続 子の心
「にしても、ヨシコさんが笑いじゃなくて本気でああいうぶつかりをするなんて意外でしたよ」
姉とヨシコさんと俺の3人で食堂で昼食を食べている時に俺が言った。
午前中に起こった領民課での出来事だ。
基本的にこの悪魔は笑いの為のなら何でもするが、真面目な事をしている姿を見るのは結構珍しい。
「アカメちゃん、私が義妹になってもいいの?」
「ええい、まてい、何処をどうしたらそうなる」
「あら、私のギャップの姿を見て惚れてしまった童貞君が苦難を乗り越えて結ばれる壮大なストーリーの始まりと許り思ったわ」
姉さんも本人同士がいいならいいんじゃないのとか言わない。
「ない、それはない、ヨシコさんにに惚れるとか桂林大樹が完結するくらい無い」
「またまた、姉さんがいるからってテレちゃって、しょうがないわね
会社の裏にある木のしたで、私が髪を赤く染めて行ってあげるから待ってなさいよ」
「人が珍しく褒めてるのにわけのわからない事言わないでくださいよ」
俺がそう言うとニヤニヤしながらヨシコさんは答えた。
「ふ、私だって人の子よ
ああいう奴は更生したら人並みと勘違いしてるアホなのよ
普通の人は普通にやってもプラマイゼロなのになんでマイナスの奴がまともになったからって普通になったと勘違いしてるのよ。
体力を持て余してるなら男性だから軍には入れないけど、ハンターとか格闘家とか目指せばいいのに世間様に迷惑をかけて、挙句の果てに親にまで迷惑かけるなんてただのカスよ」
おお、ニヤニヤしながらじゃなかったらまともな事言ってる様に聞こえるな。
すると姉さんが口を開いた。
「まあ、ヨシコが言ってる事が全部正しいとは言わないけど安心しな
彼奴が本当に会心してるのかどうかってのはすぐわかるさ」
ん? 姉さんシネカスの事知ってる様な口ぶりだな
「姉さん、シネカスの事知ってるの?」
「ん? もちろん知ってるぞ
昔夜見かけた事あるしな、それに彼奴の母親も領民課に相談しに来たりしてたからな」
おお、そうだったのか
姉さん記憶力めちゃくちゃいいからな、つまり何か考えがあって悪魔の事を止めなかったのか。
「私は彼奴の事知らないけどね」
まあ、こういう人だよな
そんな会話をしていると予鈴がなったので、俺達は午後も領民課で仕事をする事となった。
「婆ちゃん、その件は此方で近いうちに何とかするから無理しないでくれよ」
姉さんが窓口に立ち相談を処理している、お婆さんの家の瓦が落ちそうだから何とかしてくれないかという内容だった、本来はこういった事は業者にお願いした方が早いのだが
緊急でも無ければ魔王軍でも受け付けている、しかも無料で
新たに作りなおしとかであれば別であるが、ちょっとした軽作業であれば領民の為に動くのが我が魔王軍である。
「自分でがんばりなさい」
悪魔も窓口に立って相談?を受けている
受付を済ませて誘導している人による意図的な判断なんだろうな
内容も好きな人が人が出来たんでどうしたら付き合えますかとか、本当にアホな相談が多い
たまに騒ぐ人もいるが悪魔に睨まれた瞬間黙ってしまう
一応あれでも北部軍のナンバー2である、一般の人であればそれだけでビビるであろう
一応そう言ったどうでもいい案件に関しては役にたってる様だ。
すると案内役の人が姉さんの所に来て何やら相談している
名采配をしていた案内役の人が相談する案件とは一体なんであろうと思ったが、案内されてきたのは
シネカスだった、しかも悪魔の列に。
「あら、保険に入ってきたのかしら、だったら死ぬ時くらい人の迷惑に掛からない所で死になさいよ」
「考えたんだけど、駄目なんだ、今更過去に戻るなんて出来ない
でも、俺も今更だけど迷惑かけた周りに謝りたい、みんなの役に立ちたいんだ
アンタに言われて何も言い返せなくてさっきは逃げたけどさ、でもアンタの言った事は間違えてないかった
だから俺は何も言い返せないで逃げ出したんだ。
何か、俺でも出来る事が無いか、あったら教えて欲しいんだ、協力してくれないか」
