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そして僕は死者を抱く  作者: 貧弱眼鏡
18/19

ままならぬ人形

「待て!」

海里が手をかざすのを気にもとめず、ニーズヘッグは目の前の肉に食らいついた。

「“待て”だって言ってるのに」


やっぱりだめかな。ある程度の知能があるなら、躾とかできるかもと思ったんだけど。

ニーズヘッグはバリバリと肉をたいらげると、今度は海里に口を開けて迫った。

「おすわり!」

体が傷つかない程度に、奴の頭を地面に叩きつける。まったく、僕と繋がっている限り僕には逆らえないとなぜ理解できないんだ。


この間モンスターを倒した時、血や肉が口に入っていたらしく、ニーズヘッグはまた魔力不十分で動き出した。

イレーヌさんのことがあったので、こいつにも知性があるのではと思ったのだけれど、やはりモンスターはモンスターだ。そもそも脳がこちらの言葉を理解するよう作られていない。


(しつけ)るには、動物に芸を教えるのと同じように(あめ)(むち)――――こいつに飴を与えると際限がないので基本鞭だが――――体に教え込むしかない。

でも、こいつは何度やっても聞かないのだから困ったものだ。

「やっぱりある程度腹一杯にしなきゃだめなのかな」

「ダメナノカナー」

唸る僕を真似るように、イレーヌさんは首を捻った。


こっちはこっちで、相変わらず自分から言葉を話すことはしない。

一度死んだからなのかは分からないが、彼女の精神は赤子のように幼くなっている。そもそも精神や意識などというものが有るのかすらも疑わしいが、無いと言い切ってしまうと僕の心が辛い。


「オガタさん! 私は元気ですよ!」

彼女の体を操作して声を出してみると、余計な空しさが喉の奥で膨らんだ。

「おままごとの方がマシだね……」

苦い気持ちを飲み込んで、また息をはく。


空は青くて、どこまでも続いていた。

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