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「インセプション」

 クリストファー・ノーランの映画「インセプション」も、「クライマックス=葛藤」論でみると納得がいく。


 例によってネタバレあり、あらすじ説明なしでいくので、未視聴の方はぜひ一度ご覧になって欲しい。

 名作です。


 ***


 まず、渡辺謙の誘いに対して、主人公コブは「確証が欲しい」という。

 渡辺謙はそれを否定し、言う。


「信じて飛ぶしかない」


 これが非日常へのダイブ、物語の本筋への導入となる。


 主人公コブの葛藤は「妻の死」と「自分の罪」である。

 これを直視できずにいる。

 夢の中で、妻の姿を出現させ、いつでも会えるように飼っている。


 クライマックスは、妻の死を直視し、受け入れ、決別する。

 自分の罪についても見つめ直し、懺悔する。


 そして日常に戻る。

 新しい自分に。


 ……果たして、本当にそうだろうか。


 自分の罪について、懺悔したくらいで、葛藤を乗り越えたといえるのか?


 つまり、まだ逃げている。

 コブはまだ、夢の世界に逃げているのではないか?


 そう考えると最後のコマは。


 ***


 良い物語ほど、登場人物の複数に葛藤があり、主人公だけのドラマにならない。


『プルートゥ』で語りきれなかったことをひとつ。

 ロボット側にも葛藤があって、「二度と戦わない」という自動思考を破るが故に、最後死んでしまうのである。

 なんとも皮肉で切ないラストである。


「インセプション」では、ターゲットの金持ちボンボン息子に葛藤が設定されている。

 というか、この映画自体、物語論の説明すらしている。

 ぼっちゃんに葛藤を乗り越えさせること自体がミッションなのだ。


 オッペンハイマーで脚光を浴びたキリアン・マーフィーが演じているボンボンは、父との確執に悩んでいる。

 欲求不満、愛に飢えている。

 そこで悪意をもった渡辺謙らが、愛ゆえにお前が独力で生き抜けると信じている、的なメッセージを父の姿を騙って伝え、父の帝国を息子の手によって滅亡させようとする。

 涙が美しいシーンである。

 騙されてるけど。


 ここで面白いのは、騙す側に一切葛藤がないことだ。

 とくにイームスという、父に化けて直接的に詐欺をはたらくキャラクターは、常に飄々としていて、技術として詐欺を淡々とこなすという描写がなされている。

 葛藤がないことも個性となりえる。

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