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2話「ココハドコ、ワタシハダレ」

何がどうなったのか謎だけど、ゲームの世界に転生ないし転移させられたのだと無理矢理納得した。


あの時の衝撃が地震だったのか、建物の崩壊だったのか、はたまたどこかの科学施設の爆発に巻き込まれたのかは分からない。


私が現実世界で生きているのか、もしくは死んでしまったのかも今は考えない。考えてもどうにもならないし、考えるだけ無駄だしね。ちなみに、夢である可能性も微レ存とまだ信じてる。


肝が据わってるって?ははははは、現実感がなさすぎて一周回って無になってるからだよね!


ファンタジーのようなことが現実として起こったことで一生分驚いたし、人生でこれ以上の驚くようなことはないから!


とりあえず現状を知って次に何をすべきかと考えたところで、ふと、私はどこの誰なんだ?と思った瞬間。


目の前に、縦長で長方形のA4サイズの半透明な画面が現れた。しかも浮いている。




「……………………うん……」




それだけ言うのが精一杯だった。むしろ悲鳴じゃない言葉を発せた私を誰か褒めて。


半分透き通った画面は非接触型の空中タッチ操作ディスプレイに酷似しており、そこには文字が書かれていた。日本語で。




—---------------------------------


神峰 凛 (25) / Lv.97


HP(体力):9700 / 9700


MP(魔力):9700 / 9700


ATK(攻撃力):97


DEF(防御力):97


魔法属性:全(「火」「水」「地」「風」「光」「闇」「聖」「無」)


状態:「混乱」


スキル:「増・減」「吸収・変換」(▼)


称号:なし


—---------------------------------




画面の文字を一通り読み終わって確信した。なるほどね、これ自分のステータスだわ。ゲームではメニューボタンからマイページを開くとこんな情報が載ってたし。


数値が綺麗すぎない?と感じた人もいるかとは思うが、『毒薔薇』ではレベルが1上がるごとに、HP・MPは100、ATK・DEFは1ずつパラメータがアップする。


公式がRPGと明言していないのは、パラメータの上がり方が一定であるという理由もあるんじゃないかと勝手に解釈している。


ていうかちょっと待って、見逃せない何かがあったよ!


「"(25)"って何!? え、ここって年齢だよね!? 25歳とかウソでしょ!? 10歳も若返ったラッキー!!」


まぁ中身はおばさん(35年分の経験値の塊)だけどね!


………………。


……自分のツッコミに泣きそうになった。とりあえず落ち着けと言い聞かせる。


どうりで身体が軽く感じるはずである。先程までは気のせいかと思っていたけれど、身体が25歳であるならば納得である。そういえば25歳くらいの私は髪伸ばしてたんだよね、というのも思い出した。


そこでふと、スキル欄に目が止まった。


「スキルは二つか……いや、こんなスキルゲームになかったよね? うーん、謎すぎる……って、あれ、(▼)コレ何だろう?」


触れるのかな、と恐る恐る指を伸ばして触れた瞬間、(▼)が(▲)に変わって画面が勢い良く縦に伸びていく。そして伸びた部分、(▲)の下の部分には「自動体力回復(超)」「自動魔力回復(超)」「火属性強化(超)」「水属性強化(超)」「地属性強化(超)」「風属性強化(超)」「光属性強化(超)」「闇属性強化(超)」「聖属性強化(超)」「無属性強化(超)」「火属性耐性(超)」……と書かれており、全てを読むことなく私はふっと笑みを浮かべて(▲)をもう一度押した。


すると伸びた時の逆戻しのように、(▲)が(▼)に変化して下の部分がみるみる内に縮んで行き、スキル欄は「「増・減」「吸収・変換」(▼)」のみの記載に戻った。


Webブラウザでよく使われる、クリックで開閉するアコーディオン表示、と言ったらお分かりいただけるだろうか。(▼)はそれでした。


「ていうか、何で物理的に伸びるの!? スクロールバーでいいでしょ!」


長いわ!!と突っ込みながらも再度(▼)をタップすれば、今度は縦に伸びることなく、画面の右端に細い棒のようなものが現れ、棒の中にある四角いボタンの様なものがぐんぐんと小さくなった。つまりは、先程私が言った、スクロールバーに変わったのである。


