第1章 サブタイトル 「はじめてのつけま、はじめてのドキドキ」 第1話「ギャルデビュー宣言やで!」
放課後、美麗の家。
机の上に並ぶコスメ。
「これ全部……?」
「うちの戦闘道具や」
「戦うん!?」
「恋は戦争やで?」
心愛は緊張で手が震える。
「目閉じて」
アイライン。
チーク。
リップ。
「つけまいくでー」
「ひぇっ」
数分後。
鏡の前に座る心愛。
「……だれ?」
そこにいたのは、少し大人っぽくて、でも可愛い女の子。
「心愛やで」
美麗がニヤリと笑う。
「素材良すぎやろ。ずるいわ」
心愛は胸がじん、と熱くなる。
(わたし……可愛い?)
翌朝。
校門前。
蒼真が立っていた。
心愛の心臓が暴れる。
(逃げたい……でも)
美麗の声が後ろから。
「行き」
一歩、前へ。
蒼真の目が大きくなる。
「……心愛?」
「う、うん」
「え、めっちゃ雰囲気変わってるやん」
「へ、変かな?」
「いや」
一瞬の沈黙。
「……可愛い」
世界が止まった。
耳まで真っ赤になる心愛。
「ありがとう……」
小さな声。でも、逃げなかった。
蒼真が少し照れながら言う。
「今日、放課後ヒマ?」
「え?」
「ちょっと話したい」
後ろで美麗がガッツポーズしている。
心愛は深呼吸する。
「……うん」
放課後。
校舎裏のベンチ。
少しだけ距離がある二人。
「急にギャルなったん、びっくりしたわ」
「……変わりたくて」
「なんで?」
心愛は少し迷う。
でも、目を見て言った。
「ちゃんと……見てほしかったから」
蒼真の目が揺れる。
「前から見てたけどな」
「……え?」
「文化祭のとき、端っこで笑ってたやろ。あれ、可愛かった」
胸がきゅっと締め付けられる。
「でも自信なさそうやったから、声かけられへんかった」
「わたしも……」
言葉が震える。
「話しかけられへんかった」
沈黙。
でも、前より少しだけ近い距離。
蒼真が優しく言う。
「そのままでも可愛いけど、今の心愛も好きやで」
心愛の頬に涙が浮かぶ。
「泣くなや」
「泣いてないし!」
二人で笑う。
少しだけ距離が縮まる。
ギャルデビューは、ただの外見じゃない。
自分の気持ちを、ちゃんと伝える勇気。
大阪の夕焼けが、二人を優しく染めていた。
心愛は思う。
(わたし、もっと強くなる)
(もっと可愛くなって、ちゃんと恋する)
ギャルの恋は、ここから本気になる。
――続く。




