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黒いゆりかご
気になることがあった。もちろんレベルのこともだが、この体に伝う黒い光のことだ。前のトカゲの時もそうだが、どうやら僕はこいつのおかげで生き延びられているらしい。
僕はしばらくこの暗闇を歩いてみた。
明かりはなく、空もなく、ただ獲物を求めた獣たちが行き交う闇が続く。
黒い光は、僕以外には冒涜的だった。
僕が生き物に触れると、光はそれを蝕み、殺す。
最初にトカゲが死んだのも、僕が奴の攻撃を避けた時、背中と奴の顎が掠めたせいだろう。
よく分からないなりに、スキルの扱いも板についてきた。
相手に触るだけで殺せるのだから楽なものだが、それでも相手が死ぬ前に致命傷を負ってしまっては世話がない。
始めは【緊急回避】に頼っていたが、【受け流し】を試してみると、これが思いの外便利だった。なにしろ一回敵の攻撃をいなせばそれで終わりなのだ。
細々と死体の血を啜り、肉を齧って進む日々が続いた。光のおかげで食べ物には困らなかった。
ただ、生き物の温かみには飢えていた。