「……あ、要望、聞いてくれるんだ」


訳が分からなすぎて乾いた笑いしか出てこない。社会で培ったスルースキル『笑顔で受け流す』がこんなところで役に立つとは。



ちなみに『毒薔薇』でスキルを持つ方法としては、プレイヤー自身が取得する方法とスキルが備わった装備やアイテムを身に着ける方法がある。


プレイヤー自身が取得するには、各地で開催されているイベントやダンジョンを条件内でクリアする必要がある。


もちろん、貴重なスキルはイベントが激ムズになるしダンジョンの魔物は強くなりまくるしクリア条件に至っては鬼である。


開発会社はよくもこんな恐ろしい条件を設定したもんだ血も涙もねぇなぁああ!!というシャウトが攻略スレッドの至る所で繰り広げられ、最終的にはオフ会の解散時はシャウトで終わるというのがお約束となってしまった。闇が深すぎる。


私にこんなにもスキルがあると言うことは、つまり……察していただけただろうか。


シャウトし過ぎて声枯れてる状態で仕事行ったら、遅めの声変わりだね、とか笑いながら皆に言われるんだよ?ははははは!遅め言うなし!


そんなストレス&シャウトと親友になりたくない方は、是非とも装備スキルかアイテムスキルを活用して欲しい。だって装備するだけ、アイテム持つだけでスキルが手に入るんだよ、素晴らしいよね!


剣やピアス、腕輪等の装備アイテムは個々で異なるスキルを要しており、例えば『真鍮(しんちゅう)の腕輪』は魔法防御力UP(少)、『炎の剣』は炎魔法攻撃力UP(小)といったように、防御や攻撃、属性強化や属性耐性、自動魔力回復や自動体力回復など、色々な種類が一つの装備アイテムに一個~六個付与されている。


良いスキルのアイテムや装備は手に入りにくいしイベントやダンジョンをクリアする必要があるが、アイテムや装備にクリア条件なんてついてないからかなりハードルが下がるというわけだ。


滅多にないけど、他のユーザーが自分のショップで売ってたりもするから、運が良ければ購入出来る。


更に運がいい人は、ガチャで極レアのスキル付きアイテムが当たる。


そう、スマホゲーム特有のガチャシステム。ダイヤを30使って1回、300使って10回ガチャが『毒薔薇』にも存在する。


私がこんなにもスキルを持っているのはレベル上げのために色々頑張ったからというのは嘘ではない。嘘ではないけれど……まぁ、課金したよね。ガチャしまくったよね。


毒薔薇のガチャは『装備ガチャ』に始まり、『アイテムガチャ』や『ハウスガチャ』、『衣装ガチャ』、『レアガチャ』等色んな種類があった。


『装備ガチャ』はその名の通り武器や防具アイテムが排出されるガチャである。


『アイテムガチャ』は体力回復薬や魔力回復薬や薬草、植物の種等の通常アイテムのガチャ。


『ハウスガチャ』と『衣装ガチャ』は乙女ゲーム特有らしく、マイルームに存在する自分の家をアイテムで豪華にアップグレードするためのものだ。例えば、レースのカーテンとか檜風呂とかトイレとかキッチンとかがそれである。


また、マイルームの中には衣裳部屋があり、『衣装ガチャ』で手に入れたドレスやメイド服や着物等の衣服を衣装部屋で着せ替えたりするのだ。


ちなみに、装備アイテムも衣裳部屋で着替え可能となっている。


『レアガチャ』はお察しだろう。レアアイテムが比較的高い確率でドロップできるガチャである。


『レアガチャ』でも各カテゴリに分類されており、『装備レアガチャ』『アイテムレアガチャ』『ハウスレアガチャ』『衣装レアガチャ』という形で、欲しいカテゴリのアイテムだけを強化できる。その代わり通常のガチャより高く、1回50ダイヤ、10回500ダイヤだ。


期間限定でスキル強化イベント『装備レアガチャ 攻撃Ver.』や『装備レアガチャ 防御Ver.』、魔道具強化イベント『アイテムレアガチャ 素材Ver.』などのガチャイベントも定期的に開催されていた。


ちなみに、アイテムやハウス、衣装は保有数に上限があるが、上限はダイヤで拡張できる、というダイヤを使わせる仕組みになっていた。まぁ開発もただじゃないからね。


保有数の拡張は素材を幾つも集めることで可能になったり、装備やアイテムはダンジョンやイベントで取得できるものもあるが……私のモットーは『時は金なり』だからね。ガチャったよね。


だってその為に働いているんだもん。自分で自由に使えるお金があるって最高だよね!


