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ほのぼの高校 11HR-24HR  作者: 深町珠
23/37

まるとも

♪ぴんぽんぱんぽーん♪


実行委員よりお知らせいたしますーー。

終了時刻です。生徒は、片付けに入ってください。



と、校内放送が入る。


午後4時。




「ああ、いい汗かいちゃった!」と、快活な言葉の祥子ちゃんは

ちょっと、違うひとみたいに僕には見えた。




舞い降りた天使。



そんなイメージだったのが、なんとなく有機的に見えてしまった

ような気がした。



もともと、僕の幻想だったのだけど。




「じゃ、お兄ちゃん、そろそろ帰らないないと・・。」と、祥子ちゃん。


にっこり。元気。頬が上気して。かわいい。



孝くんも「お、そうだな。じゃあ、行こうか。町野さん、ありがとうございました。」



祥子ちゃん「楽しかった。ほんとに、ロック、いいですね。また歌ってください。」



僕は、ちょっと忘れ掛けていたので「あ、はい。ロックはいいね。じゃあ、そこまで送るよ。」



と言うと、祥子ちゃんは「あ、でも・・・・片付けが・・・。」



ハルクは「いいよ、ここは。行ってきて。」


マトーくんもにっこり。メタルフレームの眼鏡の奥で微笑んで「まかしとけ。」



ありがとう、と僕はふたりに言って「じゃ、行こうか。バス停は学校の中だから。」


と、僕は教室を出て。

南校舎の二階から、東側階段へと向かう廊下を歩いて。


左手の窓は開け放たれていて、秋の風がさわやか。



僕に、ふたりはついてきて。


「朝から来れば良かった」と、孝くん。



「でも、仕方ないね。」と、祥子ちゃん。




「なんかあったの?」と、僕が聞くと


孝くんは「行くかどうか迷ってたんです。中学生だけで

市外に出るのって、校則では禁止だから。」



「そうだよね。ごめんね、迎えに行けばよかった。」と、僕が言うと


祥子ちゃんは「いいえ、私も、迷っていたんです。ご迷惑かと。」



大人だなぁ、と僕は思う。




僕の13歳ってこんなに大人だったかなぁ? (笑)。



なんて思うけど。



東階段の所で理恵ちゃんが、僕らを見てご挨拶。



「気をつけてね。」と、優しいお姉さん。



はい、と


孝くんも、祥子ちゃんも会釈。


東階段は、ところどころ塗装が剥げていて

白いセンターラインも消え掛けて。


僕らは、ゴム底のサンダルで駆けたりしているから

時々、転ぶ奴も居たりする。



一階に降り、僕はサンダルから靴に履き替えて。


「そのまま出ちゃいそうだけど。サンダルだから」と、言うと



孝くんも「そうですね。面白いですね、サンダルが上履きって。」と。



「大学みたいですね」と、祥子ちゃん。




「大学ってそうなの?」と、僕が聞くと



祥子ちゃんは「大学の先生って、そういう感じ」と。



・・・・そうなのかな(笑)。


スノコを踏んで。




砂利が敷いてある玄関の外へ出て。



体育館との間の通路を通る。



「お!ロバート・プラント。かっこよかったぞー。」と言うのは

丸川。



元気で明るい、智治の友達だ。



丸と智で、マルトモコンビ、なんていわれてて(笑)。



「よせやい」と、僕。



丸川は浅黒い顔をほころばせて手を振った。




北校舎の前は、庭園のようになっていて

芝生、樹木。

その前がすぐにアスファルトで、バスが入れるようになっている。


ロータリーになっていて、朝晩はスクールバスが発着する。


といっても、路線バスと同じバスである。


きょうは文化祭なので、特別に運行されていて。


すでに、停留所ではバスが待っていた。



祥子ちゃんは「きょうはありがとうございました」と。お礼。


「いえいえ、僕がお礼を言わないと。遠くから見に来てくれてありがとう」と。



スクールバスなので、学生は無料。


きょうは、お客さんも無料だ。



「駅まで送るよ」と、僕が言うと


祥子ちゃんは「いいえ、ここで結構です。ご迷惑をお掛けしてはいけないし・・・。

駅のホームだと、泣いちゃうと恥かしいし。」と。


駅ってそういう雰囲気があるのかもしれない。



「そう。それじゃ、今日はここで。お兄ちゃんが居るから安心だね。」と。

にこにこ。



祥子ちゃんもにこにこ。


ちょっと淋しげだけど。


さわやかな秋の風が、ふわ、と

祥子ちゃんの髪を舞い上げて。


すこし、大人になった表情を彩った。



そのことが、ちょっと淋しいような気もしたけれど。



バスのタラップを軽快に昇って。


空いていた後ろの方の席にふたり、座って。


「また、いつか」と、僕。



祥子ちゃんは「はい。」と。笑顔を作ってはいるけれども

すこし、涙になりそうな感じ。


孝くんが、肩を抱いてあげた。



後続のバスが到着し、


この、バスは発車する。



エンジンを掛け、轟音に包まれる。



ドア・ブザーが鳴り、扉が閉じられて。



運転士が、白い手袋で指差し。


バスはゆっくり走り出して。



青い煙に包まれた。



祥子ちゃんは、俯いて黙ってしまって。


たぶん、涙ぐんでいるのだろう。




「お別れは淋しいね。」




僕も、ちょっと涙ぐみそうだった。






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