エイリアンとの決戦
頑丈そうな扉が開かれると俺は素早く狙いを付ける。
乾いた発砲音と共に放たれた弾丸は真っ直ぐ指令官のエイリアンの頭へと進み、その醜い頭部を吹き飛ばした。
続けざまに放った弾丸が指令室に残るエイリアンの頭を確実に捉えると、糸の切れた人形のようにバタバタとエイリアンたちは床に倒れ、指令室は静寂に包まれた。
「聞こえるか? 指令室は確保した」
「了解です。流石はご主人様、見事な手際です。それでは指示に従ってターミナルの操作をお願いします」
「分かった」
イヤホンから聞こえてくる少し機械的な女性の声。
相棒のサポートロボット『ミラ』の指示に従い見慣れない文字の書かれたパネルに触れていく。
「......これで操作は完了です。この宇宙船は敵の母艦に向かって進んでいくことでしょう」
「ああ、これで厄介ごとが一つ消えたな」
エイリアン用の少し座りづらい椅子に腰を掛けて、俺は深いため息を付いた。
エイリアンの船は静かに動き出し窓から見える星が後方に流れ始める。
「プログラムには反しますが、ここで貴方と共に活動を停止すると云うのも少し魅力的に感じますね」
「そうだな、それも悪くない。......とりあえずはこれで家畜や実験動物のように扱われる人間が少しは減ることだろう」
俺の負った傷は浅くなさそうだ。
緊張の糸が切れるとじわじわと痛みが傷口から広がっていくのを感じる。
弾丸も残り僅か。
ここで終わりか......。
そう思ったときイヤホンからミラの声が聞こえた。
「......ですが、もう少し足掻いてみませんか? 脱出成功の確率は低いですが0ではありません」
「成功の確率は聞かない方が良さそうだな。......で、作戦は?」
「はい、まずは......」
****
......数ヶ月後。
吹き荒れる砂埃、常に反応し続けるガイガーカウンター。
俺とミラは何とかエイリアンの宇宙船から脱出し、再び荒廃した地上へと戻る事が出来た。
その代償は左腕だったが、まあ安いものだろう。
「ご主人様、義手の調子はどうですか?」
「ああ、大分馴染んできた。悪くない」
俺は義手の動きを確認するように手を開いては握った。
......全世界を巻き込んだ大規模な核戦争から200年。
世界から文明や秩序は失われ、瓦礫と未だに残る放射能の中、それでも人類は生き延びていた。
俺の横で浮遊する戦前の遺物。
相棒の『ミラ』だ。
白い球形のボディに上にはアンテナ、左右にはレーザーガン、下部にはマルチアームを備え、度重なる冒険の度に強化されていった『彼女?』はサポート機能だけではなく戦闘においてもかなりの力を発揮する。
「ご主人様、レイダーです。数は2」
「了解」
「ヒャーッハッハッハッハ! 全部置いてけ! 命もだ!」
「お前は今夜の晩飯だ! ロボットはスクラップにしてやる!」
そう言いながら銃を向けるレイダー達は引き金を引く前に、1人は俺の銃弾で。
もう1人はミラのレーザーによって額を撃ち抜かれた。
「ご主人様! 凄いです、ほぼ同時に撃ち抜きましたよ!」
ミラが興奮を表すように左右に揺れる。
恐らく俺のタイミングに射撃を合わしたのだろう。
正直、彼女と戦っても勝てる気がしない。
「どうしました?」
「いや、お前が敵じゃなくて良かったよ」
「ふふ、世界を敵に回しても私は貴方の味方ですよ。さあ、彼らに必要なくなった物を持っていきましょう。Drレッドへの良いお土産になればいいのですが」
「そうだな」
俺たちが向かう先はDrレッドの研究所。
彼は戦前から生きている科学者で、今では脳以外が機械に入れ替わっている。
そして多くない友人の1人でもある。
今回はミラがエイリアンのターミナルからハッキングの際に手に入れた情報を元に作った『転送装置』の試作品が出来たというので見物に向かっているところだ。
ミラ曰く、成功の確率は28%らしい。
まあ、ついでに義手の微調整をしてもらうつもりだ。
失敗して落ち込む彼を慰めるという役目もある。
厳重にカモフラージュと警戒が施された彼の研究所の秘密の入り口。
そして、俺たちはゆっくりと開く扉から中へと入っていった......。