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未来の世にて  作者: 斬緋藍染
5/5

逆転

 アラヤの(車種名は分からないが)近未来的なかっこいいバイクは、後部に俺を乗せ、先に向かっている織田と重保が乗っているバイクを追って超高速で道路を走った。

「アラヤさん!法定速度っての無いのか!!」

 超高速で走っているため、俺の声はかすかにしか聞こえないはずだ。だから俺はできる限りの大声を出してしゃべったのだが…

「うっさい!そんな大声で叫ばなくても聞こえる!っていうか知らないのか」

 返ってきた答えはそのようなものだった。

「このバイクの周囲3メートルには結界みたいなものが張られているんだ。こんなに高速で走っているのに風とかその音とかが感じられないだろ。吹き飛ばされないように、それから情報の伝達を円滑に進めるために協会が発明したものだ。一般に使われている車両にはこんなシステムは備わっていない。まあこれがあるから非常時には、私達には法定速度って言うものがない。もし万が一事故りそうになっても、結界が避けてくれるから安心なんだな」

「へぇ…。未来っていうのはすごいんだな…」

 そのような話をしていると、目の前に多くの車両が停まっているのが見えた。

「ここが目的地か?」

「いや、もう少し先のはずだ…。奴らがここに来るには3時間くらいかかるはずなんだが…」

「誤差っていうこともあるでしょ」

 数メートル先で明智がタバコを吸っているのが見えた。

「明智」

「…ああ、龍華か。あ?龍華?お前なんでここにいんだよ」

 タバコ臭い顔を俺に近づけてきた。くッッッさ!!!タバコあまり好きじゃないんだよ。

「けほっけほ…臭い!」

「ああ、すまんな。タバコは好きじゃなかったか」

 明智のGT-Rの車内にある灰皿で火を消し、口を水で軽くゆすいで再び俺のほうに顔を戻した。

「で、なんでお前いるんだ」

「私達が連れてきたんだよ」

 背後からアラヤが登場し、そう言った。

「戦うことができないやつをここに連れて来るんじゃねえ」

「戦えるようにするには、まず敵を知るのが早いんじゃないかと思ってな」

「死んだらどうする」

「死ぬものか。通常種ごときで。そこまで被統合蘇生者はやわじゃないんだよ」

 さっきから思ってたけど、こいつら仲悪いのか…?キャラ的に似ているし、対立しやすいのかもしれないな。

「そこまで心配なんだったらこれ、もう渡しとけよ」

 アラヤが手にはめた黒い手袋を指差し、そう言った。

「…最初から実技試験をしろって言うのかお前は」

「ああ。どうせいずれ通らなくてはいけない道だろう?」

 その言葉を聞いた明智は舌打ちをした後、GT-Rの後部座席に置いてあったアタッシュケースを引っ張ってきた。それを開くと、中には黒地にポケ○ンの御三家と同じ色のマークが描かれている手袋が色ごとに一つずつ入っていた。

「好きなの選べ。一応テスト用のやつだから仮契約となるが、実際に手にしたら、壊れるまで同じものを使ってもらうからな」

 俺は青色のものを手に取った。

(ゼ○ガメ、君に決めた!なんちゃって)

 くだらない冗談を考えているのが顔に出ていたのか、アラヤと明智がとんでもない顔で見てくる。

「えぇ…」

「お前、今何考えてた?」

「い、いや!なんでもないよ!」

 あわててそう言って手袋をはめた。

 その瞬間、意識が遠のき、俺はその場に倒れこんだ。


『あなたがわたしに入ってきた人?』

 俺の声…いや、()()()使()()()()()()()()()が聞こえてきた。

 あたりは何もない無の空間だ。そこに一人の少女が立っていた。かなりの美少女だ。

『ねえ、そうなの?』

 その口から先ほどの声が聞こえてくる。

(俺の外見今あんな感じなのかな…。ってことは)

「君が坂本龍華なのか?」

『うんそうだよ。あなたの名前は?』

 性格は見た目に合った感じのようだ。見た目は少しひ弱そうだが、声はハキハキしていて活発そうなイメージだ。

「俺は品輪(しなわ)甲斐(かい)。わけ有って君の身体を使わせてもらってる者だ」

『へえ、甲斐さん、ね…。ミカちゃんは元気だった?』

「ミカ?ミカエラのことか?」

 少女…龍華は頷いた。

「知り合い…なのか?」

『うん。生まれた時からね。施設じゃいつも仲良くしてたよ』

 施設…。まさかこんな子がそんな人生を歩んでいたのか…?

「まあ、元気そうだったよ。俺はミカエラの普段を知らないからあれが元気か元気じゃないかは分からないけど、アラヤとか重保とか信薙が放置してたってことはあれが普段ってことなんだよな」

