統合蘇生
「戦闘…集団…?」
「そうだ。理解しやすくするために、少し昔の話をしようか」
と、アラヤは言った。
思ったより優しそうだな。
50年前、人類にとある異変が起きた。死者の復活だ。私達のように別の肉体に別の人間の精神が侵入するという事象が多数起きた。人はそれを『統合蘇生 -Integrated resuscitation-』と呼んだ。
統合蘇生に遭った人間を調べていると、蘇生した人物のほとんどに特殊な力があることが判明した。特殊な力と言ってもそれは人それぞれだから個人を調べてみないとどんなものなのか分からないんだが、今はその話は置いておこう。で、まあ特殊な力っていうのは大まかに分けて3つあるんだ。『強化系』『魔術系』それから『天災系』だ。私達はそれらを駆使して戦っている。
「なんでそんな戦闘に特化したような能力だけなんだ…?もっと生活に必要なモノとか色々あるだろ」
俺は思った疑問を口にした。
「まあ、その辺については俺達にも分かってないんだ。およそ、神がそのようにしたのだろうとは思っているけどね」
信薙が俺の質問に対して回答した。
神、か…。俺が会ったってことはこいつらも多分会ったんだよな。まあそれだったらない話では無いか。
「話を続けるぞ」
アラヤが組んだ腕を人差し指で叩きながら言った。せっかちかよ。
これからともに戦っていくことになるだろうから伝えておくと、私とシゲヤスは『強化系』、ノブナギは『魔術系』、そしてミカエラは『天災系』だ。お前が何になるかは知らん。検査してみないことには判明しないからな。私としては強力な『天災系』であると喜ばしいんだがな。
ま、それはさておき、その統合蘇生された人間は最初に発生して以来、全世界で1年に50人ペースで発生している。全員生きているとするならば、およそ2,500人だな。だが、特殊能力を持っていなかったり、戦闘員になることを望まないで元の生活に戻って行った者がいるから、戦闘員として協会に登録されているのは1,056人だ。日本支部には200人程度が登録されている。いま東京にいるのは70人くらいだったか?日本では戦闘員は東京、大阪、福岡、札幌に散らばっているということくらいは把握いておいてくれ。
各地方の主要都市か…。そうしていたほうが戦いやすいのかもな。
「何か言い漏らしはあるか?」
「いや、無いと思うよ」
「…わたしたちが…戦ってるのを…教えといたほうがいい…かも…」
ミカエラはむくりと起き上がるとそれだけを言ってまたソファに倒れこんだ。
「あーそうか…。入会してからあれ見て絶望されちゃあ困るよなぁ…。召集がかかっていないし、そこら中にいるわけでもないしな…。一応この周辺1kmを探知を掛けてみるよ」
重保はパソコンを操作し始めると、壁中にさまざまな情報のようなものが表示された。
「いた。…通常型2体か。変異種じゃなくて助かった。これなら龍華ちゃんが近くで見ていても安全だ」
変異種…2体…?人間じゃないのか…?なら、かの有名な巨人と戦うのか…?いやでも空飛ぶ道具を身につけているようには見えないし…。
「行こうか。目標は『東京都北区の南部地区』にいる。イヴは…置いてっても大丈夫かな。念のため、置手紙くらいはして行こう。シゲ、許可は下りた?」
信薙が壁に大きく表示された四角い光を見ながらそう言った。
「ああ、下りたよ!」
「じゃあ行くぞ」
ミカエラ以外の3人が黒い手袋を手にはめ、部屋から退出した。