3日目
奥様編、完結です。
思ったより長くかかってしまいました。
今日でやっと3日目。
夜には夫の康太が戻ってくる。
朝起きた後、電話を確認したら夫からの着信お知らせと留守電が入っていた。
電話かけなおそうかと思ったけれど、今の時間ではきっと出られないだろう。
私は留守電を聞くことにした。
「もしもし、理紗子?もう寝ているかな。明日…いや、もう今日だな。
6時にはそっちにつくから、家に着くのは7時くらいになるよ。
迎えは大丈夫だけど、夕飯は家で理紗子と一緒に食べたいな。
それじゃ、また夜に」
短いけれど数日振りに夫の声を聞いたせいか、朝からずっとテンション上がりっぱなし、頬も緩みっぱなしだ。
周りから見たら、きっと変な人扱いされる位にはにやけてるんだと思う。
自分では止められないし、しょうがないよね…?
でも外出する時は気をつけなくちゃ。
そんな訳で、朝からご機嫌で家の中をお掃除中♪
浮かれすぎてつい掃除機を思いっきり振り回してしまったその時、「ガチャン」という音が…
「っ!いけない…って、あ~~!!」
そこには床にたたき付けられ、割れた花瓶の姿。
幸い花は入ってなかったものの、お気に入りだったその花瓶は見るも無残な姿に…
慌てて片付けて、その後はしょんぼりしつつ黙々と掃除。
そういえば、なんかいつもより家の中が綺麗。
どうしてだっけ?と思い、昨日も家中ぴかぴかになるまで掃除してたことを思い出した。
…うん、まぁいいや。康ちゃん帰って来る前には綺麗にしておきたいしね。
掃除が終わった後は買い物行って少し休憩。
ついでにお昼ご飯を食べながら夫は今何をしているのか、義父・義母・義弟はあちらの家でうまくやっているのか、夕飯何にしようか等いろいろと考える。
電話での夫の声は割りと元気そうだったから、体調は心配要らないと思う。
義父達の事は何かあれば言うはずだから,多分大丈夫なんだろう…ただ、戻ってきた後での義母の愚痴には付き合うつもりだ。
その時は義母が好きなショートケーキでも買っていこう。
それに比べて、私はこの3日間でどうだったろう…ぼんやりしながら考える。
1人でも2人でもする事は変わらず、ただやっぱり1人は寂しい。
帰ってきても迎えてくれる夫がいないのが、どうにも落ち着かない。
そしてこの3日間で気がついた事がある。
1人の時間が長いと、いつのまにか独り言をしゃべってる。
テレビやDVD見ながら延々と1人ツッコミしちゃってたり。
もしかしなくても心の声も駄々漏れになってる可能性が大…
やばいなぁ、気をつけなきゃ。
「でもそれなら、口チャックだよね」
そう言いながら私は唇にチャックをかける真似をする。
これで良い。
「さてと!ご飯終わったし、早いけどお夕飯の仕込みしますか!」
私はそう言いながら食器を洗いはじめる。
そこでハッとした。
…あれ?今なんか心の声が駄々漏れだったような?
「………」
―うん、まぁいいや。今のは無かった事にしよう。
私は1人ウンウンと頷くと、スーパーで買ってきた食材を出し始めた。
今日のお夕飯は、夫が好きなもの。
ハンバーグに焼き魚、肉じゃが、野菜炒め、卵焼き、大根の味噌汁。
時間を見ると、もうすぐ7時になるところだった。
私は出来た料理を次々とテーブルに乗せる。
一緒に碗と箸も用意。炊き立てのご飯と味噌汁は夫が戻ってきてから。
「もうすぐだね、康ちゃん」
なぜか胸がドキドキする。
帰ってきたら、何て言おう?
やっぱり「おかえり」?それとも「お疲れ様」?
そんな事を思っていると、不意にインターホンが鳴った。
私は急いで玄関に向かう。
ちょっとだけ落ち着こうと2,3回深呼吸してからドアを開ける。
その向こうには、おみやげをたくさん持って微笑んでいる私の愛しい旦那様。
「おかえり、康ちゃん!」
「ただいま、理紗子」
抱きつきたい衝動を抑え、夫と一緒にキッチンへと移動する。
その時、夫のお腹がグゥと鳴った。
私達は顔を見合わせて笑う。
「あー、昼から何も食べて無くってさ。腹減ったなぁ」
「康ちゃんてば。もうご飯出来てるから、沢山食べて」
「じゃあ、そうしようかな。そうそう、理紗子の好きなもの沢山買ってきたよ」
いつもの日常が、やっと戻ってきた。
私は夫の顔を見ながら、そんな事を思った。
ここでいったん完結にさせていただきます。
続きはまた、近いうちにと思っています。