『そう。良かった…。それで、甲斐さん、わたしになにか用があってきたんでしょ?』

 ああ、そうだった。俺もここで何を話せばよいのか分からないのだが…。

「まあ、俺はなんでここに来たのか分からないんだけど、あの手袋はめた瞬間ってことは…」

 この身体()とひとつになれってことなんだろう。

「君の身体を傷つけないと約束する。酷使しないと約束する。だから俺を君の身体を使う人間だとみとめてくれないか?お願いだ」

『…そうか、それが汝の願いか』

 龍華の姿形が崩れ、光の粒子となって消えた。

『汝が行使している肉体は超凡な物だ。間違った使い方をすれば暴走し、破滅する。それでも使うか?』

 さっきから何なんだこの声は。多分話し方とかを考えると神様とかその部類のものなのだろう。あのクソ神とは違って気品さがあるな。

「ああ、もちろんだ。縁あって龍華の身体を使わせてもらってるんだ。その分働くさ」

『そうか。ならば良いだろう。我は試験用のため、大したことはできぬが、お前の今回の活躍によっては本契約時に円滑に()()が進むだろうよ』

 何も無かった空間から突如腕のようなモノが伸びてきて、俺の頭を覆った。その瞬間、俺の意識は再び途絶えた。


 龍華の意識が飛んで、もうすぐ5分…。突如出現した()()()は先に到着していた信薙が牽制しているが、1人で2体を食い止めているのはそろそろ限界だろう。重保はというと、彼は拳銃や機関銃、狙撃銃をメインとするため、一定以上離れていないと攻撃ができないのだ。拳銃や機関銃を使えば良いではないかと思うだろうが、通常種には重保の拳銃の弾が通らず、弾かれてしまうのだ。

「う…ぁ…」

 俺の足元でうめき声がした。龍華が眼を覚ましたのだ。

「起きたか。どうだった…って」

 目覚めた龍華の様子がおかしい。眼はしっかりと前を向き、信薙が戦っている相手のほうを見据えている。ここからでは、その姿は確認できないが…。

「阿頼耶さん、状況は」

 アラヤのほうを見ずに状況の確認を行った。

「え?ああ…通常種が2体、周りには今のところ他の固体は確認されていない…」

「分かりました。それだけで大丈夫です」

 そう言うと龍華は高く跳び上がり目の前に停めてある車をすべて飛び越え、目標の目の前に着地した。

「なに…これ…」

 龍華の目には白色の人型の『異形』が映っていた。

「龍華さん…。見てしまったね。これが俺たちが戦っている『異形』だ。これを見ても君はまだ戦うと言うかい?」

「ああ、もちろん。相手がどうあろうと、わたし(・・・)が戦う運命にあるのは変わらないよ」

 龍華はそう言うと腕に力をこめた。

「はあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 龍華の腕から電流が発せられる。

 叫んでいる龍華の姿を確認した『異形』の1体が龍華に腕を伸ばす。

「「「危ない!」」」

 その場の誰もがそう叫んだ。

 …しかし、次の瞬間、腕を伸ばした『異形』が木端微塵に粉砕され、血を噴出した。

 粉砕された『異形』がいた所には龍華が立っていた。その手には彼女の身長をゆうに超えている太刀が握られていた。

 もう1体の『異形』が仲間の敵をとろうとしたのか、身体を赤くして迫ろうとした。

 しかし、()()は1ミリも動くことができずに、絶命した。龍華が発生させた落雷によって。

「被統合蘇生者は驚異の異能力を得る…が、あそこまでのものはミカエラ以来だな」

「ああ、そうだな。こいつは私達にとって良い戦力になるだろうよ」

 俺の独り言にアラヤが反応して返答した。

「俺がここにいる必要はなくなったな。お前たちが敗北して撤退するようなことになれば、秘密兵器でも投入しようかと思ったんだが、その必要はなくなったみたいだ。先に事務所戻ってるぜ」

「いいのか、()()()()1()()()()()()()()()

 気付いていたか…。まあ、分かるところ…重保の方にいるからな。

「そうか。だが、今その方向に行った影が見えなかったのか?」

「ああ。見えたとも。だが、あいつは…」

 本気を出せばこの東京都は確実に沈むだろうな。

「そこにいた二人も向かったようだぞ。残りはお前だけだアラヤ。さっさと向かったらどうなんだ」

 俺にだってやるべきことはある。ここで油を売っているわけにはいかないのだ。

 アラヤは舌打ちをし、皆が向かっている方向にバイクで走っていった。

「さて、我々の脅威になり得る存在が誕生したが、お前はどう読む?カオス」

 虚空に向かって俺は問うた。

『さあな。だが、少なくとも今の段階ではボクの敵じゃない。ほうっておいても大丈夫だろうよ」

 虚空から、身体が異常なまでに白く、しかし眼や髪などは対照的に真っ黒な青年が時空を歪めて現れた。

 彼の名はカオス・ノルン・クロノス。とある事情から明智と手を組んでいる青年。

「だが、あそこにはまだ開花してはいないものの、オリジナルの力を持った者もいる。そのうち世界の全勢力を以ってしても抑えることができなくなると俺は思うが?」

「馬鹿を言うなよ。ボクがいるんだ怯えることはない。それに()()()()()()()()()()()()()()()。やられることはない」

「くっははは―――――」

 その言葉を聞いた俺は腹の底から湧き出る笑いを抑えることができなかった。

「何が可笑しいんだ」

 カオスは彼が出てきた時のように時空を歪め、そこから出した大鎌の刃を俺の首に掛けた。

「おっと、お前じゃ俺を殺せないことは分かってんだろ?やめとけ。お前を笑ったのは頼もしいと思ったからだよ」

「嘘()けよ。あんたは他人(ひと)を頼もしいとなんか一度たりとも思った事ないだろ」

 俺は無言を返した。ま、その通りだな。他人(たにん)なんぞ利用するためだけの道具に過ぎん。

「お前は精々俺に見限られんようにするんだな」

「ボクを野に放ったらどうなるかわかってるでしょ。あんたはボクを捨てることはできない』

 カオスは歪みの中に入り、俺の前から姿を消した。

「さて…。これは少し面倒なことになったかもしれんな…。麻尋(まひろ)…どうせお前が蒔いた種なんだろ。あれ以上成長しちゃ手に負えなくなるやもしれねぇぞ」

 俺は車に乗り込み、走らせながらそう呟いた。

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