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斬機走甲/´スラッシュダッシュ  作者: 石川湊
三章/極光´虚無
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第18話「空閃」

  この一カ月間、クレイドル内で半ば軟禁状態だったので青島と、勿論μ(ミユ)も一刻も早くゲートへ戻り戦場に向かいたがっていた。

 戦場にのみ自分の価値を見出す二人は、ある意味兵器としてもっとも模範的な態度なのかもしれないが、今は青島にその自覚はない。

 隊長クラスならともかく、奪還者(リテイカー)は基本的に一部屋に四人押し込められ、ゲートは勿論クレイドルであっても、寄宿舎とは単に寝るためだけの施設である。

 しかし青島には特別に個室が与えられていた。

 他の隊員がいるとμ(ミユ)の機嫌が損なわれるという理由もあったが、部屋に関してはもう一つの方が主な理由である。

 壁に立てかけられているのは、巨大な翼のような双剣。

 翔竜剣(ドレイクスラッシャー)と呼ばれるμ(ミユ)の固有武器の内の一つ、翼刃(セイバー)を置くスペースがなかったのだ。

 本来ならば、医療キッドや携帯食糧をはじめあらゆる武器は一旦光子化し、パワードスーツにつけられたバックパックに貯蔵しておくのが奪還者(リテイカー)の常である。

 しかし高圧縮フォトンブレードや、超小型とはいえ大出力フォトンブースターを内蔵した翼刃(セイバー)は、それだけでバックパックの容量を使いきるどころか、全く足りていないのだ。

 そうなるとコクーンタワーにある、μ(ミユ)の本体が眠る部屋から一々転送し直さなければならないのだが、それにも膨大な時間がかかる為、結局常に持ち歩かなければならなくなったという訳である。


蹴爪(ラプター)は足に収納出来るからまだマシだけど……ま、言ってもしょうがないか。そういえばさ、この翼刃(セイバー)で気になったことがあるんだけど」


 部屋に戻った青島は、翼刃(セイバー)の柄を眺めながらμ(ミユ)に問いかける。


翼刃(セイバー)って、もしかしてくっつけられたりするのか?」


『流石タツヤは目ざといですね。たしかに翼刃(セイバー)は連結することで、内蔵されたジェネレーターの出力を、乗倍に増加する機能を持っています』


 μ(ミユ)が指をパチンと鳴らすと、青島が装着しているヘッドギアの視覚モニターに空閃(スカイレイ)というタイトルのファイルが表示された。開いてみると、翼刃(セイバー)を連結する様子を映した動画の様だ。

 いつのまにこんな映像を作っていたのかと呆れるのと同時に、μ(ミユ)のきめ細かいサービスに感心する青島なのであった。


「なんだ、そんな便利なものがあるなら、どうして先月教えてくれなかったんだ?」


 μ(ミユ)の答えを待つ青島は、ふと動画がまだ終わっていない事に気付く。よくよく考えてみれば、まだ空閃(スカイレイ)という単語の意味が分からないままだ。

 急速回転する翼刃(セイバー)を両手にもった映像内の兵士の両腕は、よく見るとなにか水飛沫を放っているではないか。


「なんだこれ……血?」


 次の瞬間、兵士の両腕は真っ赤な血の噴水を撒き散らしながら弾け飛んだ。


「なっ……!!」


 残った手だけをこびりつけながら、どこかへ飛んで行ってしまった「翼刃(セイバー)を最後に映像は終了した。


『ご覧の通り、タツヤ達のパワードスーツでは耐久力が足りません。私の腕を移植すれば可能ですが……どうしますか?』


 戦時では大活躍出来るμ(ミユ)の両足だが、平時ではむしろ苦労の方が多い。

 あまりの重量にエレベーターには乗れず、毎度外さなければベッドで寝ることも出来ない。そもそもこれ以上、自分が人間離れしていくことに抵抗を感じない筈がない。

 μ(ミユ)の問いかけに、青島はただ黙って首を横に振るのであった。

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