佑弥君と聖霊探し
十四時頃かのんさんが嬉しそうにキッチンで料理をしていて、
廊下に迄甘い香りがただよっていた。
「おっお帰りなさいです。あっあのぉーよかったらココナッツパイ味見して貰えますか?」
かのんさんは私が部屋に戻ると同時に私の部屋に入ってきて
テーブルの上にお皿にココナッツのパイを乗せ出してくれた。
照れて居るのか恥ずかしいのか顔が真っ赤に染まりとても可愛い。
「じゃぁ頂くね」
椅子に座り、フォークを使いココナッツのパイを切るとそのまま口に運ぶ。
「どっどうですかお味は?」
かのんさんは私が食べている姿をじっと見つめて伺っている。
「うん、んんっ」
パイの粉が喉につっかかり咳をして出したいのを堪えた。
真横にあったレモンティーをストローで飲み、むせた。
「ごほごほ、おっおいしいよ」
むせて楽になりそのまま感じた味の感想を伝えた。
「うっ嬉しいです」
かのんさんは、安心したかのように笑顔を向けた。
「誰かにプレゼント?」
さりげなく聞くと、照れた顔で少しもじもじ。
「ひっ秘密です。感想聞かせて頂き嬉しかったです。
私は、スマフォに佑弥君から謝罪の連絡があり明日改めて会う事に。
念の為今日会っていた居たかも知れない事を触れずにした。
翌朝の七時半過ぎ待ち合わせの噴水前に行くと、
食事中なのか早いのか人が行き来する感じが無かった。佑弥君は私が着くのと同時に現れ。
「やっぱり佑弥君だっただの?ごっごめんね待った?」
「僕も今来た所だから気にしないで」
佑弥君は黒い帽子をかぶり、又茶色いサングラスをしていた。
昨日と同じ制服姿。
「きっ昨日は助けて貰ってありがとう、あっ後」
間違い無く佑弥君のだと確信し鞄からハーモニカを出し佑弥君に渡す。
佑弥君はハーモニカを受け取ると後ろの名前を確認する。
「菜月さんが持っていてくれたんだねありがとう探していたから見つかって、
よかった・・・・・・とっ所でまっ前にどこかで・・・・・・」
「佑弥君その・・・・・・ハーモニカとても大事な物なんですか?」
最後の方は声が小さくて聞こえなかったけど佑弥君は少し表情が固まる。
何か理由でもあるのか分からない。
「とっとても大切な思い出が残っている物だから、初恋の人との」
佑弥君の顔がかすかに辛そうな表情をして、顔を背けたと思うとすぐにこっちを見た。
「菜月さん、聖霊はどうしたの?」
佑弥君は私の周りをきょろきょろ。佑弥君の聖霊は左肩に座って居る。
「実はシュミレーションイベントに参加して居なくなってしまって」
「この学園では,聖霊が居ないとイベントにも参加出来ないから
もしよければ聖霊が居る場所噂で聞いて知っているから案内するよ?」
私はお言葉に甘えて聖霊を取り戻す事に。
佑弥君に案内されて辿り着いたのは裏庭よりもっと奥の洞窟の前で地下に降りて行った。
周りは薄暗く少し寒い棚から頭に付けるライトを取り。
「悪いけどこれを頭に付けて貰える?」
小さなライトが付いているヘルメットを私はかぶり。
佑弥君が私の右の手をギュッと握ってきた。
「こうしたらはぐれないから、それにここは滑りやすい可能性もあるから奥に行こうか?」
佑弥君と暗い道を進むとバサバサと何かが飛んでいた。
よく見ると黒いコウモリが現れた。
「カムイ!」
「何?何でこんな所にコウモリ」
パッと一回転すると聖霊は剣の姿にカシャンと地面に落ち佑弥君は、剣を拾い構えた。
「せっ聖霊は剣に変わる能力があるんだよ」
佑弥君は、コウモリに向かって突進、ジャンプし剣をコウモリに突き刺し。
「ぎゃーっ」
っと突き刺されたコウモリは姿が消え。剣になった聖霊は元に戻り佑弥君の右肩に座る。
「奥に進もうか」
