誕プレだよ!
「い~ち、に~い……さん! はい、以下略~!」
「は、はは……し、仕方ないですよ」
「そんなことないと思うんだ! だってダンナさまの記念日なんだよ? 最後まで数えてあげたいじゃない」
「うぅっ、ユイさんのその言葉だけでも、僕は僕はっ!」
さかのぼること30分前くらい、今日もいつものように僕の部屋に入って来たユイさんは可愛い。
そうじゃなくて、珍しく落ち込みながら部屋に入って来た。どうしたんだろう?
「あ、あの、ユイさん……? ど、どうし――」
「大変だよ、セタくん!」
「は、はい」
「知らないって怖いよね。どうして今まで気付けなかったんだろ……セタくんとユイは夫婦! なんだよ?」
「お、おっしゃる通りです」
「いくら鬼嫁でも、お嫁さんなんだよ? やっぱり良くないと思うんだ!」
どうやら何かを伝えたがっているみたいで、言いたくて仕方がない感じに見える。
しかも僕に関係していることっぽいから、その時点でにやけ顔が止まらない、どうしよう。
「セタくん! キミの生まれた日はいつかな?」
「へ? あ、誕生日のことですよね。それならすでに過ぎてたりします」
「だ~~~めっ! それじゃあ駄目なの! そんなの、お嫁さんじゃない~……」
「す、過ぎちゃってからの出会いですし、それは気にしなくても……」
僕の恋するユイさんとの出会いは、引っ越しをして来た春。
僕はそれのほんの少し前に誕生日を迎えている。だからそれは仕方のない事実といえばそうなんだけど。
そのことで嘆くなんて、やっぱりユイさんは僕の理想のお嫁【仮】さんなんだ。
「ねえ、誕プレ欲しいよね?」
「あ、プレゼントなら、僕はユイさんが僕と出会えたことがプレゼントみたいなもので……」
「ちが~~う!」
いつになく真剣な表情とつぶらな瞳……可愛い……じゃなくて、どうやら真剣に嘆いてくれている。
「誕プレ! 欲しい? 欲しいよね、ダンナさまだもんね!」
「も、貰えるなら嬉しくなっちゃいます」
「よぉ~し! 気合を入れて持ってくるから、ここで待っててね!」
「は、はい」
そんなことを言ってすぐに、ユイさんは部屋を出て行ってしまった。
気合を入れて僕の誕生日プレゼントを持ってくる……って何だろう? 手伝いたいけど、待ってないと駄目だし、うう、優しいなぁ。
「あ~け~て~!」
「は、はい、今すぐっ!」
戻って来たユイさんは、両手一杯にロウソク? を掴んでいて、すごくこぼしそうにしていた。
「あ、あの~……これは何でしょう?」
「セタくんのお祝いの誕プレだよ! ほらほら、歳の分だけロウソクを立てるって言うでしょ? それ!」
「えええええ? こ、これ、こんなに沢山!? 誕生日プレゼント……ロウソク……」
「い~ち、に~い~……とにかくセタくん、おめでとっ! 以下略!」
「あ、あ、ありがとうございます……あ、あはは……」
何て可愛いサプライズ! でもユイさん、こんなに大量のロウソクがお部屋にあったんでしょうか?
しかもケーキなしです。立てようがないけど、気持ちは伝わったです。
ユイさんの鬼嫁への方向がむずがゆくて、すごく可愛くて……でも何だかなんだろう、後でケーキを買いに行かないとダメな気がする。
そしてユイさんからの誕生日プレゼントのロウソクを、差しまくらなきゃ。嬉しいです、ユイさん!
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