鬼嫁じゃなくて、鬼ですか!?
2年の歳月が経ち、ジャガイモもようやく底を尽くことが出来た、今日この頃。
今まで毎日来ることが無かったユイさんは、ジャガイモを使い切るまで毎日部屋に来てくれた。
嬉しさ反面……一体どれほどのジャガイモをお裾分けされたのだろうと思うばかり。
そんなこんなで2年目――
「うぅっ……」
「……」
「あ、あの~ユイさん?」
「……」
ジャガイモの在庫が無くなりかけたこの日、ユイさんはいつも通り僕の部屋に来て、ジャガイモの素焼きをしてくれた……までは良かった。
今日は節分でもあったりするけど、もしかして?
「き、機嫌が悪いのはどうしてですか? ユイさん……?」
「ツイてないよ! ツイてないんだよ~! ねえセタくん! どうすれば厄を払えると思う?」
「そ、それなら、豆まきなんかどうですか? ほ、ほら、節分じゃないですか!」
「嫌! 後片付け大変だもの」
後片付けは必然的に僕の部屋だから僕がやるんだけど、それが嫌なんて僕想い!?
「何もしないのがベストなの! うージャガイモが~……」
いや、もう……ジャガイモは勘弁して下さいと言いたいけど言えない。
予想通りだったけど、ユイさんの作る料理は美味しくて……でも、どれもこれもが激甘だった。
「ジャガイモはまた新芽の時期をですね……そ、その為にも節分しませんか?」
「鬼は外~むむぅ……セタくん、豆は用意してあるの?」
「はい! 商店街でもらって来ちゃいましたので、それを――」
「玄関に置いていたアレのこと? 分かった~ユイが取って来てあげる」
僕の部屋は安アパート……と言ったら駄目だけど、なるべくくつろぎたいので玄関に荷物とかを置くようにしていて、食材なんかもそこに置きっぱなしにしてたりする。
それもあって、何を買って来たのかを時々忘れたりする――
「――セタくん、どういうこと!?」
「はわぁっ!? か、かか、可愛すぎです!!」
「どうして豆と一緒に鬼の衣装まで用意してあるの?!」
「って、ど、どうして着てくれているんですかー!?」
何て恐ろ可愛い……豆の他に鬼の衣装もおまけで付いてたなんて、全く気付いていなかった。
それにしても何て可愛い鬼ですか!? 所々に素肌が光ってて、艶が……
「って、いだだだだだだだ!! い、痛いです……ユ、ユイさん、な、何で鬼が豆をぶん投げて来るんですかー!?」
「ね、狙っていたんでしょ? コスプレに憧れていたってこと、隠してたのに!」
「痛い痛い痛い痛い! お、お返しします!」
「あ~んっ、いった~~い! セタくん、ひどいよぉぉ!」
「あ、あわわわ……ごめんなさい! どうかどうか~!」
「じゃあセタくん、鬼はどうするかやってみて?」
「へ?」
鬼は外……服はウチの中に……!?
「い、いやいやいや、ユイさんを外に追い出すわけないじゃないですかー!」
「うんうん、いい子! それじゃあ……セタくん」
「――あ、はい」
鬼になった鬼嫁ユイさんを部屋に閉じ込め、僕は部屋の外で一晩を過ごすことになった。
豆も鬼もウチの中に閉じ込めたけど、厄払いになったのだろうかなんて、可愛いから気にしないことにする!