6 歳月
今回は恵美視点です
私は村山恵美、仕事は報道関係に勤めていて趣味は特に無し。彼氏は女の秘密と言うことで。
唐突だけど私には凄い力がある。いわゆる霊視ってやつだ。霊視の仕組みはよく分かんないけど視えないやつもあるらしい。
これが出来るようになったのは子供の頃だからこの煩わしさとももう20年位の付き合いになる。
私は麗人神社という神社の近くで生まれ育った。神社はとっても馴染み深い所で私はここでずっと遊んでいた。遊び相手はいつも決まったメンバー、あたしを含め女子3人と男子1人。
あだ名もまだ覚えてて、あたしはエミちゃん。男の子はシゲ君、女の子はヒメちゃんとゼンちゃん。
この子達と色々して遊ぶのが楽しかったんだけどある時お父さんが神社に迎えに来た時に言われた言葉が忘れられない。
お父さんは私を迎えに来て神社を出た後に私に言った。
「恵美は1人で何してたの?」
私は4人でいつも遊んでいる、と主張をするとお父さんはそれ以降何も聞かなかった。小学校高学年になって友達がたくさん出来て神社では遊ばなくなった頃に初めて麗人の伝説を聞いた。
その時私は直感的に、
―あの子達はいなかったんだ……
って思った。
そっからしばらく忙しかったから麗人には行かないまま歳月だけが過ぎて気づけば就職。
今の会社は好きだし凄い気に入ってる。同期の人は少なくて大変だけど何とかやって行ける自信はあった。席が隣になった同期の神藤二君は仕事熱心で真面目で課長も部長も褒めていた。最近の子にしては粘り強さがある、とかなんとか。私の事じゃないけど同期の人が褒められて何となくいい気分だった。
そうして時間はどんどん過ぎていった。仕事にも慣れ後輩も出来て今度は教える立場になった。神藤君もより忙しそうにしてたけど一生懸命に教えて、さらに自分の仕事もこなしていた。―それだけで終わるはずだった。
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入社から6年経った。冬も少しずつ終わりを告げ枯れた木々は葉をつけ始める。暖かさもだんだんと増してきて出社の時の手袋と耳あても必要無くなってきた頃の事。今年も後輩が入ってきた。何人かは覚えて無いけど例年より少し多めに入ってきて課長も部長も喜んでいた。
私も初々しい新人達が入ってくるのを見ると
―またこの季節が始まったかぁ
みたいなしみじみとした気分になる。また1つ歳を重ねて更に大人になる。もういい歳だしそろそろ違うこともしたい気分にもなった。
珍しく部長が「歓迎会を開こう」という提案をした。ここ何年かは全く開いていなかったのだが入社人数が多かったという事もあったのか舞い上がっていた。
会社の近くで比較的家にも近かったから助かったが歓迎会は夜遅くまで開かれた。お開きの時間になり各々が帰路に着いた時、私は神藤君と同じ方向だった。
「神藤君はお家がこっちのほうなの?」
「うん……そうなんだよぉ……」
「ちょっと神藤君!飲み過ぎだよ!」
神藤君がヘロヘロになっていた。真面目だからなのか部長や課長に勧められるがまま酒を飲まされていたらしい。
「麗人神社、近道だから通ろうよ」
私の家の近道という事と久しぶりに神社を見てみたい気分になり人気の無い道に入る。神社の近くは大きな池になっていてよく見たものだ、と大人になった私は見ていた。
その時だった。
「エーミちゃ〜ん!」
神藤君が抱きついてきた。真面目な人にはそれなりの裏もあるらしい。
「きゃっ……神藤君やめて!!」
「や〜だ〜……へへ……」
あまりにも強引で離れたくても離れられない。何とかしないと……
「キスしよ……ねぇエミちゃん……」
「やめて……よっ!」
おふざけが過ぎている。いくらなんでも許せない。私の頭に血が登った。
―池に落とせばいいんだよ
―そうだよ、落とせばいいの……
聞こえた声、脳裏にある声。この声は……そう。
―早くしないと
―早く落としなよ
思い出したい。思い出せない。この声は……子供の声は……
「え〜み〜ちゃ〜ん!」
一度は離れた神藤君がまたこちらに来た。
私にはもう考える頭が残っていなかった。
次回か次々回が最終回の予定です……




