4 麗人
屋上に上がってきた俺たち。
「何してたの?」
「んーと、麗人神社の事件に取材行こうかなって。あれさ、俺の担当だったから」
「そんなになっても仕事熱心なんだね」
「そうかもね」
俺はいつもの様に手すりに掴まり外を見る。缶コーヒーが無いから左手は寂しいがその分までしっかりと手すりを握る。
「麗人神社って……変死体のやつ?噂だと死体の幽霊が出てくる、みたいなやつだっけ?」
「そうそう!幽霊なんてある訳ないのにな!」
「そうかしらね……」
そう言って俺を見るエミちゃん。あ、よく考えたら俺の事やん。
「麗人神社ってどんなところか知ってる?」
「いーや、まだなんも調べてないや」
「あたしね、子供の頃あの辺に住んでたからよくお母さんとか聞いてたんだ〜」
「麗人神社の話?」
「そう。あそこには伝説が1つあるの。めちゃくちゃ昔にここら一体が山だった時ね、山で仕事している人が何人も消息不明になった時にそれを山の祟りとして住民は怖がった。そこでそれを鎮める為に子供を山に放り込んだ、って話」
「……何それ、怖いな。子供は放置なの……?」
「うん、だって子供は生贄としてだからね。でもその話には続きがあるの」
うわ、まだあんのかよと内心怖がる。
「山の祟りは無くなったけど変わりに子供の霊がよく見えるようになっちゃったの。それも村人は怖いから申し訳ない事をしたっていう気持ちも込めて子供を供養する寺を建てたの」
「それが今の麗人神社?」
それが麗人だよ、と教えてくれる。いいネタを教えて貰った。そんな伝説の近くで変死体が発見。これは色んな記事が書けそうだ。
「エミちゃん、ありがと」
どういたしまして、と恵美が返す。
「じゃ、俺ちょっと行ってみるわ」
「麗人?」
「うん」
じゃあね、と手を振って階段を下っていく。30階から降りるのはかなりキツそうだなぁ。ま、でも凄く良い記事が書けそうだ。エミちゃんから聞いた話も取り入れてみたいし……。どうやって繋げるかが問題だよなぁ。
取り敢えず麗人に行ってみるか。時間はかかるけど歩きだな。
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「いいの?」
「何が?」
屋上で少しイラだった声が聞こえた
「ずっと影から見てたけどさ、本当の事教えてあげないの?」
「ずっとあの人は真面目なの。さっきも……あの時も。それにあんただって面白そうにしてたじゃない」
「そうかもね〜」
クスクスと笑う声は意地悪く。まさに子供のイタズラをしているかの如く。
「でもビルから落とすなんて……酷い事するね」
「そう?前にえみがやったのと変わらないと思うけど」
「……」
口を噤む。反論のしようがないのかそのまま沈黙してしまう。
「ま、あたしはえみの言う通りにするだけだからね〜」
そういうとそれ以降童女の声は聞こえなくなった。もし今の光景を見ている人がいたとすればきっと変に思ったに違いない。
1人の女性が屋上に来たと思ったら独りでに喋りだしたのだから。




