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竜騎士様の最愛花嫁(3)

 


 翌日。

 終業時刻になり、王宮図書館の入り口が何やら騒がしいことに気付く。

 嫌な予感がして見に行くと、それは見事に的中した。


 そこには、騎士服の姿で佇むレオの姿が。

 王宮図書館の入り口に姿を現した私を見て、レオはパッと表情を明るくする。


「エレン」


 レオは微笑みを浮かべてこちらに歩み寄ってくる。

 私は慌てて、レオを図書館の中に引き入れた。


「エレオノーラ。大丈夫ですか?」


 入り口が騒がしいことに気付いたアルフレード様がこちらに来る。


「あ、アルフレード様。なんでもないので、大丈夫です」

「そうですか? ところで、その人は? 竜騎士とお見受けしましたが」


 アルフレード様の視線はレオに向いている。


「あ、本を探しておられるようなので案内しているだけです。それじゃっ!」


 私はへらっと笑ってその場を誤魔化すと、足早に誰もいない書架の奥へとレオを連れていったのだった。



 ようやく悪目立ちしない場所に来られたとほっとする。

 背後を振り返ると、レオがとても不機嫌そうな顔をしていた。


「あ、ごめんなさい」


 さすがに腕を掴んで無理矢理奥に連れて行くのは失礼だった。しかし、レオは全く違う反応を示す。


「ねえ、エレン。あの男誰?」

「あの男?」

「眼鏡かけた、さっきの──」


 それを聞いた、すぐにアルフレード様のことだとわかった。


「ああ、あれはここの館長のアルフレード様よ。オルモ伯爵家の嫡男の」

「どういう関係?」

「え? どういうって……上司と部下だけど」


 私は困惑しつつ、答える。私とアルフレード様は上司と部下であり、それ以上でもそれ以下でもない。

 なぜそんなことを聞いてくるのだろう。


「……あいつには、笑いかけてた」

「え?」

「俺にはまだ、一度も笑いかけないのに」


 レオの黒い瞳に切なげな色を見て、私は息を呑む。


(一度も笑いかけてない?)


 たしかにそうかもしれない。

 そして、自分がレオに対してとても大事な言葉を言い忘れていることに気付いた。


「レオ、言うのが遅くなってごめんなさい。けど……お帰りなさい。それに、師団長就任おめでとう」


 心からのお祝いを込めて、とびきりの笑顔で告げる。


 すると、レオは瞠目し、ふいっと顔を背ける。

 片手で覆われたレオの顔が心なしか赤らんでいるように見えるけれど、気のせいだろうか。


「エレンはずるいな。そんな顔されると、追及できなくなる」

「え?」


 はあっと息を吐いてぼそぼそと言うので、よく聞き取れなかった。


「なんでもない」


 私は首を傾げる。


「ところで、レオ。迎えはいらないわ。ひとりで帰れるから」

「ダメ。エレンは可愛いから、変な男に絡まれたら大変だ」


 レオは大真面目な顔をして答える。


(……可愛い? 誰が?)


 もしかして、目までやられちゃっているのかしら?


「……レオの手を煩わせるのが心苦しいの」


 正攻法を諦めて、しおらしくお断りしてみる。


「俺がやりたくてやっているだけだから。俺のことを心配してくれるの?」


 レオはやけに嬉しそうに笑う。


「…………」


 ダメだ。あなたの邪魔をしたくありません作戦も通じない。

 かくなる上は──。


「単刀直入に言うと、迎えには来ないでほしいの」

「え?」


 レオの表情が、一瞬で凍り付く。


(うっ!)


 明らかに傷ついた顔をされてしまい、私は慌てて「あなたは目立ちすぎるから」とフォローしてしまう。

 誰かを傷つけるのは、好きじゃない。その相手が大切な人であれば、なおさらだ。


 すると、レオはホッとしたような顔をする。


「じゃあ、明日からはこっそり迎えに来るようにする」


 にこりと微笑むレオを見て、頭痛してくるのを感じた。

 ああ、そうじゃないの。そうじゃないのに!


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