私は運が良かった
再婚した母親をいびってみた。屋敷全体で。
私は運が良かった。
子連れで再婚できたのだから!しかも侯爵家!これで一安心。一時はどうなる事かと思った。
平民になるにしても手に職がないから、ダメねぇ。
私はモニカ=ファイになりました♡
ファイ侯爵家に嫁いだから。平民落ちも頭をよぎったけどよかった~。
娘はデイジー=ファイ。13才。
親の欲目でしょうかね?それなりに美人だと思う。顔立ちしっかりしてるし。
さて、侯爵家の方々と顔合わせ。しっかりせねば。私は女主人なんだから!
「この度、侯爵様と結婚いたしましたモニカと申します。今後お世話になります。よろしくお願いします」
あんまりへりくだるのも変よね?
「娘のデイジーよ。よろしく」
うーん、娘の挨拶もどうだろう?母娘で微妙だなぁ。
「侯爵の長女のルナ。15才よ。今後よろしく。妹が出来たのね?父さんにそこは感謝だわ」
ちょっと引っかかるけど、まぁいっかぁ。娘が増えたなぁ。反抗期なのかしら?
翌日からデイジーはルナとよく庭園でお茶会をしている。
仲が良くていいわ。ほっこりする。
当の侯爵様?仕事で忙しいみたいでなかなか帰宅しないみたい。
その翌日から地獄のような日々が始まった……。
「アラ、お母様いらしたの?」
デイジー、言葉遣いが貴族らしくなったのね。と言ってられない。何故私は全身水をかけられているのだろう?
「そこに害虫がいるから水を撒いてくれる?って頼んだんだけど、まさかお母様がいるとは?うふふっ」
?
私の食事だけ、なんか黒い。炭ですか?
「奥様が今日亡くなった方を悼んでいると聞いて、黒い食事にしました」
厨房に戻った男の笑い声が聞こえる?
「あの顔見たかよ?あんな顔するのな?あー、面白い。あの炭に使った材料はお嬢様達の料理を作る時に発生した生ゴミなんだよね。まぁ、有効利用だよなぁ、俺って天才!アハハ」
その翌日から私の寝台のシーツは交換されなくなった。
「えー?あの奥様の部屋に入るのもなんか嫌なんだけど?」
という使用人の声。
私はどうなっているのだろう?
デイジーによって私の噂は広まっているようだ。
「世紀の男好き」「時には15股」「ヒモ人生」等・・・
身に覚えのない噂ばかり。
どうしてデイジーが実の母親を貶めるのだろう?
ある日侯爵様が帰宅した。
侯爵様の耳にも私の噂は入っていたようで・・・
「貴女と結婚していいと思ったことは、ルナに妹が出来たことだ。それ以外はない。自分が愛されてココにいるとか勘違いをするのはやめてくれ」
と言われた。
その日から、私の部屋は屋敷の外の小屋になった・・・。主寝室だったはずなのに。
社交界に出席しなければならない時のみ、屋敷の中に入れた。
今回は王城でのパーティー。
屋敷の中では誰も私の世話をしようとしない。
自分で全てすることになる。
ドレスを選び、アクセサリーも選び。そして自分磨き。
お風呂に入り(小屋にないのでかなり助かる)、適当な香水を軽くつけ、ドレスを纏い、髪を結う。
侍女がしてくれるであろうことを全て自分でする。
おそらく、デイジーもルナも侍女がしてくれているんだろう・・・。
「へぇ、お義母様でも馬子にも衣装かしら?あ、馬子に失礼ね。ホホホ」
ルナもなかなか辛辣になった。
「そうよねー、お姉さま。馬子に失礼よ。それにその衣装だってもう廃棄ね。お母様が着た後じゃ着たくないから」
はぁ、デイジーまで。しっかしもったいないなぁ。
「アクセサリーだってもう触りたくないわよ?今日の御者に特別ボーナスとしてあげましょうか?受け取ってもらえるかしら?汚らわしいって断られるかもしれないわね」
「この馬車のシートも全面張り替えが必要ね。汚れちゃったから」
こんな調子で、王城まで行った。
王城に着くと、侯爵様が待っていた。
「一応、俺がエスコートするのか・・・。はぁ、この上着は今日で処分だな。君が触ったなら焼却処分」
私はなんなのでしょうか?
なんかのゴミでしょうか?私が触れたものは‘汚い・汚らわしい’認定されてしまう。
「俺が君をエスコートするのは会場までだ。後は壁の花にでもなっていればいい。ああ、花というより穴か?誰かが気づくといいな」
もう誰も信じられません。侯爵様だってこんな人だとは思わなかった。もっと紳士的な人だと思っていた。
こんなことなら再婚などせずに、平民になってでも生活すれば良かった。
今の生活はいつまで続くんだろう?
