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第2話 幼馴染はいつでも味方


「俺の見立てた陣営が、お前の生徒会を駆逐する!会長、副会長、会計、書記。全てのポストに対立候補があがるのを覚悟しておくんだな!掲示板は大きめのを確保しておけよ!」


 大声でまくし立てると、不動は逆に冷静さを取り戻したのか、鼻で笑う。


「ふっ。あなたのような、人当たりがいいだけで何の取柄もない男子に、協力する人間がいるっていうの?負け戦になるとわかっていて?」


「それ、は……」


「現に、あなたの元に集まる女の子はひとりもいなかったじゃない。スクールアイドル、だったかしら?おとぎ話と現実をごっちゃにしてはダメよ?」


 くすくす。


「――っ!スクールアイドルは!おとぎ話なんかじゃない!」


「へぇ……?」


「頑張れば……!がんばればいつか花開く!仲間と協力して、足使って、今できることからひとつずつ……!そうやって大きくなっていくんだ!」


 不動はまったく理解できないのか、ぽかんとした表情だ。

 俺はアニメの最終回を思い出してムネアツなまま言葉を続ける。


「俺が!スクールアイドルの!彼女たちの軌跡のすばらしさを証明してみせる!見てろよ!」


 俺の渾身の宣誓を、不動はさも滑稽そうに目を細めて口角を歪ませた。


「ふふ。楽しみにしているわ?ひとりぼっちのプロデューサーさん?」


 ああ、悪役っぽい表情も、美人がやるとエロ可愛いんだな……

 だが!今はウザい!


「覚えてろ!いつかお前に『参りました。私をあなたのお嫁さんにしてください』って言わせて、跪かせてやるからな!」


「なっ……!」


 俺はかませ犬みたいな捨て台詞を吐きながらその場を後にした。


      ◇


「制香~!どうしよう~!」


「え?克己?――っ!?」


「……へぶっ!」


 俺は部活帰りの幼馴染に抱き着こうとして叩かれた。


「……いたい」


「痛いで済むだけありがたく思ってよ?」

「はい。そのとおりでございます」


 幼馴染免罪符ってやっぱすげーわ。後ろからハグ未遂が平手一発で済むんだもんな。

 俺は頬をさすりながら帰宅する制香の隣に並ぶ。


「で?今日はどうしたのよ?情けない声出して……」

「それが――」


 俺は、ブチ切れて生徒会長の不動相手に啖呵を切ったことを暴露した。

 一瞬にして顔面崩壊する幼馴染。何を思ったか、腹を抱えて笑い出す。


「あはははは!あんたが!不動さんに!?勝てるわけないじゃない!?」


「ちょ、そんな笑うことないだろ!?」


「だってぇ~!おかしっ……ふふ、あははは!」


 涙目になりながらいっそ爽快に笑う幼馴染はかつての無邪気さたっぷりで可愛いが、俺はいたって真剣だ。

 ちょっとくらい一緒になって悩んで欲しい。俺はむすっとしたまま口を開く。


「制香が味方してくれなかったら、俺は誰を頼ればいいんだよ……」


「味方って……え?本気なの?」


「さっきからそう言ってるだろ!?」


「…………」


 表情から本気度を察したのか、打って変わって黙る幼馴染。

 阿吽の呼吸っつーのはこういうことか?俺がどれだけガチか顔だけでわかるなんて、やっぱ制香はすげーな。


 こいつとなら、マジで勝てるかも。


「……制香。協力してくれるか?」

「えっと……その……」


 いつになく真面目なトーンに、制香ってばちょっとドキドキしてるみたい。

 そういうの、顔に出ちゃうから可愛いんだよな。でも、そういうのがわかっちゃうから、どうにも手が出せない。


 だから、俺と制香は幼馴染なままなんだ。


「……頼む」


 ずるいとはわかっていても、意図的に出した低めのイケボで攻めてしまう。

 俺の愛しい幼馴染は、呆気なく陥落した。


「わ、わかったわ。頼み事があるなら聞いてあげる。けど、私は部活もあるから生徒会選挙?に向けての準備とかはそこまで時間とれないわよ?」


「ありがとう……!やっぱ持つべきものは制香だな!」


 へぶっ!


 感極まって抱き着こうとしたら再び平手が飛んできた。

 今の流れなら受け入れてくれそうだったのに、惜しいな。


「じゃあ、お前は俺の支持者第一号だ!」


「ふふっ、何それ……」


 嬉しくてつい顔面がゆるんでしまう俺に、くすりと笑う制香。

 俺はその手をナチュラルに握ろうとして、引っ込めた。


 今は、この関係のままがいい。

 けど、色々決着がついたら、その時は――


 翌日への決意を改め、俺は隣の家の玄関で、幼馴染を見送った。


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