表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

第3話 魔王の災厄

「これが……都会ってやつか!」

少しだけ能力を使用して早めについた守り町神京。

「俺はなんて田舎に住んでいたんだ……」

俊は涙目になる。

「君……興奮しすぎじゃないか……?」

「俊様……」

哀れな人を見る目だった。

「さて、まずは宿を決めようか。雫、なにか希望はあるかい?」

ここは都会だ。

なのでお姫様だとばれないように夜は雫のことをちゃんと名前で呼ぶことにした。

そして雫は顔をかくすために布をかぶっている。

「いえ、私は護られてる身なので……」

「お金持ちなのに遠慮するのかい?性格が歪んでなくてボクはうれしいよ。俊!宿を探すよ!」

目を離すとどこかに行ってしまいそうな俊を夜が呼び戻し宿を探し始める。

「なあ、あれはなんだ?」

俊が指をさしたのは大きな闘技場だった。

「ここはなかなかギルドが充実しているからね。地域密着型の催しでもやるんだろう」

「その催しでも金はもらえるんだろうな……Lv0でもきっとでれるんだろうな……」

「君はなにを言ってるんだ……とりあえず雫がいることだしここの宿でいいだろう」

俊たちの目の前には多分町で一番の宿。

夜と雫は入っていく。

「俊?どうしたんだい?」

ついてこない俊が心配になった夜は俊に問いかける。

「え?俺は外で寝るんじゃないのか?」

「君は本当にかわいそうなやつだな……」

「俊様……かわいそうに……」

「え?え?」

俊は自分が変なことを言っていることに気付かない。

「君も一緒にこの宿に泊まるんだよ。それじゃないと雫を護れないだろう?」

「いいのか……?」

「もちろんです俊様」

二人は微笑む。


そして三人は宿に入る。

「部屋はどうなさいますか?」

「二部「一部屋でいいです」

俊が夜の言葉をさえぎる。

「俊!?」

「俊様!?」

「だってもったいないだろ?」

「いや、そうだけど……」

「でも……」

二人は俊を納得させられるような理由を持ち合わせていない。

というかなにを言ってもだめだろう。

「一部屋でよろしいですか?」

「はい」

結局一部屋に……


「君にはいろんなものが欠落しているようだね」

「部屋に入った途端にそう言われるとは思わなかった……」

「でも私もそう思います」

「雫さんまで!?」

「別にお金をつかいすぎるのはよくないというのはわかる。わかるんだけど……」

「男女が同じ部屋というのはどうなんでしょうか……」

「大丈夫。俺二人とも好きだから」

「どこが大丈夫なんだ……」

「好き……好きって言われました……どうしましょう……」

雫は顔が真っ赤だった。

「はあ……まあこうなってしまったものはしょうがない……」

夜は渋々といった感じで納得する。

「まあ今日はもう寝よう。明日になったらまた本格的に動こうか」

夜がそう言ったので全員就寝することにした。


朝。

「なあ俊」

「どうした?」

夜が話を切り出したのは部屋に朝食が届けられ朝食を食べているときだった。

「一応ここには若い男女がいるわけだ」

「そうだな」

「襲わないってどういうことだ!?」

俊は危うく口にいれたものを吹き出しそうになる。

「食事中にそんな話するな!」

「これではまるで魅力がないみたいじゃないか!」

「身体の魅力は……「なにか言ったかい?」

怖い雰囲気。

「なんでもないです」

「でも私も心配になりました」

「雫さんの身体はとっても魅力的ですよ」

「なんだ『は』ってボクの身体はそうじゃないのかい?」

また怖い雰囲気が見え隠れする。

「いえ!滅相もございません!」

俊は背筋を伸ばして答えた。

「じゃあなんで襲わないんだい?」

「だって……襲ったら殺されるだろ?」

「まあボクは確実に5回は殺すね、でも雫なら大丈夫だろう?」

「国に殺されちゃう……」

「君なら勝てるって!」

「なんでそんなすがすがしい笑顔!?」

そんな朝食だった。


「まずは必要なものでも集めようか……俊。行ってきて」

落ち着いた頃夜が言う。

「俺は忙しい」

「……一応訊くけど、どこが忙しいんだい?」

「今からだらけなければならない」

「君はボクに借金してることを忘れてるんじゃないだろうか……」

「だって無利息だしー、だったらゆっくり返せばいいかなって」

「ダメ人間が!いいからいってこい!」

俊は夜に無理やり宿から出されてしまった。


「人使いあらいな……もう……」

俊はぶつぶつ言いながら歩くが町を見れるという点ではおつかいをしてもよかったのかもしれない。

「で?なにを買うんだ?」

俊は夜に宿をたたき出された際につきつけられたメモを見る。

『食糧』

書かれていたのはそれだけだった。

「これだけ!?旅が心配になるぞ!?」

とりあえず俊は心配になりながらも食糧を買いに市場へ向かう。


