“ほこり”と呼ばれた伝説
理不尽を打ち砕く。
実際に強い部隊を造ったらあまりにも強すぎて大陸最強となっていた。
王国第一近衛騎兵連隊。
それが最強と呼ばれる所以は騎馬の突撃の威力もあるが、指揮する王の存在が大きい。
アブトマット・ヒューリング三世。通称“武力王”と呼ばれる。
この時代は王国の権威が強かった。
だから、他の国々はその軍事力の前に屈していた。
ただ一国。我が主以外を除いては……。
「ダスト! ダストはどこ!?」
「わ、私は存じ上げません!」
「全くッ! 妾を置いてどこに行っておるのじゃ!」
我が主、ヒスリーネ・ポーミリア女王。
私は半ば無理矢理仕えさせられた経緯があるが、付き合ってみるとなかなか見どころの多い人物だった。
とりあえず、隠れていても意味が無いか。
「ここにおりますよ。主様」
「なんじゃ。そこにおったのか。妾の部屋に行くぞ!」
「はい」
これが、私の日常。
主様の政治軍事の相談事はすべて聞いて助言をしていくという仕事をしています。
今や、この国の重鎮になってしまいましたが、これはこれで面白いものでして。
「そう言えば! また王国より催促が来たのじゃ」
「あらあら、またですか」
「そうなのじゃ……今回はちょっとしつこくての~」
王国の使者は毎度のことながらあの武力王に嫁げと言いに来ている。
主様にその気があれば付いて行くが、毛頭ない様子。
だったら断るしかないのだ。
「私が会いましょうか?」
「いや、ダストが出会うまでもなく、答えは決まっておるのじゃ」
「そうですか。わかりました。下手に首は突っ込まないことにしましょう」
ああ、言い忘れていましたが。
ダストと呼ばれているのは、埃をかぶっていたからという理由らしいのです。
名前は元々なかったのですから。
そうしているうちに、主様の部屋についてしまいましたね。
「でじゃ! 王国の軍事力と戦争になったときじゃが……」
「歩兵の数、騎兵、弓兵、各種兵器類が未だに準備の途中です。整うまでにはあとひと月ほどかかります」
「ううーむ。そこを少し早められんかの?」
「人も兵器もポンポンと出てくるものではありません。じっくり準備して理不尽を打ち破るのです」
「準備というと砦はどうなっておるのじゃ?」
「砦はほぼ完成していますね。あとは例の仕掛けも」
「なんじゃ、そこまで準備出来ておるのか。でも、あとひと月は長くないか?」
「長いことはございません。その証拠に王国は使者のみ使わして国境周辺の王国軍の配備は警備隊程度、他の国に囲まれている立地上の弱点があります。我が国にはいい条件です。活用しないわけありません」
「そうじゃのう」
本当に条件としては我が国に利をもたらす勢力図となっている。
王国の周りには我が国よりも脅威となる国だらけで、我が国のような小国で関係が薄い国は外交政策で落とすのが一番ということ。
でも、逆に主様が大陸統一者になっても面白いというもの。
統一のために私はあらゆる手を講じていくつもりだ。
このひと月後、小国はや王国軍最強の騎兵を正面から堂々と打ち破ることになる。
ここに天下の軍が誕生する。
これが“ほこり”の伝説である。