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ラッキー・フェイト・ワークライフ

作者: 花黒子


 時代の流れを読み、社会や世界の情勢を読み解いていくと、自分に運が向いてきたときに気づく。

 その場の空気を読み、他人との距離感を計りながら、関係を紡いでいくと、縁が結ばれていく。

 運と縁を大事にしていくことが、人生における大事な要素と、成功者たちは言う。


 ただ、どちらにも恵まれなくても、それさえしていれば生きていけるというのが仕事だ。

 ラッキーとフェイトに恵まれなくても、ワークさえあれば人生は進んでいく。ちなみに愛・ラブは縁の主な要素とする。


 そんな人生観で生きてきたのだが、ある休みの日、役所の人がやってきた。国家安全保障に関することで訪ねて来たらしい。


「そんな国と関わるような仕事はしていないと思いますけど……」

「ええ、存じております。ですが、現在、我々の機関で重要なミッションをしているのですが、あらゆるシミュレーションをした結果、徳井さん、あなたが適任であることがわかりました。つきましては、ミッション遂行にご協力願えませんか?」


 これまで機械工として働いてきたが、おそらくこれが俺の人生で、運と仕事が重なった時だったのだろう。

 

「仕事は?」

「工場長からはすでに了解を得ております」


 縁もあるのか。断れないのだろうな、と思った。


「わかりました。承ります。ミッションの内容を教えてもらえますか?」

「こちらの資料を読んでください」

「今どき手書きですか?」


 手書きの資料を読むと、確かに国家機密に関わりそうな内容だった。

 宇宙工学とAIの発達によって、今まで衛星から監視していた人物の特定に対するデータ容量が増えたため、カメラ機能とメモリを増設したいとのこと。宇宙飛行士の仕事だと思うが、内密に実験として飛ばさなくては、他国に技術力がバレてしまうという。そのため、わざわざ手書きにしているらしい。ご苦労な人たちだ。


 この国は愚鈍な老人によって、運営されていると思われていた方が何かと都合がいいのだろう。

宇宙とは言え、作業としては楽だ。


「理解しました」

 俺が資料を返すと、その場で燃やして水の入ったバケツに入れていた。そこまでする必要があるのかわからない。


「飛ぶ前に訓練はしますか?」

 宇宙に行くのにも訓練は必要だろう。一応は水泳や筋トレは趣味でしているが、必要な能力は違うだろう。

「はい、今から用意して1週間後には飛んでいただきます」

「急ですね」

「そのための人選です」


 誰かがミスったのだろう。慌てて適材を探して俺に辿り着いたのか。自衛隊に頼めばいいと思うが、そういえば、最近のニュースで情報漏洩が問題になっていた。


 俺は、荷物をまとめて黒塗りの車で、訓練施設へ向かい、そのまま6日間の訓練をして、翌日には宇宙空間へと発射された。俺の他には自衛隊の宇宙科の2人だけ。

 宇宙服はテレビやネットで見ていたものよりも、かなり軽量化していた。

 

 自衛隊の宇宙船から出ると、真っ暗な宇宙に寒さを感じた。温度管理はされているので、そんなはずはないのに不思議だ。


 衛星に命綱をかけて、作業を開始。それほど難しい作業でもないが、全て宇宙船内から映像を撮られていた。心拍数なども計られていたようだが、呼吸の乱れもなく、ミッションを遂行して、宇宙船に戻った。


 青い地球に感動する間もなく、小笠原諸島近郊の海へと帰還し、そのまま鹿児島観光をしてから、地元に帰された。

 なぜか国は、日本中にいる各国のスパイには、俺は船で遭難して、鹿児島で療養したという筋書きを用意していた。仕事は終わっていたので、本当に観光しているだけだった。


 報酬は振込にはならず、なぜか宝くじの券が用意されていた。当たりくじなのだとか。

 いろいろと大変だ。


 その後は、衛星の業務に関して一切話さずに過ごしていたのだが、各国の宇宙関係者が、俺の住むアパートに訪ねてきて、似たようなミッションをしてくれと頼んできた。


 もちろん銀行に預金をすると、バレてしまうのでいろんな形で報酬を貰っている。ただ、ほとんど使えない。3年は使うなと言われている。

 メンテナンスの仕事も30年以上溜まっている。


 特に、運には縁がなかった俺だが、仕事はまっとうにやってきたつもりだ。運と縁は、一度回り始めると止められなくなるのだろう。

 自分で止めるには信頼を失わないといけないのかもしれない。ただ、仕事まで失うと人生は進まなくなる。

 初めて、自分の人生の限界を決めようと思う。


 運、縁、仕事、バランスが大事だ。


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