ただ以前、一度に20万円をつぎ込んであーっはっはっはっはー!と高笑いしながらガチャ回しまくった私は仕事で追い詰められてたんだなぁとしみじみ思う。


でもパッと見ただけでこのステータスは恐ろしいと言わざるを得ない。だって一昔前に存在した国一番の伝説の英雄騎士でさえ、レベル30だそうだ。公式ファンブックに載ってたもの。


私がいかに石橋を叩き続けたかお分かりいただけただろうか?


これもうチートじゃん、と考えた、次の瞬間。


ピコンと機械的な音が聞こえたかと思えば、



『ステータスに"称号"が追加されました』



と、同じく機械的な音声が脳内に響いた。


私?当然固まったよ?めちゃくちゃビビるっつーの!今驚いた私の時間を返せ!!


一しきり心の中で罵詈雑言を並べ立て、これはゲームの仕様、これはゲームの仕様、と魔法の言葉を呟くことで何とか心を落ち着かせる。


耳にではなく、脳内に響いた先程の音と言葉はきっと他の人には聞こえないのだろうし、もちろんステータス表示も他の人には見えないのだろう。こういうことはお約束だ。まだ人に出会っていないけれど、他人にそれを言おうものなら強制的に精神病院へと放り込まれるだろうから気をつけなければいけない。


とりあえず、今の現象は「天の声」とでも命名しておこう、と考えながら、増えた称号を確認するためにもう一度ステータス画面を見た。




—---------------------------------


神峰 凛 (25) / Lv.97


HP(体力):9700 / 9700


MP(魔力):9700 / 9700


ATK(攻撃力):97


DEF(防御力):97


魔法属性:全(「火」「水」「地」「風」「光」「闇」「聖」「無」)


状態:「混乱」


スキル:「増・減」「吸収・変換」(▼)


称号:「チート」


—---------------------------------




―― 称号:チート


「だろうね! 私もついさっきそう思ったよ!」


恥も外聞も捨ててシステムにツッコミを入れる。もちろん、何か反応が返ってくることはなかったけれど。


とりあえず自分の状況は分かったし、レベルが97あるのだからちょっとやそっとじゃ死なない。分かって心がずいぶん落ち着いた。状況把握って大事だ。


「人間の基本は衣食住。 衣は数日は大丈夫……としたら、次は食と住だよね」


そうと決まれば、ここはどこの獣道で、どこの町が近いのか、瘴気の影響は大丈夫か、まずはそれを知らなければいけない。と考えた時。


パッと目の前に現れた半透明のA4ディスプレイ再び。ただし、先程のものとは違って横向きである。


……驚かないよ、もう、全然、驚いたりしないよ、だって二回目だもの。


遠い目で心頭滅却していれば、A4ディスプレイ(横)には地図が浮かび上がってきて目を見開く。


「あ、マップ! これは助かる!」


なので、先程驚かせてくれたことは許してやることにした。


マップ画面を触ってどういう挙動なのか確かめれば、それは概ねスマホと同じであるらしく、1点タッチで移動、2点タッチでピンチイン(縮小)・ピンチアウト(拡大)が出来た。現在地は赤いピンで表示されていて分かりやすい。


どうやら現在地は、聖女を募集している町の近くの森へと続く獣道らしかった。


最初のイベントの町の近くであれば出てくるモンスターも弱いし瘴気もこのあたりには及んでいないのでとりあえず一安心だ。


まぁ例えラスボスが相手だとしても、ラスボスは一回の攻撃で20のダメージを与えてくるらしいので、私は484回まで耐えられるし全然余裕なのだけれど、それはそれである。


やっと心に余裕が生まれてきた。なので。


さて、そろそろ放置プレイを続けていた剣を迎えに行こうかな。


最初に私を驚かせてくれた武器を拾うため、足を踏み出した。



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