「そうやって頭を下げて他人に聞いたら答えが帰ってくると思うのが許されるのは未成年までよ」
「わかってる、俺は本当にカスで何もしてこなかった
余った力を暴力に使うだけの本当に駄目な奴だったんだ
あんたの言う通り、母親の愛情って奴をDQNメンタリー番組見て自分が恥ずかしくなっちまって
だからここの相談所にやってきたんだけど、俺は本当に薄っぺらい奴だった
馬鹿をやってる時だって一番になれない、いつだって口先ばかり
何もできない癖に偉そうにして、文句だけは一人前さ
ほんと恥ずかしい奴だよ」
おお、なんか午前中あっさり力を貸してやったらこうはならなかったんだろうな
ああやって一度突き放す事で、シネカスにもう一度考えるという事をさせたかったのか
悪魔も実はこういった一面もあるんだな。
そう俺が感動していると。
「大丈夫、シネカスは本当は出来る子だって私は知ってる」
「俺は、そんな立派な人間じゃないんだ」
おお、今度は一度持ち上げて、相手が自ら下げるという高等テクニックか
でもシネカスなんだな
「貴方がなにも出来ないなんて本当は思ってない」
「あんたに俺の何がわかるって言うんだ
俺は、俺が大っきらいだ」
なんか、ヨシコさんの棒セリフに聞こえるけど効果的だな
「空っぽなんだよ、俺は今までこの年まで何かをしてきた事なんてなかった
あれだけ時間があったのに何もしてこなかった、その結果がコレだ、その結果が今の俺だ
何が、周りの役に立ちたいだ、誰かの為に役に立ちたいなんて思いあがりもいいとこだ
アンタだって、俺のそういう所をしっかりと見抜いてたんだろ、そうだろ?」
なんか凄い自虐的になってるな、めちゃくちゃ効果有りだな、これでコイツも本当に改心するかもしれないな
「ヨシコは知っています」
「シネカスがどんなに先の見えない暗闇の中でも、手を伸ばしてくれる勇気のある人だって事を」
ん? 昼食の時知らないとか言ってなかったか?
「貴方の好きな所は何一つ無いし、撫でてきたら殺してやるし、指なんて絶対触らないし
寝顔を見るとしたら殴って気絶させた場合しかありえないし
シネカスが自分の事嫌いだって言うなら、シネカスの良いところは私が知ってるって事を知って欲しくなったの」
全然良い所あがってない気がするんだが
領民課の職員の人もなんかクスクス笑ってるの数名いるぞ
なのにシネカスはなんか感動で震えてるぞ、ちゃんと聞いてたか拒絶しかされてないぞ、良いところ一つもあがってなかったぞ。
「そんなものまやかしだ、俺には良いところなんてないんだ」
まやかしも何も良いところ無かったしな
「シネカスは自分の事しかしらない、シネカスの事を知ってる私の何を知ってると言うの?」
お前さっき彼奴知らないっていったじゃねぇか
シネカスも感動して涙ぐむなよ、話の流れ大分可笑しいぞ。
「シネカスは私の英雄ではない無いけど、私が困ってる時に何一つ役に立たないし
私の事を助けに来る事は今までに一度もなかった、私の凍りついた時をシネカスは動かす事は絶対にできないけど」
「それでも私は信じてるわ」
そこまで否定しておいて何を信じてるのか、お前は
だから泣くんじゃねぇ、こき下ろされてるの察しろよ、だからシネカスなんだよ
「ここから初めましょう、一から、、、いいえ、ゼロから」
悪魔がそう言うとシネカスは周りの目を気にせず大泣きを始めた
小さな声で俺は絶対変わるよとか言ってる
職員の数名は笑っている、ネタわかってやがるな
「ていうか、コレがやりたかっただけですか
俺の少しの感動かえしてくれませんかね」
「ふ、これがゼロから始まる親孝行よ」
後日、シネカスの母親から息子が生まれ変わったかのような良い息子に変わったとお礼の手紙が届いた。
俺は魔王様に始末書を提出する事になった。
「本当に、危ない橋は渡らないでっていったでしょ」
と怒られたが、魔王様可愛いかったし、シネカスも真面目になったからまあよしとしますか。




