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とある夫婦の日常  作者: 茉莉 清香
とある旦那様の日常
7/7

3日目

お待たせしました。

日が変わってしまいましたが、ラストです。

朝起きて、時計を見れば11時になるところだった。

慌てて飛び起きて周囲を見回すと、俺の物を除いて家族全員分の荷物が無くなっていた。

俺はすばやく着替え、顔を洗うと荷物を持って皆が居るであろう居間へと向かった。

途中、次男~4男伯父・伯母達が泊まっていた部屋の前を通ったが、襖は開けっ放しで荷物がなかった。

きっともう帰ったのだろう。

廊下を抜け居間の襖を開けると、そこには父母・弟と長男伯父家族が揃っていた。


「おはようございます…遅くなりました」


気まずさから自然に声が小さくなる。


「いやいや、気にするな。

翔や静に聞いたが、昨日は最後まで手伝ってくれたそうだな。

飛行機に乗るのも夕方のようだし、疲れているだろうと思ってそのまま起こさなかったんだよ」


伯父は機嫌良くそう言った。

…本当は最後までは手伝ってはいないのだが、余計な事は言わない方が良さそうだ。


「そうでしたか、ありがとうございます」


俺は愛想笑いで返す。


「まあ、空港に行くまでまだ時間はある。街中に行けば上手い飯屋もあるから、翔にいろいろと連れて行ってもらえ」


ガハハと笑う伯父の横で、静伯母さんは微笑んでいる。


「じゃあ、そろそろ行こうか」


翔はそう言うと立ち上がり、荷物を車へと運び始めた。


「それじゃあ、お義兄さんお義姉さんも…お世話になりました」


玄関で母が頭を下げる。


「お世話になりました」


俺と京も一緒に頭を下げた。


「じゃあ、兄ちゃん。またな」


「おう、また来いよ。今度はゆっくりな」


伯父は最後まで嬉しそうに笑いながらそう言った。伯母も微笑みながら頷いた。




その後、翔の運転で空港のある街中まで連れてきてもらった。


「叔父さんたちの所に比べたら、賑やかではないでしょうが…」


そう言いながらも、翔は有名無名な観光名所や土産屋等をいろいろと説明しながらまわってくれた。

そのおかげか、時間はあっという間に過ぎて行った。


最後に、街の名物である一番空港に近い土産屋へと寄ってもらった。

ここの土産屋は、かわいらしいご当地キャラの人形が笑顔で店前に鎮座していた。

主に雑貨から菓子、酒などの食品が置いてある。店先には鎮座しているキャラクターのマスコットも売っていた。

特に林檎パイが絶品で、知る人ぞ知る隠れた名所らしい。


(林檎パイ…理紗子は好きだったよな)


ふと思い出した妻の好物。どうせならと2つ買っていく。

ついでにご当地キャラのマスコットも。雪国らしく、ゆきんこの様な格好をした女の子?らしい。


両親や京もいろいろと買っている様だ。


「それじゃあ、そろそろ行きませんか?搭乗手続きで時間取られるだろうから」


翔のその言葉で時計を見ると、午後3時をまわっていた。

会計を済ませると、そのまま空港へと向かった。


「ありがとうな翔くん。お父さんによろしく」

「ほんと助かったわぁ、ありがとうね。お母さんにもよろしく伝えておいてね」

「今度、翔兄こっちに遊びに来てよー」

「おう。またな、翔」


「またな、康太。今度はゆっくり来いよ」


思い思いに挨拶を交わし、翔と別れた。




その後は無事に搭乗手続きを済ませ、飛行機に乗り込む。

席は行きと同じで右一列に俺と京、1つ通路を挟んで父と母の並びだった。


「なんかさー…やっぱり今回も疲れたよな」


眠いのか、あくびをしながら言う弟。


「そうだな」


俺は途中で買ってきた雑誌を読みながら返事をする。


「でもさ…今回はいろいろと体験できたし、行って良かったかも…なんて」


「そうか。珍しいな」


「兄貴…疲れたから、着いたら起こして」


「わかった」


暫くすると、弟の寝息が聞こえてきた。、





午後6時。

ようやく戻ってきた。

飛行機を降りた後、リムジンバスで最寄り駅まで行き、そこで両親・弟と別れてタクシーに乗り換える。

スーツケースの中も、両手にも土産でいっぱいになっている俺を、タクシーの運転手はにこやかに迎えた。


行き先を告げ、家に向かう間に考えていたのは、妻の事だった。

結婚して初めて、寂しがり屋の妻を3日間も1人にしていたのだ。正直心配だった。


段々と家が近づいてくる。帰ったら何て言おうか…どこから話そうか。

そう思っている間に車が止まり、ドアが開けられる。

どうやら、我が家に着いたようだ。


タクシーを降りた後、はやる気持ちを抑えてインターホンを押す。

両手にはスーツケースとたくさんの土産物。


玄関の奥からパタパタと軽い足音が聞こえる。

2、3秒待ってからドアが開いた。そこには愛しい妻がいた。


「おかえり、康ちゃん!」


「ただいま、理紗子」


その時、理紗子の顔を見てホッとしたからか、腹の虫が鳴った。

そう言えば、昼食を食べていなかった。

顔を見合わせて笑う。


「あー、昼から何も食べて無くってさ。腹減ったなぁ」


「康ちゃんてば。もうご飯出来てるから、沢山食べて」


「じゃあ、そうしようかな。そうそう、理紗子の好きなもの沢山買ってきたよ」


両手に荷物を持ったまま、理紗子と一緒にキッチンへと向かう。

さて、どこから話そうか。


妻と過ごすいつもの日常。それはとても、幸せな日々。

やっと戻ってきた。愛しい妻の顔を見ながら、俺は心からそう思った。


もしかしたら番外も書くかもしれませんが、一応完結です。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


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