その途中……

「銀髪碧眼……本当にいるんだなー」

銀髪碧眼のかわいい少女を見つけた。

「そこのかわいいお嬢さん。一緒にお茶でもしませんか?」

勝手に声をかけていた。

金は夜からおつかい用として受け取っていたので心配ない。

「私、ですか……?」

「ええ。あなたです」

物静かな人だった。

「…………」

「…………」

無言が続く。

ふら~……

「っ!?」

いきなり少女は倒れてしまった。

俊はあわててかかえる。

「ちょ!どうした!?」

紳士を装っていた俊だがいきなりのことに地が出てしまう。

「はあ……はあ……」

少女は苦しそうに息をする。

「これは……」

一瞬服がめくれたときに見えた、白い肌には異様の紫の斑点。

「M-315……」


『M-315』

通称『魔王の災厄デビルスウイルス

それは魔王が現れてから出始めたウイルスである。

魔王の下僕である魔物の中の一部に毒性を持つ魔物がいる。当初は空気感染により多数の死者をだした。

しかし今ではワクチンも開発され基本的に感染はしない。末期症状になると紫の斑点が現れ始め、それが全身を覆ったとき灰になって消えてしまう。


「でもどうして感染してる……?ワクチンの接種をしてなかったのか?」

このワクチンの接種は俊でもしている。

つまり無料なのだ。

医療系の関係部署に行けばどこでも接種することができる。

「とにかくこのままじゃまずいな……」

俊は考えた結果、宿に連れて行くことにした。


「…………」

「…………」

宿に着くと夜と雫に無言で見つめられる。

これが普通のシチュエーションだったらドキッとしただろう。

普通に二人ともかわいいのだ。

「ボクは食糧を買ってこいってお願いしたはずだよ?」

「まさか!俊様が食べる用の……」

「さすがに俺でも人は食べないよ!?」

「性的な意味では食べるだろう?」

「そりゃ、まあ……この娘だったら食べたいなと……ってなに言ってるんだ俺!?」

俊はあわてる。

「とにかく夜に頼みがあるんだよ」

「なんだい?」

夜はめんどくさそうに答える。

俊は少女をベットにおろしてさっき斑点があったところを夜に見せるため服をめくる。

「俊。君は気を失っている少女の服を脱がせる趣味でも……っ……これは……」

斑点を見た瞬間夜は言葉を失う。

「末期症状だね。ここまでくるとさすがに回復系能力者でも治せないだろう……」


世の中にはいろんな病気の治し方がある。

1.自力で治す。俊は基本的にこの方法である。

2.医者に診てもらい治す。魔王が現れた当時は医療技術は落ちていたがが今ではそれも回復し、普通の治療を行える程度にはなっている。一般階級の人は医者に診てもらう人が多い。

3.回復系能力者に治してもらう。回復系能力者も基本的には国に雇われるが、個人で人を治す能力者も存在し、基本的にいつでも能力は使っていいことになっている。

上から順に値段が高くなっていき、完治の可能性もあがる。


「夜でも無理か……?」

「ボクならできるけど君がやってみたらどうだい?」

「俺?」

「そうだ。大丈夫、危なくなったらちゃんとボクが止めてあげるから。自分で考えてやってごらん?」

「俊様……」

雫が心配そうな顔で俊のことを見る。

どうしてそんなめんどくさいことを俺が……と俊は考えたが俊がこの少女を助けたいと思い連れてきたのだ。だったら責任はとらねばならない。


よし、と俊は決意する。

「やってみる」

━━━展開。

俊は自分の空間を展開させる。

「(普通に取り除くのには限界がある。そもそも取り除くだけでなんとかなるのなら普通の回復系能力者も苦労しない)」

俊は考える。

「(そうか!)」

そして俊はひらめく。

しかし不安がある。

「(本当にできるか……?)」

俊の能力には限界というものがまだわかっていない。

だからできるかどうかはわからない。

「(でも、やらなきゃなにも始まらない!)」

「          」

俊は意識を集中させる。

━━━探索開始……絶対に取りこぼしがあってはいけない。

何度も何度も念入りに探索する。

━━━空間固定。

見つけたウイルスを片っ端から結界で固定する。

その数は億にも及ぶ、

そしてここからが問題。

自分の空間を書き換える。

「望む……我はこの空間を統べる者……」

俊は書き換えるために言葉を紡ぐ。

人でも理解できる言葉。

それはこの世の理を変えなければならないものだからである。

この世の理を変えるということはこの世の人に理解してもらわなければならない。

だからこそ人の言葉でしっかりと紡ぐのだ。

いつもなら短い言葉、人には理解できない言葉で空間の書き換えは終了する。今回のはそれほど高度。

故に失敗はゆるされない。

少女の身体が輝きだす。

━━━効果範囲指定。

俊は結界内を効果範囲として指定する。

「……時の理を書き換えたまえ……!」

ヴンッ!

