第四十七話 夢のスペシャルパーティー完成?
それから一週間、『ウォーターガン』の作成を頑張ったけど、未だに完成はしていない。
転送装置のおかげで、足りなくなった素材はすぐ購入して補充出来る。貯まったダークマターを売りに出せば、元手は何とか取れるから現状資金には困らなかった。
とはいえそんなに増えもしないから、コツコツ依頼もこなして着実に資金を貯めていく事も大事ではある。依頼のランクもあげていきたいし!
「先生、何がいけないのでしょうか……」
「そうですね。オリジナル錬金術が成功しづらいのには、三つの理由があります。一つ目は、組み合わせる素材の相性が悪い事。二つ目は、イメージが足りていない事。そして三つ目は、そのアイテムの推奨錬金レベルに達していない事です」
何度も試行錯誤して、ボディの素材は一つ『ローレライの鱗』に絞った。
水辺に住むモンスターの素材は水を扱うアイテムとの相性がいい。それに加えてしなやかな柔らかさで手にも馴染みやすく、見た目も美しい。さらに色々組み合わせた中で、その素材を使った時が一番錬金中の輝きが増したから。それは先生も視覚的に確認してくださったから、素材の組み合わせは悪くないと思う。
イメージは何度も頭にしっかり叩き込んでいる。完成したアイテムをどのように使って欲しいかをイメージする事も大事だって先生が仰っていたから、トム爺がガンナーのごとく巧みに『ウォーターガン』を使いこなして水やりする姿を想像した。とても格好いいお爺ちゃんになった! そう考えると残りは一つ。
「錬金術レベルが、足りてないのでしょうか」
「たとえ推奨レベルに達していなくても、成功率は0ではありません。諦めずに挑戦すること、それがとても大切な事ですよ。それに挑戦し続ける事で、自然と錬金術レベルも上がります。諦めずに頑張りましょう!」
「はい、先生!」
「とはいえ、根を詰めすぎるのも身体に負荷がかかります。リオーネ、気分転換に今日は外へ素材集めに行きませんか?」
「え、いいんですか!?」
「ロナルド卿にはきちんと許可を頂いていますので、ご安心ください。倉庫の中でモンスターの倒し方は身につけてますし、たまには外で訓練しましょう」
「やった、ありがとうございます!」
「ローレライの鱗の在庫が減っていますのて、バルト海岸へ行きましょう」
「はい! 外に行けるならどこでもいいです!」
意気揚々と外出の準備をしていたら――
「リオーネ、遊びに来たぞ!」
おっと、なんてタイミングで遊びに来るんだ、リヴァイ。しかも今から向かう所は海。リヴァイの苦手な水が目の前にたくさんある所だよ。
「こんにちは、リヴァイ。あの、今からバルト海岸へ行くのですが……」
「バルト海岸……海に行くのか!?」
「はい、そうなんです……」
「いいなー海! 楽しそうだ!」
「え、エルンスト様!?」
「リオーネのアトリエに行くって言ったら、先生に用があるからと兄上も付いてきたのだ」
「人手は多い方が助かりますし、エルンスト君には私が声をかけておいたんです。暇な時に会いに来てくださいと」
えっ、なにこの夢のスペシャルパーティー。
「やぁ、リオーネ嬢。元気にしてたかい? セシリウス様も、三日ぶりですね!」
え、三日前に先生とは会ってたの?!
「エルンスト様、ご無沙汰してます」
「先日は助かりました。しかしエルンスト君とはいつも、想定外の場所でお会いしますね」
「ただ庭園を歩いてただけなんですけどね、気が付くといつも何故か見知らぬ場所に居るんですよ。本当に不思議だよなー」
エルンスト様、それは精霊の悪戯です。
「いい機会だ、リヴァイド。ついでに海で苦手を治しに行こう」
「え、いや、俺は……」
「リヴァイド君。確かに火属性の方は水との相性が悪いけれど、慣れれば大丈夫ですよ」
「さ、いくぞー!」
「は、はい……」
リヴァイが借りてきた猫みたいになってる。大丈夫かな?
脳筋のエルは、努力論推奨派の言わば熱血キャラだった。「さぁ、まずは水に飛び込む練習だ!」とか、無茶言い出しそうな気がする。
先生とエルは属性の相性の問題だと思っているようだけど、リヴァイの水が苦手な理由って、本当に属性の相性から来るものなのだろうか?
水に触れるけどその触れてる感覚が嫌いだから触りたくないっていうのと、水そのものに恐怖を感じて触れないっていうのは、根本的に違う。
リヴァイの場合は前者より後者。苦手というより、恐怖の感情の方が強かったように感じたけど。
「リヴァイ、本当に大丈夫ですか?」
「あ、ああ。いつまでもこのままでは、いけないしな……」
ぎゅっと握りしめられたリヴァイの手は震えていた。何とか力になってあげられないかなと考えて、私はチェストからあるものを取り出した。
『水の腕輪』――水耐性効果のあるブレスレットだ。品質は普通で小効果だけども。
「リヴァイ、よかったらこれを。水耐性効果のあるブレスレットです。私が作りました」
「俺に、くれるのか?」
「はい。品質も普通なので、ほんの気休めにしかならないと思いますが……」
ないよりはマシだと信じたい。
「いや、とても嬉しいぞ。ありがとう」
腕にはめてあげると、リヴァイは満足そうに顔を綻ばせた。笑顔を取り戻してくれてよかったと、私はほっと胸を撫で下ろす。
これから待ち受ける苦難に比べたら、本当に気休めにしかならないだろうけど――頑張れリヴァイ。