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第四十話 平常心! 平常心!

「おはよう。リィ、クマが酷いけどどうしたの? 具合悪いなら式典休む?」


 翌朝。部屋を出ると廊下でばったりルイスに会って、心配そうに顔を覗き込まれた。

 しまった、今日は建国記念式典があるんだった。クマは後でメアリーに隠してもらおう。


「おはよう、ルイス。大丈夫だよ。気になった事があって、あまり眠れなかっただけだから」

「何がそんなに君を悩ませたの? 僕に出来ることがあるなら言ってね」


 隠しても、ルイスには結局バレちゃうんだよな。心配かけるより、話した方が早い。そう思った私は、キョロキョロと周りに誰もいないのを確認して口を開いた。


「ルイス」

「うん、なんだい?」

「私が前世の話したの、覚えてる?」

「うん、覚えてるよ」

「そこには『ゲーム』っていう架空の物語を楽しむ遊びがあって、物語の主人公になって色々行動することで物語を進めて遊んでいくの。その物語の登場人物に、私やルイス、リヴァイ、セシル先生が登場するよく似た物語があったって言ったら、信じてくれる?」

「もちろん、信じるよ」

「昨日の夜ね、そのゲームの中の物語で、衝撃の事実を思い出したの」

「衝撃の事実?」

「そう、リオーネってキャラがね……セシル先生と将来結婚してたの……」

「え、リィが先生と!?」

「あくまでも架空の物語の中でだよ。それを思い出して、一体何があってそうなったのか気になって、気になって、眠れなかったの」

「どうしよう、僕にはその答えは分からないや」

「私にも分からないの……」

「要するに、確認のしようがない物語の真相が気になるって事だよね?」

「うん、そんな感じ」


 ルイス、頭いいな。私の分かりにくい説明を瞬時に理解してくれた。


「仮説を考えるのはどう? 例えば二人には、錬金術っていう共通の趣味があるから、一緒に最高のアイテム作る約束して成し遂げてそうなったーとか」


 その世界線で、リオーネは錬金術には出会ってなかったと思うって説明するのもややこしいな。


「おはようございます。リオーネ、ルイス君。楽しそうに何の話をしているのですか?」

「おはようございます、先生」


 びっくりした。まさか先生が後ろから現れるとは。

 

「あ、先生! おはようございます。今ちょうど、架空の物語の中でリィと先生が結婚していたって話を……」

「ちょっと、ルイス!」


 慌ててルイスの口を塞いだ。


「あれ、先生もリィの前世知ってるんでしょ?」

「それはそうだけど……」


 それを本人に言わないで!

 先生はルイスより色々『ゲーム』の知識を知っている。

 ルイス的にはあくまで架空の物語の話だから、隠すことでもないって判断したんだろうけど――本人に聞かれたら恥ずかしいよ!


「興味深いお話ですね。リオーネの知っているゲームの中では、私と君は結婚していたのですか?」

「……はい」


 うぅ、恥ずかしくて先生の顔が見れない。


「それは良い事を聞きました」


 でも心なしか、先生の声がいつもより弾んで聞こえたのは何故だろう?


「何でそうなったのか、理由が分からないって言うから仮説を考えて遊んでたんです」

「私もその遊びに参加してもいいですか?」

「え、先生も?!」

「わー面白い! 本人から聞けるって、面白いよ、リィ!」


 ルイス、楽しんでるな。


「それでそれで、先生の見解は?」


 先生は何て答えるのだろう。


「そうですね。その架空の物語の中で私は、リオーネのひたむきに真っ直ぐ頑張るところを応援したくなり、錬金術を誰かのために役立てようとする優しい姿勢に感銘を受け、年齢に似つかわしくない大人びた思考や言動で時には諭し驚かせてくれる、そんな彼女と過ごす日々が、刺激的でとても楽しかったのでしょうね。だからリオーネと共に、もっと錬金術を楽しみながら歩んでいきたかったのではないかと思います。それで私から、プロポーズしたのではありませんか?」


 まるで自分の事を言われているような気がして、無性に恥ずかしくなった。心臓がバクバクしてる。

 だって先生は知っているはずだ。ゲーム中のリオーネは奇跡の双子と称されるヴァイオリンの名手であった事を。錬金術を学んでないことを。


「確かに! 先生の見解が説得力ある! リィはどう思う……って、リィ顔が真っ赤だよ!?」


 もしさっきの発言が、先生の本音だったとしたら……? いやいや、あくまでも先生は遊びに付き合ってくれただけだ。架空の物語の中でって前置きしてたし。真に受けたらだめだ。平常心、平常心!


 ゲームはゲーム、現実は現実だ。

 ゲームの物語は、あくまでもたくさんあるうちの一つの可能性を示した未来にしか過ぎない。それを現実に無理やり当てはめて考えるから、おかしくなってるんだ。


「架空の物語でも、何だか想像したら恥ずかしくなっちゃった。だからこの話はもうおしまい! 先生、アトリエに私が作りたいアイテムの設計図を置いているので、後で確認してもらってもいいですか?」


 普通に話せてるかな? 若干声が上ずってしまったような気がしないでもないけど、これ以上この話題に触れちゃダメだ。心臓に悪い。


「ええ、もちろんですよ。今日は確か、建国記念の式典がある日でしたね。講義はお休みにしましょう」

「はい、分かりました」

「そういえば、後でリヴァイが迎えに来るって言ってたよ」

「え、わざわざ?! 王城で開かれるのに?!」

「少しでも、リィと長く過ごしたいんだってさ。愛されてるね」

「もぅ! からかわないでよ」


 私は誓った。ルイスに良い人が出来たら、目一杯からかってやろうと!


「あはは、ごめんごめん。そろそろ食堂に行こうか。遅いとリチャードが呼びに来るし」


 噂をすれば、リチャードの姿が。


「朝食の準備が出来ております。皆様、そろそろ食堂の方へお願いします」

「うん、分かった。ほら、やっぱりね」


 式典に参加するのは億劫だけど、今は外に出れて良かった。変に意識してしまって、先生の顔がまともに見れない。

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