ナンパをしますか、されますか?
華奢な腕と腰、キュキュッと締まったウエスト、少しだけ茶色に染めた長い髪を風になびかせて、ユイさんはとんでもなくスタイルがいい。
真夏の海に一緒に来られたのも、お嫁さん【仮】になってくれたのもあるし、ユイさん自身も活発で開放的で、魅力がありすぎる女性というのもあったりする。
「さぁて、セタくん! 行ってらっしゃい!」
「な、何がですか?」
「セタくんは何のために海に来たのかな~? スタイル抜群の女子たちがたくさん来ているんだよ? ほらほら、じっくり眺めちゃって!」
「は、はい~み、見ちゃっていいんですね……は、ははは」
隣には周りの女性たちには負けることの無いくらいのお嫁さん【仮】が僕を見つめている。
い、いいんでしょうか?
眺めるだけでは浮気にはならないけど、許可が出てしまったら見るしかないのは分かるけど……僕はユイさんだけを眺めていたい。
「うん、ダーメ! ユイじゃなくて、他の子を見ようか!」
「あぅ~」
「これは鬼嫁への第二ステップなんだよ。目の前でダンナさんが堂々と他の女子をナンパ! 成功したらムカつくし、失敗してもムカつくことなんだよ? そういうわけだから、レッツゴー!」
「ひぃぃ」
行っても行かなくても、成功してもしなくても怒られる運命なんだ。
それが鬼嫁さんの判断基準ということなんですね。
「す、すすすす……すみませんっ! 僕、ナンパをしたいです」
「は? 消えろガキ!」
「すみませぇぇん!!」
頬杖をつきながら、ユイさんは物凄い笑顔で僕を見つめている。怖いけど可愛い。
「あ、あのあのあの、ぼ、僕と一緒に焼きそばを食べませんかっ!」
「奢り? 食べるだけならいいかな~」
「ほ、ほんとですかっ!? じゃ、じゃあ一緒に……ひぃっ!?」
「はぁ? 何、どうしたの?」
こ、この突き刺さるような視線は、間違いなく嫉妬の視線!
焼きそばナンパは成功して、これから奢るためだけに移動しようとしたのに、足が全く動かない。
「うざ……もういいし」
「あ、あぁぁ……ご、ごめんなさぁい!」
嫉妬な視線を向けていたユイさんを見ると、拳を鳴らしながら手招きをしているのが見える。
「い、行きます行きます!」
「はい、お帰り。成功しちゃったね~? 何か言うことはあるかな?」
「えー……僕はユイさん一筋です! だから、ごめんなさいです!」
「うん、焼きそばを食べに行こうか。セタくん、目の前でナンパはやっぱりムカついちゃった」
「で、ですよね」
あぁぁ、ユイさん……鬼嫁さんはそんなことをさせないと思います。