急に半透明のいろんな時計盤が浮かび上がり逆時計回りで時を刻む。

「もっとだ……もっと……!ウイルス感染する前まで……!」

少女の身体に出てきていた斑点は徐々に消えていく。

そしてすべての斑点が消える。

俊はもう一度少女の身体に探索をかける。

結果、無事に少女の身体はウイルス感染する前の状態までもどっていた。


「……ふう」

「おつかれさま俊」

「すごかったですよ俊様!」

「緊張したー」

「まさか時間の理を書き換えるとはね……君はたいしたやつだよ。この少女もすぐに目を覚ますだろう」

俊は少女のことを見る。

「よかった……」

「でもどうしてこの少女を助けようと思ったんだい?」

「…………」

「俊?」

俊は冷や汗をかく。

ナンパして倒れられたからなどと口が裂けても言えない。

「詳しく話が聞きたいなあ?」

夜が怖い……


少女が目覚めたのは俊が夜にいろいろひどいことをされた後だった。

「あれ……?ここは……?」

「私たちが泊まっている宿ですよ」

雫が対応する。

「あれ……?見たことがあるような……?」

「き、気のせいじゃないでしょうか?」

「そうですかね……?あれ、私……『魔王の災厄』に……」

「大丈夫ですよ。俊様が治してくれましたから」

そう言って雫は俊のほうを見る。少女もそれにならって俊の方を見る。

「あれは……生きてるんでしょうか……?」

「大丈夫だと思います……多分……」

雫は苦笑いで答える。

「でも治してって言いましたけど……末期症状ですよ……?もう治らないんですよ……?」

「身体の斑点は消えてるはずですよ?」

雫がそう言うと少女は自分の身体を確認する。

「……消えてる」

「ね?」

「でも、どうやって……」

「そんなことよりお腹空きませんか?」

「え……?」

「ご飯にしましょう」


「あの……助けていただいてありがとうございます……私の名前は、クラン、クラン・ハーヴェリーです」

クランはずいぶんゆったりしたしゃべり方だった。

「……ん?クラン……?クラン……どこかで……」

夜はなにか1人で考え事を始めてしまった。

「俺たちはさっき紹介した通りだ。でも、どうして『魔王の災厄』なんかに感染してたんだ?ワクチンの接種はしてたんだろう?」

なんとか復活した俊が尋ねる。

「みなさんは……どうして『魔王の災厄』と呼ばれるものが繁殖したかご存知でしょうか……?」

「毒を持っている魔物がいるんじゃないのか?」

「その通りです……私はその毒を持っている相手と戦いました」

毒を持っている魔物といったら上位種に設定される。

「ちょっと待ってくれ……クラン……お前何歳だ?」

「15歳ですけど……?」

15歳で上位種と戦える。

それは十分に勇者としての才能がある。

いや才能があるという言葉で片付けるのはおかしい。

国の直属の勇者のエースにだってなれるほどだ。

つまり夜に似たような感じ……最初から魔王に匹敵するような力を持った者……

「毒を持った魔物と戦ったってことは、つまり直接感染ってことか……」

「はい……直接感染だったのですぐに末期症状が現れ始めました……親からは捨てられ……そして町を歩いているところで助けてもらったのです……どうやってお礼したらいいか……」

「いや、お礼なんて……」

いらないと言ったら嘘になるがそこまでほしいわけでもない。


「そうだ。一度はこの命はなくなったも同然……だったら私は俊さんに……いえ、ご主人様に一生お仕えします」

「「「は?」」」

口を挟んでいなかった二人も驚いた顔をする。

「それがいい……荷物ならあります……」

いつからあったのかそこにはリュックが……

「希望とあればメイド服にもなりますが……?」

「ぜひよろしくおねがいします」

また即答だった。

「俊……」

「俊様……」

「し……しょうがないじゃないか!欲望に忠実なんだよ!」

「借金してるやつがメイド付って……」

俊にメイドが付いた瞬間だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