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もう随分昔の話。その頃は、いわゆるソフトハウスと言われる会社にいた。正直言って就活に失敗して、入れるところに入ったというのが実情なんだけど。


そこで何をやっていたかと言えば、基本は請負仕事と派遣だった。いまでこそソフトハウスの仕事は、ほとんど派遣と請負だけど、当時ではゲーム以外のソフト専門会社というのはあまり多くなかった。


ある日、仕事帰りに入り口近くのスペースで、会社の営業とかそんな辺りの少し偉そうな人達が、何かにたかっていたのを見た。何だろうと思って離れたと事から見ていると、会社の中では見覚えのない人が二人ほど居て、不健康そうでそれでいて必死な顔つきをしていた。


営業の人とか、少し偉そうな人、確か部長ぐらいじゃなかったかな、がいろいろと文句とうか注文をつけているようだった。何の仕事かはよく分からない。そうやって覗いていると、横から話しかけられた。


「あれ、何だと思う?」


自分の部署の部長だった。


「え?いや、わかりませんけど、何ですか?」


「彼らは下請けの人達で、明日が納期の仕事が終わらないから、呼び出されてあそこで仕事しているんだよ」


「へぇ」


「ひどい話なのさ。元々うちが2千万で半年ほど前に請け負った仕事でね。手が回らないから下請けに出したんだ。半額で」


「半額ですか」


いわゆるピンハネって奴なのかなぁ、とその時は思ったけど。


「で、それを請け負ったところがまた下請けに出した」


「それがあの人達?」


「いや、違うんだよ。それがまた下請けに出された」


「はぁ」


「どのくらいまたがっているか知らないけど、彼らはあの仕事を1週間数万円で請け負っているらしいよ」


「え!?」


半年で2千万の仕事が、下請けに出され孫請けに出されで、最後は1週間で数万円の仕事になって初めて形にしようとしていると言うことらしい。全部半分ずつピンハネされたとしても。8段階ぐらい下に降ろされている勘定だ。


「終わるんですか?半年見積もりが1週間なんでしょ?」


「実際はもっと短いみたいだけどね。まぁ、終わらないだろうね」


「どうするんですか?」


「さぁてね、あの仕事、内部でやろうとしてたけど、やれるような仕事じゃなかったんだ。だからどこも出来ないって回答したけど、どうしても取りたかったみたいでね。あそこで怒鳴りつけているのがいるだろう。彼奴が明日クライアントに怒られるんだろうな」


そう言って、部長は帰っていた。


その後、その仕事がどうなったかといえば、納期を延長してもらって、最後に請け負った人達を出来るまで帰さないとか言うやり方で納品までこぎ着けたと聞いた。延長分は支払わないで済ませたとも聞いた。


仕事というのがどういう仕組みで回っているのか、そんな仕組みの一つを垣間見た瞬間だったので、今でもよく覚えている。


社会というものも、自然のようになにがしかのヒエラルキーがあるというのは漠然と知っていたけど、あんな風に捕食されるようなヒエラルキーも普通に存在するという事を社会人早々にして知ったのは、良かった気もするが、何とも言えない感覚を自分の中に残したなぁ、と今でも思い出すとそう思う。



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