第20話「遺跡泥棒」
翌週の早朝、伍行以下数名の奪還者がゲートを目指し森を歩いていた。
先月と違い青島の口は重く、無駄話もせず黙って隊列に続く。
軽口を叩く気分じゃなかったというのは勿論だが、今青島は隊列の中央に配置されている……周りを固めているのは、全て青島の護衛だからだ。護衛と言ってもその実は、ほとんど監視のようなものである。
強大な力を持ちつつも、上層部の意向に沿わないμを手懐けている青島を、周囲がどれだけ警戒しているのかが窺えるというものだ。
μも何も言わず、青島の近くをふわふわと追従していた。
今回の奪還はμにとっても深い意味合いを持つ以上、何か思うところがあるのだろう。
μの話が確かならば、VG‐04 23/G 対光子生物兵器・ヴァルキリーギア対地銃撃型二十三号機。通称、σ……μの姉妹機が旧都庁に眠っているらしいのだ。
ゲートへ着くと休む間もなく、先遣隊と合流する為に一行は旧都庁へと向かう。予定では、既に遺跡泥棒たちを追いつめている頃合いの筈である。
■伍行》分隊員『先遣隊から連絡が来た。丁度こっちに追い詰めているらしい。今から指示するポイントに散らばって、待ち構えて挟み打ちにするぞ』
伍行の通信と共に、視覚モニターに座標データが映し出される。それによると、青島と受け持ちが一緒なのは、案の定護衛兼監視を任されている奪還者のようだ。
青島はうんざりしつつも、大人しく指示通り指定された瓦礫の影に足を運ぶ。
しかしいざ指示されたポイントに着くも、崩れた遺跡の影は存外狭く、巨大なフォトンブレード・翼刃を背中に背負っている青島一人隠れるのに精一杯のようだ。
仕方ないとばかりに、監視の男はどこか別の場所へ隠れに行く。
もしかしたら伍行が気を利かせてくれたのだろうかと感謝しつつ、ようやく一人になれたと青島はどっと息を吐くのであった。
勿論μは相変わらず、青島のすぐ隣をふわふわと浮いている。それどころか、
『隣の遺跡の上階へ登ったようですね。隠れてこちらを監視しているつもりでしょうが、私を出し抜けると思ったら大間違いです』
上層部から派遣されたのであろう監視員は、指揮系統が違うのか伍行分隊には味方識別信号が知らされていない。
故に向こうにはこちらの情報が筒抜けなのに対して、こちらは向こうの詳細も位置も分からないのだが……ガイドビーコンで監視者を容易に映しだすμの仕草が、テストで百点を取った子供が得意気に胸を張るのとそっくりだったので、青島はついつい頬を緩ませた。
コクーンタワーの奪還と並行して、小まめにこちらも地盤を固めていたので、この辺りの木々はほとんど伐採し尽くされている。フォトンチッド対策というのもあるが、遺跡泥棒が罠をカモフラージュするのを防ぐという意味合いが強い。
浮き彫りにされた遺跡は今となってはどれも廃墟同然だが、やがてここもクレイドルのように活気のある街になっていくのだろうかと、青島はぼんやり考えていた。
青島の目の前を小型の虫が通りかかる。害のない虫のようなので、じっとみているとこれも中々興味深い。
黒沼がいればどんな生態なのかすぐ聞くところであるが、今はそばにいないのでデータベースにアクセスして、該当するページを探していると伍行からの通信が届いたので、青島は作業を中断してそちらに耳を傾けるのだった。




