鬼嫁さんと年下男子に祝福を!?
「ぼ、ぼぼ、僕の恋するユイさんを下さいっ!!」
「真面目に?」
「は、はい! 大真面目ですっ! 僕は僕は……ずっと、ずっとユイさんと一緒にいたいんです!」
「鬼嫁でも?」
「も、もちろんですっ!」
「……まぁ、ユイが目指す鬼嫁には至ってないんだけどね~」
「え、じゃあ?」
「うん、予行演習通りに行けば大丈夫だと思うよ。それにしてもセタくんは真っ直ぐだよね~」
――と、ここまでのやり取りは、近々アパートに訪れて来るらしいユイさんのご両親に向けての練習。
「何だか色々ありすぎて走馬灯のように思えます……」
「いや、セタくん死んでないから!」
ユイさんが管理人なアパートに越して来て、一目ぼれからの結婚申し込みからの承諾。
そこからユイさんの鬼嫁目指しが始まったんだ。
「セタくんって今いくつだっけ?」
「今年で二十歳です!」
「ようやく成人かぁ~じゃあ、親たちが来る前に男を見せてくれる?」
「はっ? お、男を!? え、どうやって……」
「春と言ったらお花見! お花見と言ったら?」
「え、えーと……部屋でくつろぐ?」
「ちっがーう!! セタくん、友達いないの? ううん、騒いだりすることって君にはないの?」
今の今まで、お花見といえば部屋でゲームか睡眠か……お酒を飲むような年齢でもない限り、お花見にわくわくしたことはなかった。
だけど今年からは違うんだ! そう思えたら、ユイさんの言葉には何も反論しなくてもいいなんて思ったりして。
「無いですし、友達とどこかへ行くこともないなぁと……」
「つまんない男の子すぎる! セタくん、それだからユイは君に放てない言葉があるんだぞ?」
「え? ええ!? な、何を……何の言葉を?」
「あぁ~もう! セタ! これから花見だー! 酒を買ってレッツゴー!!」
「は、はい」
何か怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか? こんなユイさんを見るのは初めてだけどすごく可愛い。
「さぁさぁさぁ! ぐいぐいぐいっといっちゃえ~!」
「うっぷ……んぐっんぐっんぐー……」
「おぉー! いい飲みっぷり! やればできる――って、きゃわっ!?」
「うううう……ユイさんのことが大好きれすのに、ユイさんはオレのことをどー思っているのれす?」
「なるほど。本性も素もユイへの気持ちでいっぱいなんだね。うん、ユイもセタくんが好きだよ。お酒を飲んで豹変して、どこまで本性を出してくれるか期待していたけど、セタくんらしいなぁ……うん、君なら本当に結婚してもいいかな」
頭の中がぐわんぐわんと回りながら、何故かユイさんが僕の真下にいてほんのり顔を赤くしながら、僕のことを好きと言ってくれている……まで覚えてそのまま、ユイさんの首元に倒れてしまった。
その後の意識がハッキリしていないまま、気づけばご両親に挨拶していたみたいだった。
「セタくん」
「はい、ユイさん」
「違う違う! ユイって呼んで! セタくんのことはあなたって呼ぶから!」
「ユ、ユイ……」
「はい、良くできました」
「じゃあ、僕の名前を教え……」
「教えたいのなら、これを着せてくれる?」
ユイは、僕の前に浴衣をいくつか並べ始めて、満面の笑みを浮かべている。
「えーと?」
「どれでもいいから、この中の浴衣を選んでユイに着せて? 夏祭りに向けて練習なのだよ!」
「え? 選んで着せるんですか? 僕が!?」
「そう! 全てをダンナさまに見せながら、着せてもらうのが鬼嫁への第一歩なんだよ!」
「ええええ!? は、恥ずかしいです!」
「まぁまぁまぁ、ダンナさま頑張ってね! ユイとダンナさまの生活はこれからなんだからね!」
夏祭り、クリスマス、年越し……僕とユイさんの結婚生活はこれから続くんだ!
お読みいただきありがとうございました。
サクッと始まって、サクッと完結です。