奥に進むと、扉が現れ料理問題と書かれて居た。
扉は今は開かず正解すると奥に行けるのかも。私は魔方陣の上に立つと。
「問題です。じゃがいも、にんじん、タマネギ、カレーを作る時
ゆでて作る?それとも袋に入れ穴を開け根菜でチンする?」
「これは問題なの?早いのはレンジでチンするだけど」
「ぴんぽん正解です。では奥にお進み下さい」
簡単な問題で安心していた。
佑弥君と中央にさしかかった時目の前に大きな、水溜まりが。
「この水深いのかな?」
佑弥君は着ていた学ランを脱ぎ。
佑弥君が私をお嬢様抱っこすると水の中に入った。
「ゆっ佑弥君濡れちゃうよ?」
チャップンチャップン
と膝が浸かり佑弥君が足を止めた。
段々足が引きずり込まれ私は佑弥君に岸に軽く投げられた。
ドサッ
振り返ると佑弥君は肩まで水に浸かり底に引っ張られて、沈む。
「ゆっ佑弥君!」
私が名前を呼んでも返事も無く、姿が段々見えなくなる。
「問題です。助けたければ問題に答えてこの学園を卒業したのは、何人?
赤百六十五人、黄色百二十三人さあ答えて」
「えっそんな解らないよ!」
佑弥君の姿が水面から消えようとしている。
「どっどうしよう」
佑弥君の姿が完全に消え、慌てる。
「赤!」
『そんなに多いとは思えないも』
「正解!」
じゅぼっ水が引き佑弥君は、その場に倒れて居た。私が近寄ると息をして居なかった。
「佑弥君大丈夫?佑弥君」
「ゴホッゴホッ」
佑弥君が息を吹き返し、とっさに佑弥君を抱きしめていた。
濡れたはずの身体や制服は濡れる前の状態に戻る。
「よかったぁ!」
ふわっと両手で佑弥君に抱きしめ返され佑弥君の体温が伝わる。。
「ごめん逆に心配かけたみたいで」
「私の方こそこんなめに合わせてしまうなんて」
佑弥君は起き上がり、学ランを拾いに行き、上から羽織り、
戻って来ると岸の方に二人で歩き、祭壇の上に二人で手をかざした。
まばゆい黄色い光が集まり空中ではじけニーナが姿を現した。
「遅いわよ菜月待ちくたびれた、こんなになるなんて思っても居なかったけど」
私は佑弥君と無事に聖霊を取り戻し学園の方に歩いていると。
「ちょっといい?」
濃い化粧をした女性が佑弥君の左手首を掴み,連れて行こうとした。
「ごめん用事が出来たから今日はここで」
佑弥君の声がかすかに震えていた様に弱々しい声に変わる。
それに様子があきらかにおかしいけど佑弥君と距離を置き反対方向に歩く。
私はしばらく一人で歩き、気になり急いで二人の後を追った。
並木道にさしかかり別の二人の女性が現れ佑弥君は左右の肩や腕を掴まれ
身動きが取れない状態に。
「ねぇなぜ呼ばれたかわかって居るんだよね?」
ボコッ!
「うっ」
化粧の濃い女性が佑弥君のお腹の辺りを蹴り、うずくまり
お腹を両手で押さえる佑弥君の、両側に居た女性に学ランを強引に脱がされ
木に押しつけるとシャツのボタンを、プチッと引っ張り、
佑弥君の茶色いサングラスを奪い化粧の濃い女性は去った。
両側に居た女性二人は顔を見合わせ一人は佑弥君に強引に口づけし。
「んっつ」
佑弥君の残りのシャツのボタンをすべて取り走って逃げた。
もう一人も女性の後を追って逃げる際に何か佑弥君の耳元でささやくように去る。
木にもたれ掛かりそのまま座り込みぐったりして右腕で唇を拭う佑弥君。
「あんな酷いことされて何もやり返ししないなんて、
ごめんね偶然通りかかって菜月さんあの人と知り合い?」
みゅうなさんが木に隠れて居る私の隣で佑弥君の様子を見て小声で語りかけた。
湧麻君が私を助けて怪我した事が脳裏によぎる。
「菜月さんに私を助けて貰って、お礼も言えてなかったのもあるけど、湧麻君が助けたのは
菜月さんだったからなのかな?
