猿
強欲な男がタイムマシンに乗って、人類がこの世に誕生する以前の時代にやってきた。その時代の生物で一儲けを企てていた男は、麻酔銃を使い、手当たり次第に生物を撃っては捕まえていく。
最後に一匹の猿を捕獲し、男は元来た時代へと帰っていった。しかし男が捕獲した猿は、麻酔銃に撃たれたショックと変化した環境に適応する事が出来ず、日に日に衰弱していく。
猿の様子を見ていた男は、
「こいつが死んでも他に生物はいるし、また新しいのを捕まえてくればいい。」
と笑いながら言った。
自分の最後を悟った猿は、男を哀れんだ目で一瞥すると、檻の中で静かに息絶えた。
男の先祖であった猿が亡くなった瞬間、男の存在がこの世から消えた。