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第14話 未来予報と人形使い

「ついに『ジパング』ともお別れか……」

俊は自分の故郷の方角を見てつぶやく。

「大丈夫だよ。どうせすぐに戻ってくるさ」

「魔王を倒してですね?」

「がんばる……」


港町『ルーンヴェル』で船に乗る俊たち。

次に向かうのは世界最大の大陸にある国『ティモル』。

その国に着いて俊はその光景に自分の目を疑った。


「なんだ……この国……」

「ぼろぼろー」

陸が見え、まず目に入ったのは黒い煙だった。

まだ陸から離れているのに爆発音が聞こえる。


「この国はね、魔王という人類の明確な敵がいるのにもかかわらず隣国と戦争をしているんだ」

夜が憎たらしいものを見るような目で『ティモル』を見つめながら言う。

実際戦争が憎たらしいのだろう。

「戦争……」

「戦争とは科学技術の発展にとても役に立つ。それに戦争はもっとも愚かな外交の一種だ。闘争本能がある人間に戦争をするなとは言わない。けどね、明確な敵がいるんだ。人類の敵なんだ。それを倒そうともせずに同じ人間を倒すこの国たちをボクは許せないよ……」

「…………」

俊は無言で夜の頭に手をのせる。

「……なんで撫でるんだい」

「雰囲気……かな」

「まあ……このタイミングで撫でてくれるのはありがたい。すこし落ち着いた」


厳しい入国審査の後、俊たちは『ティモル』に入国する。

「ここでなにをするんだ?」

俊は夜にたずねる。

正直俊にはこの国に来た意味がわからなかった。

「戦争でも止めてみるかい?」

夜はにやりと笑って俊を見上げる。

「とめるー」

「そうか、ベルもそう思うか」

夜は俊の手につながれているベルの頭を撫でる。

「でもそんなことできるんですか?」

雫が不安そうに夜に訊く。

「やってみないとわからないよ?」

「一番簡単な方法はどちらかの国が勝つこと……」

「でもそんなことやったら勝った方の国はまた戦争を起こすだろうね」

「だったらどうすればいいんだ?」

「そんなの簡単さ。第3者が勝ってしまえばいい」

「それが俺たち……?」

「もちろん」

「いや、無理無理無理無理!死ぬから!それ絶対死ぬから!」

「大丈夫大丈夫」

「じゃあ俺はベルを守ってるから!」

「それは雫がやるさ」

「絶対にいやだあああああああああああああああああああ!」


首都『ティモル』に連れて行かれた俊。

「この辺はまだ安全なんだな」

あまり傷ついていない首都を見て俊は言う。

「そりゃ首都が落とされたらおしまいだろう?」

「でもこっちのほうがおされているのは港からの光景でわかりましたね」

「じゃあまずは情報集めかな。二手に分かれよう」


夜とクランとベル。俊と雫に分かれる。

「ベルのことよろしくな」

「君も雫に怪我させたら許さないからね」

「ご主人様……」

クランがさみしそうな目で俊を見る。

「いや、クラン。そんな目で見ないでくれよ……くじ引きで決まったことだし……」

「うぅ……我慢します……」


「情報集めってなにすればいいんでしょうね?」

「うーん……夜様が欲しい情報はどこで一番大きな戦闘が行われてるかじゃないですか?」

「まさか……そこに行くとか言いだしませんよね……」

「行くから情報を集めるんじゃないでしょうか……?」

雫が苦笑いで答える。

「その辺でサボりませんか……」

「それだと怒られちゃいますよ?」

「ですよね……ん?」

俊はなにかに気付く。

「どうしました?」

「いや……あの子供……」

俊が指さした方を雫は見る。

「なにか変ですか?」

「周りを警戒しすぎてるんですよ」

「戦争中だから……とかじゃないんでしょうか?」

「いや、なんか万引きするような雰囲気に似てるっていうか……なにかやりそうな……」

そこでその子供が不自然な鞄を持ってることに気付く。

「まさか……」

俊は走り出す。

「なにしてるんだ!」

俊は子供の肩をつかんで怒鳴る。

びくっ……

「うあ……」

「なんで爆破テロなんて起こそうとした!それでなにかあるのか!?」

「俊様!?なに言って……」

走り出した俊に追いついた雫は俊に声をかける。

「その鞄の中爆弾ですよ!!」

「っ!」

「だって……」

子供が小さな声でつぶやく。

「だって……!この鞄を置いて来ればお母さんを生き返らせてくれるって!」

子供は目に涙をためて俊に言う。

「誰が……誰がそんなこと言った……っ!」

俊は奥歯を噛み締める。

「いいか……?よく聞け……?人は死んだら生き返らないんだ……」

「そんなことない!」

「俺だって……俺だって生き返らせたい人がいたんだ……」

俊は下を向きながら言う。

「でも無理だったんだよ!」

「そんなこと……ない……」

俊の雰囲気から子供から自信がなくなってしまう。

「この世界はな……そんなに優しくないんだ……」

「うあ……うああああああああああああああああああああああああ!」

子供は俊に泣きつく。


「うあああああああああああああああ……」

「?」

泣いていた子供が急に泣き止む。

「どうした?」

「…………」

子供は無言だった。

そして急に鞄を持って走り出す。

「っ!?」

異様な速さ。

子供では、いや人間では絶対に出ない速度。

追いつけない。

そう考えた俊はすぐに空間の展開を行う。

ドォン!