侯爵様は私を解放してくれないのだろうか?
私は侯爵様の言うように壁の花になっていた。
社交界でも私の噂は流れているようで、好奇の目線や侮蔑の目線に晒された。
そんな中、一人のふくよかな男性が
「君は‘世紀の男好き’なんだろ?この後俺と過ごさないか?」
と、思いっきり誘ってきた。私が既婚者なのも承知なんだろう。爵位は男爵らしい。
「悪いな彼女はこの後俺と約束があるんだ」
そう言って、私を連れていった。私が触れたものは‘汚い・汚らわしい’認定されるんだけど?
「侯爵夫人、申し遅れました。私の名前はアスリド」
うわー!大変だー!!皇太子じゃないの?私が衣服に触ったよ。皇太子が‘汚い・汚らわしい’認定されてしまう。
「申し訳ない。夫人の家を少々調べさせてもらった。夫人の扱いが異常だね?」
それは侯爵様に直接言ってください。
「そこでなんだが・・・夫人。侯爵と別れて私と結婚してはくれないだろうか?」
それは願ったり叶ったりです。侯爵家から解放されたいので。
「夫人の娘は引き取らない。楽しくやっているみたいだからね」
確かに最近のデイジーは私の知っているデイジーと別人のようになってしまった。
「皇太子妃になるんでしょうか?王妃教育を全く受けていないけどいいんですか?」
「恥ずかしくも、私はこの年まで独身なんだ。今まで婚約者というものはいない。君が王妃教育1号になるなぁ。でも、教養は十分あるし、申し分ない。父上も賛成している」
もう陛下まで話を通してあるんだ・・・。
「君をいびっていた侯爵家だが、叩けば埃がガンガン出てきて只今王宮の事務官が処理中だ。恐らく一家で辺境に行くことになるんじゃないかな?
埃が凄すぎて王宮の事務官から、休ませてくれって苦情が出る始末だよ」
殿下は笑ってるけど、笑えない。事務官の方々、ご苦労様です。
「誰だ?私の妻と談笑しているのは?」
まるで愛妻に嫉妬しているかのように侯爵様が話に入ってきた。
「これはこれは、殿下ではありませんか。彼女のようなウワサを纏った人間といては権威が失墜しますよ?」
「彼女の事をよく知っているようだな?」
「これでも夫婦ですから」
「では、その噂話が真っ赤な嘘ということも?その嘘の噂話を実の娘達が広めたという事も?当然知っていますよね?」
流石に侯爵様の顔が真っ青になった。まさかの殿下からの告白。
自分が嘘の噂話に踊らされていて、尚且つ、との噂話を広めたのは自分の愛娘達…。
「御前、失礼します」
そう言って、侯爵様はデイジーとルナの元へ行った。
「あー、スッキリした。あれ?あなたはまだスッキリしていないご様子」
「そうですね。あの屋敷の使用人たちにもいびられていましたから」
「皇太子妃になれば、一発逆転!傅きますよ」
「それはそうでしょうけど、身分に関わらず人として扱ってほしかったというのが本音でしょうか?」
「あー、結構陰湿なイヤガラセだったと報告書で見ました。そうですね、今あの屋敷で働いている者の再就職先はありませんね。家族共々辺境の地へ行ってもらいます。辺境の地は王都と違い、簡単に食材が手に入りません。最終的には自給自足になるでしょうね」
こうして私は皇太子妃となった。
運が良かった。
デイジーは侯爵様と共に辺境の地へ行った。本人は「私はお母さんの子なんだから、王宮暮らしをするのが自然でしょう?」と言っていたが。
アスリド殿下が「君はそのお母さんを貶めていたんだ。罪を犯した。辺境の地へ行ってもらう」と一蹴した。
私と殿下の暮らしで平和だったのですが、私に妊娠の兆しがありました。良かった。私が妊娠しないのならば、側妃…という話もあった。
確かに高齢かもしれないですけど!30代前半です!
陛下はもちろん殿下も大喜びです。パレードを!という話もありましたが、どうにも悪阻が…。
安定期に入るまでそっとしておいてほしいです。
アスリド殿下は過保護すぎるほどに過保護で、嬉しいやら、仕事して欲しいと思うやら、頭がパニックです。あ、恥ずかしいかな?
産まれた子は世継ぎになるべく男の子です。名前はグリスドにしました。人を見る目がある良い子に育って欲しいと思います。願わくは良縁を。
了。
なかなか難しいものでいびりパターンが浮かばないものですね。




