第2話「ライバル宣言とか聞いてへん!」
翌朝。
浪速スター学園の廊下がざわついていた。
「昨日、道頓堀で見たで」「あれ蒼真やろ?」
心愛の足が止まる。
(え、なんでバレてるん!?)
後ろから、美麗がひょいっと腕を回す。
「有名人と歩いたら噂なるに決まってるやん」
「有名人ちゃうし!」
「男子校の中ではそこそこ有名らしいで、蒼真」
ドキッ。
そのとき。
ヒールの音が廊下に響く。
カツ、カツ、カツ。
黒崎レナ。
長い巻き髪、完璧なアイメイク、余裕の笑み。
「心愛ちゃん」
名前を呼ばれ、心愛の喉が乾く。
「昨日、蒼真くんとデートやったん?」
「で、デートちゃうし!」
レナはクスッと笑う。
「そっか。でも目立つことするなら、覚悟いるで?」
「……覚悟?」
「蒼真くん、前からうちと仲ええの知ってるよな?」
空気が一瞬で冷える。
美麗が一歩前に出る。
「レナ、それ脅し?」
「ちゃうちゃう。忠告やん」
レナは心愛をじっと見る。
「急にギャルなって、急に目立って。ちょっと調子乗りすぎちゃう?」
胸がきゅっとなる。
言い返せない。
でも。
心愛は小さく息を吸う。
「……わたし、調子乗ってへん」
声は震えてる。
それでも続ける。
「変わりたかっただけやし」
レナの目が細くなる。
「ほな、勝負しよか」
「え?」
「来月の文化祭。ミススターコンテスト出るやろ?」
「……は?」
「蒼真くん、審査員で来るらしいで」
美麗が小さく「マジか」と呟く。
レナは微笑む。
「逃げへんよな?ギャルやもんな?」
言い残して去っていく。
心愛の足が震える。
「無理やって……わたしなんか……」
美麗が両肩を掴む。
「心愛、聞け」
真剣な目。
「怖いのは分かる。でもな」
「うん……」
「逃げたら、また端っこ戻るで?」
その言葉が刺さる。
端っこ。
写真の隅。
思い出の外側。
(嫌や)
その日の放課後。
校門前に蒼真がいた。
「心愛、ちょっと話せる?」
二人は少し離れた場所へ。
「レナから聞いたわ。コンテストのこと」
「……出えへんよ、わたし」
即答。
蒼真は少し驚く。
「なんで?」
「レナのほうが可愛いし、経験もあるし……」
言いながら、自分で情けなくなる。
蒼真はため息をつく。
「心愛さ」
「……なに」
「なんで人と比べるん?」
「だって…!」
蒼真が近づく。
「俺が見てるんは、心愛やで」
目が合う。
真っ直ぐ。
逃げ場がない。
「コンテスト出るかどうかは心愛が決めたらええ。でも」
一瞬、間を置く。
「逃げる心愛より、挑戦する心愛のほうが好きや」
胸が熱くなる。
好き。
その言葉が、力になる。
「……もし、出たら」
「うん」
「ちゃんと、見てくれる?」
蒼真は即答する。
「一番前で見るわ」
静かに笑う。
心愛は拳を握る。
怖い。
でも。
(端っこは、もう嫌や)
「……出る」
小さく、でも確かに言った。
蒼真の目が柔らかくなる。
「それでこそや」
夕焼けの校門。
ギャルデビューはまだ序章。
今度は――
“舞台の真ん中”に立つ挑戦が始まる。
そして遠くから、それを見つめるレナ。
「面白くなってきたやん」
恋も、プライドも、全部賭けた文化祭バトル。
ギャル学園、火花散る。
――続く。