展開を行い、子供場所を探ろうとしたところで爆発音が聞こえた。

任務完了みっしょんこんぷりーと

後ろから声が聞こえた。

「お前か……」

俊は後ろにいた少女をにらみつける。


「あたしの目を見たね……?」

「え……?」

俊は自分の身体の自由がなくなっていくことに気付く。

「俊様……?」

雫は不安そうに俊のほうを見る。

「っ!」

雫はとっさに後ろに跳ぶ。

さっきまで雫がいた場所には俊の拳があった。

「ん?よく気づいたね」

「あなた……誰……?」

雫は目の前の少女にたずねる。

その中でも目は見ない。

少女の『あたしの目を見たね……?』。その発言から目は見ちゃいけないと考えた。

「あたしはアリス。魔王軍ね」

「魔王軍……」

そうすると相手はかなり強い。

特に目は危ない。

俊は少女の目を見てからおかしくなった。

雫は目隠しをしてしまう。

どんなタイミングで目を見てしまうかわからないからだ。

「ん?あたしの能力に気付いちゃった?『私のかわいいお人形パペットマペット』。目を見た相手を操れるの」

それがアリスの能力。

アリス自身にはそこまでの強さはないが能力を操る点においては一級だ。

「でも目隠ししたらすぐにやられちゃうよ?」

アリスはあらかじめ用意していた人形たちを雫の周りに集める。

本来操作系の能力で操れる物の上限数はない。

だが、数が多ければ多いほど操作は難しい。

しかし、アリスはその操作能力がすごい。

30体までなら確実な操作が可能。

60体までならある程度の操作。

最大100体までなら同時に操れる。

これがアリスの実力なのだ。

今回の人形は20体。

確実以上の操作をしてくる。

「あー。この男の能力見てから操るべきだった……」

アリスがなにか言っている。

しかし雫の耳には届かない。

それだけ集中している。


「さて、戦闘開始だよ?」

20体が同時に雫に襲い掛かる。

20体のうち5体が遠距離攻撃を可能とした能力者。

10体が強化系能力者。

残り5体は無能力者。いや、一人は能力を使ってこないだけ。

雫は瞬時に把握する。

その能力を使ってこない一人は俊。

能力の内容を知らないから使い方がわからないのだろう。

「…………」

雫は一つ一つの攻撃を的確に、最小限の動きで避けていく。

「っ!?」

アリスが驚く。

「どうして?目隠しをしてるのに?」

直感的に危険だと感じたアリスは5体の強化系能力者を自分のそばに待機させる。

しかしそれが穴となる。

5体も抜ければ必然的に穴ができる。

雫はその5体が抜けるのをわかっていたかのように抜けた穴からアリスを目指す。

「やばいやばい」

アリスは遠距離攻撃能力者を使って向かってくる雫に攻撃を仕掛ける。

後ろからの攻撃。それも簡単に避けられてしまう。

「こいつっ!」

5体の強化系能力者で対応。

右ストレート。それをかがんでかわす。

そしてすぐに後ろに跳ぶ。かがんだ場所にはかかと落としが入っていた。

「動きがおかしい……」

アリスは異変に気付く。

「もしかして……」

アリスは一体に右ストレートをださせて寸止めさせる。

そのはったりを雫は避けようともしなかった。

「こいつ……!まさか!」

「気づきましたか?」

攻撃してこないので雫は忙しなく動いていた足を止める。

「『そう遠くない未来センチュリーカウンター』これが私の戦闘体勢バトルスタイルです」


そう遠くない未来センチュリーカウンター

これは夜が編み出した雫の戦闘体勢だ。

王家としてある程度の護身術を身に着けている雫の生存率をさらに上げるものである。

能力で自分の周りに起こるすべての事象を視て全ての攻撃をかわし、さらに相手の動きの1手2手先を視ることによって全ての攻撃において有効打をいれることができる。


「未来予知なんてありえない!!」

アリスが叫ぶと人形たちが一斉に攻撃してくる。

その攻撃を視た雫は避けながらアリスに近づいていく。

「ひっ!来るな……!来るなああああああああああああああ!」

雫が掌底をアリスの腹に叩き込む。

アリスはぐったりとして気を失った。


アリスが気を失ったことで能力が切れたのか俊たちは元通りになる。

「雫さん?」

「なんですか?俊様」

「いや、なんでもないです。あっ!あの少女は!?」

「それでしたらそこに……」

気を失っている少女がいた場所には誰もいなかった。

「あれ……?」

「どうしました?」

「ごめんなさい……逃げられちゃいました……」

「え!?倒したんですか!?」

「覚えてないんですか……?」

「いやー……」

俊は目を逸らす。

「むぅ……私大活躍だったのに……」

「ごめんなさい!」

「許しません!」

雫は俊を置いて歩いてしまう。

「待ってくださいよ!雫さん!」

俊はそれを追いかけた。

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