第34話「新宿の墓標」
新宿モノリス……ゲートと旧都庁に挟まれ、数カ月前に奪還が完了したばかりのこのメタルブラック一色に染まった巨大な建物に、シグの言う上位存在FG‐01 09/G 教導兵器・機構戦女神九号機、通称Iが眠っているという。
■伍行》分隊員『にわかには信じられんな。まだ奪還したてとはいえ、既に何度も調査している。そんな物があるならとっくに気がつく筈だが』
伍行の言う通り新宿モノリスは整備こそ終わってないが、既に人の手が入っているので征服種どころか草一本残っておらず、がらんどうの建物はひとまず倉庫として使っている程だ。
『フレイヤギアは最終手段ですので、モノリスの奥の奥に厳重に封印されているのです』
■青島》分隊員『えーっと、どうもモノリスの奥深くに隠してあるらしいっす』
青島と共に新宿モノリスへ向かっているのは、伍行とその直属の分隊員達である。
σの脱走後、最初に現場にかけつけたのがこの伍行分隊だったのだが、事情を聞いた伍行は上層部に報告している間に取り返しがつかなくなると判断して、青島を連れ半ば強引にゲートを出発したのだ。
以前の青島ならば、ここで何も考えず言われた通りモノリスに向かっていただろう。しかしそれではいけないと決めた青島は、モノリスに向かう僅かな間でも何故伍行がそう判断したのか考えていた。
事は一刻を争うというのも本当に理由の一つだろう。というのも、機構戦乙女のさらに上位存在にあたる機構戦女神九号機Iが有する機能は、機構戦乙女とデブリの思考制御なのだそうだ。
つまり、もしσがIの復活に成功した場合、μが敵になってしまうどころか、そもそもクレイドルやゲートに住む全てのデブリは反抗すら出来ず、ヴァルハラ計画に従事することとなる。
他にも思い当たる事がある。仮に時間に余裕があったとして、事情を説明してもっと大勢で挑んだところで、結局σに対抗出来るのは青島のみだからだ。
μの見立てでは、精鋭揃いの伍行分隊でさえσが相手では勝負にすらならないらしい。だから伍行は自身を信頼してくれている者だけを連れて、即刻ゲートを出発したのだろう。
■青島〉伍行『と、思うんですが……あってますか?』
■伍行〉青島『まぁ……大体そんなところだ』
伍行には感謝してもし尽くせない。一度は思考を放棄して、ただの兵器になり果てようとしていた青島の言を信じ、こうして共に命を賭けて戦場に赴いてくれるのだから。
■伍行》分隊員『着いたか、おそらく二十三号機はこちらの動きに気がついているだろう。作戦の失敗は我々の死だけでは済まない。各員、兵士の務めを果たせ』
全隊員が迷いなく『了解』と返信する。それを見た青島は、先行してσの反応があるモノリスの奥上へと向かうのであった。