湧麻君面会拒絶で会えないけど菜月さんが怪我をして、
理久君何度も菜月さんの部屋に行ってたみたい。
理久君菜月さんに相当気があるのかも、
あの男性がそれを知ったらどう思うか
考えた方がいいじゃない?
みゅうなさんと湧麻君デート出来なくしたの私のせいでも、
湧麻君や理久君が私に気持ちがあるって、
特に関わりを持った訳でも無いのに。
気のせいか佑弥君を見たみゅうなさんの表情は少し
悲しげにも思えた。
私はみゅうなさんに佑弥君が気になる事を告げるとみゅうなさんは。
「そうなんだっごめんねっ邪魔したよね?
私これから用事があるから又誘ってね?」
そういい残し何処かに行ってしまった。みゅうなさんと話をしている間に、化粧の濃い
女性が姿を消し居なくなっていた。
私は佑弥君に近寄り祐弥君は木によさりかかり
少し震えている。
何かを感じ取ったかの様に佑弥君と目が合う。
私は両膝を地面に着け向き合うように佑弥君目線になる様に両膝を地面に付け座る。
「っなっ菜月さん!?どっどうしてここに?」
余りにもびっくりしながら表情がかなり固まっている。
それと同時に何となく見られたく無かった表情になり
暗くなる、まるで罪でも背負うかのように。
「もしかして今の見ていた?僕の事軽蔑して
いいよっ」
「ゆっ祐
佑弥君は何も悪い事して無いでしょ?女性達が勝手に
そっそれにもしあの時私が祐弥君を止めていれば」
佑弥君は私の腰の辺りに両手を回してきてぎゅっと体を引き寄せ顔を隠すかの様に埋めてきた。
「ごっごめん痛っつ」
かすかに漏れる佑弥君の声に佑弥君を私から両手で引き離すと白いYシャツの
隙間の肌に無数の青いあざが見えていた。
佑弥君は私が青いあざが目に入らない様に
慌てて両手で白いYシャツを中央に寄せ肌を隠す。
「いっ今あった事もこの事も春紀には言わないで貰える?
心配かけたく無いから!」
「そっそれはいいですがあのっこれっ」
「私はカバンからハンカチを出し佑弥君の唇の右側の辺りから血が出ていることが気になりハンカチを充てた佑弥
は私の左手首を右手で掴みハンカチを退ける」
佑弥君は私のてから血の付いたハンカチを受け取ると、
申し訳無さそうに右側のポケットからハ―モニカを取り出し見せてきた。
「これは初恋の人から貰った大事な物だから、
前は言えなくてごめんねっ」
心なしか佑弥君の表情が暗い。
「僕でよかったら又会って貰える?」
「はいっ私でよかったら」
佑弥君は学ランを広いそのままその場で別れた。
私は学園の校舎に戻る為一人でとぼとぼと歩いていた。
ガサッ
近くの木の辺りで音がしていて、私は気になり近寄る。
そこに居たのは、春紀君、春紀君はその場に座り込む様に
ぶるぶる震えて恐怖体験でもしていたかの様に
うつむいていた。
私は気になって思わず声をかける。
「はっ春紀君?どっどうしたの?」
「なっ菜月ちゃん!ぼっ僕!あっあっのねっ」
何かを言いかけたけど春紀君は何か言えるような状況では
無いのか額から大量の汗が吹き出して居た、
逃げるかのように立ち上がり。
「ごっごめんね!ぼっ僕これから用事があるから!」
っと走り去ってしまった。
木の辺りを見ると一枚の写真が落ちていた。
恐らく小さい頃に撮ったと思える。
小学生の低学年くらいの時の写真よく見ると
小さい頃の湧麻君に似ている気がした。
春紀君の物かわからなかったけど、もしかしたら
そうかも知れないと思い拾う事にした。