と組ませて使える強力な協力技もあって、とても便利だった。あっという間に敵を一掃してくれるから。


 でもサブキャラクター扱いだったから、一緒に戦えるのはメインストーリー進行中のウィルハーモニー編だけだった。


 それが「リューネブルクの錬金術士」で、彼等が人気キャラランキングで一位、二位を争う事になった原因なのかもしれない。


 他のダンジョンでも傭兵枠として使わせてくれ!

 もっと一緒に冒険したい!

 どうしてサブキャラにしたんだ!

 個別エンド希望!


 といった感じで、要望と苦情が殺到。


 そのあまりの人気ぶりに、ウィルハーモニー王国を舞台にしたファンディスク、音楽系恋愛シミュレーションゲーム「夢色セレナーデ」が発売されたほどだ。


 学生時代のリヴァイド陛下とルイス公を攻略できる! って女性ファンは歓喜したけど、男性ファンはこれじゃない感に苛まれたとか。


 その後、携帯ゲーム機用にリメイクして発売された時にはメインキャラとして昇格し、個別エンディングが追加され、どこのダンジョンでも傭兵キャラとして連れ歩き可能になったって翼が言ってたな。ゲームの情報誌見ながら。



 緊急事態時に不謹慎だっていうのは分かってる。分かってるけど、一緒にボスを倒すなんて冒険してるみたいでワクワクしてきた!

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