ジャガイモだらけの新婚生活?
僕は19歳、ユイさんは24歳。一年なんてあっという間に過ぎ去って、だけどお嫁さん【仮】から僕自身は特に何も起きていない。
アパートの管理人でもあるユイさんは、何だかんだで忙しくしているみたいで、いつもいつも傍にいてくれるわけでもないのが悩みどころ。
特に食事の問題はずっと悩み続けていたりして、僕自身はラーメンとおにぎりしか得意じゃないだけに、栄養面が偏り気味。
「セタくーん! いる?」
「は、はい、います」
「入るね?」
「はい」
お嫁さん【仮】なのだから、部屋に入ってくるのにわざわざ確認をしなくてもいいはずなのに、ユイさんは、部屋の外は人の目があるから公にしては駄目なの! なんて可愛いお叱りがあってずっとそのまま来てる。
「セタくんさぁ、何食べる? って前に聞いたじゃない」
「はい、聞きました。それであの時はカレーを頂いちゃいましたけど、それがどうかしたんですか?」
「むっふっふー! それ、解消~!」
えっ、可愛い! じゃなくて、聞かなくても作ってくれるのかな。
「じゃじゃじゃじゃーん!」
「ジャガイモです……ね?」
「うんうん、ジャガイモです! これでセタくんの食事の悩みは解消だよ!」
「ほへ?」
ユイさんが物凄く嬉しそうにしているから疑問は持たないけど、ジャガイモを手にしたユイさんは笑いが止まらないみたいだ。
「あのそれ……」
「オヨメさんは毎日の献立を考えて作るのは大変なんだよ? 分かる?」
「身に染みて分かります!」
「でしょでしょ? だけどもう安心したまえ! 鬼嫁さんであるユイは、セタくんの根性を試すことにしたの! ユイに頼らずに毎日ジャガイモで乗り切ることで、今後の新婚生活もハッピーなものになるんだよ~」
そういうと、ユイさんは僕の部屋を出て行って、すぐによいしょよいしょと段ボール箱を引きずって来た。
「そ、それ……どうしたんですか?」
「んっしょ~! もらっちゃった! セタくんのことは話してないのに、それなのにこれだけのジャガイモを箱でくれるなんて、ユイとセタくんの生活事情に恵みを与えてくれたんだよ? すごくない?」
「は、はは……でも、ジャガイモオンリー……」
「というわけです! セタくんは、これから毎日ジャガイモを食べてね? ユイも頑張ってジャガイモ料理を作ってあげる! 肉じゃがってお嫁さんの鉄板だから、嬉しいよね」
「げ、激甘じゃないですよね?」
「甘くしちゃうよ~セタくんには甘い生活になってもらいたいもん!」
もしやユイさんは激甘な味覚の持ち主なのかな。
献立はジャガイモ生活で解決出来たけど、ユイさんの鬼嫁計画はまだまだ遠いかも。