防衛目標、私
はい、こんにちは。
ユミです。
今は戦場という物騒な場所から遠く離れて、安全な高台の上にある一戸建ての家にいるんです。
インク・サプライさんとリンネ・ラグさんは買い出しに行きました。
ラムラ・ラグさんはユミたちに何をさせる気でしょうか。
周りに住宅が密集してやすが。なーに、ラムラさんが蹴散らしてくれるでしょう。
おっといけません。
惑星チーズに来てから、私たちは歓迎されない身分でありやした。
何事も穏便に、サダコさんが隣の椅子で寝ていますから。
「子ザルさんを起こさないようにね」
「うーん」
「むにゃむにゃ」
「サダコは子ザルじゃありません・・・」
「起きてるんだか寝てるんだかわからないガキンチョですね」
パシッ!パシッ!
「はっ!」
「痛いですう!」
「ブチましたね?」
「はい」
「ユミを一人残して黄泉の世界へ旅立った罰です」
「ユミさん」
「サダコは怖いです」
「軍と呼ばれる迷惑な人たちを懲らしめるのでしょう?」
「身の危険を感じます」
サダコさんは揺れる椅子、ロッキングチェアに座っています。
うわ!泣き出した!
ユミは思わずサダコさんを抱きしめてしまいました。
ふわ
窓から陽の光が差し込む。光が二人を包み込み、埃の粉を浮き上がらせる。
ほんのひと時の安らぎ。眩しい。
「大丈夫、子ザルさん」
「ユミが全部守ります」
「ひっどいですう!!」
「サダコは子ザルじゃありません!」
「プンスカプンスカ!」
「あはははは」
「相変わらず仲がいいですね」
「よくない!!」
サダコさんとハモってしまいました。恥ずかしいでやんす。
にしても、ラムラさんはよく笑いますね。
「悲しいから笑うんですよ」
「知らないんですか?」
「ラムラさんがどんな目にあったのか」
「当ててあげましょう」
「こーんな目にあってあーんな目にあって」
「恥ずかしめを受けたんですね?」
「ユミさんは想像力がたくましいですね」
「いいお笑い芸人になれますよ?」
バン!!
「大変だ!」
インクさんが血相を変えて帰ってきました。
リンネさんも険しい顔をしてます。
ボタボタと持っていたリュックや紙袋をその場に落として。すぐに玄関を閉めます。
「憲兵だ!」
「隣の通りに来てるぞ」
「鍵をかけろ」
あ、そうそう。ユミとサダコさんは、前回の軍との一戦で制服がボロボロになっちゃったから。
ラムラさんに変えの衣服を支給してもらいました。
これはなんだか、ウーム・・・
グレーのセパレーツの作業着ですねこれは。
あ、もち下着も変えましたよ。臭かったからね。
なんでこんなこと言わせるんですか!
小窓から外をうかがうインクさん。
「隠れて!」
サダコさんが叫んだ。
「もう嫌だあ!!」
「おうちに帰りたいよお!!」
「もがもがもが!」
慌てて子ザルさんの口をふさぐ。
「気づかれた!」
「こっちに来るぞ」
チャイムが鳴る。
ユミとサダコさんがリビングの奥に隠れる。
緊張が走る!
ユミはまだサダコさんの口をふさいでいます。
「もごもご!」
「ふーふー!」
「はい?」
「どちら様でしょうか?」
「軍のものだ」
「ここらへんで怪しい女連れを見なかったか?」
「若い女二人だ」
「さあ?」
「知りませんね~」
インクさんが芝居する。
鍵を開けたとたんに軍人が三人入り込んできた。
「調べさせてもらう!」
ラムラさんとリンネさんに促されて裏口から逃げる私たち。
「居たぞ!」
「裏口だ!」
バタバタバタ!
スニーカーシューズを踏みしめながら一目散に逃げる!
住宅街の細い路地を通り抜ける。
雑草や樹木の枝に引っかかって服が破れだした。
「発見次第拘束せよとの命令だ」
「射殺の許可も出ている!」
パパパパッパパパパン!!
ユミの後頭部に弾が当たった。
瞬間、場が叫んで赤い半円球が出来る。ユミの周りを覆いつくす。
「あれが悪魔のフィールドか!」
「本部に連絡」
「サダコはもう嫌だよー!!」
「ユミだって嫌です!!」
「はあはあはあっ」
広場に出た。追っ手は?
ヒュン!!
ズドーーーン!!!
ミサイル?
バカな、こんな大それた兵器を使うなんて!
巡航ミサイル、爆発で住宅街は破壊され、ユミたちは吹き飛ばされる。
「あーーん!」
「またお洋服がボロボロだよー」
「あ」
「女神様!」
サダコさんが意味不明なことを言った。
「なにコいてんのですか」
「女神様なんてどこにも・・・」
サダコさんの後ろでユミは見ました。
虹色に光る光輪の中にいる白い肌の女性。
卵型の顔に太い眉毛、青い瞳に金髪の長い髪。
純白のワンピースに背中に真っ白な羽が生えている・・・
両手を広げて。
「さあ」
「あなたたちがいた世界へお帰りなさい」
「ここは本来の世界ではありません」
「女神様あ♡」
ユミは一目で本物の女神と認識したでやんす。
「あ、鳥さん」
「クルルㇽ」
ユミがザルに乗せていた行方不明になっていた海鳥さんが。
バサバサバサ!
もう怪我が治ったみたい、元気に飛び、ユミの肩の上にとまります。
ユミのほっぺにスリスリしてます。
「いいですか?ユミさん、サダコさん」
「ラムラという方の口車に乗ってはいけません」
「最後は核戦争になってしまいますよ?」
「かくせんそう?なんですかそれは?」
サダコさんが訪ねる。
「結局あなたたちは利用されているだけなんです」
「悪意を持った人たちを懲らしめるために」
「幸せだった世界へ帰りますよ?」
「さあ」
「私の胸の中に!」
「え?」
「地球へ帰れるの?」
ユミは嬉しさのあまり、涙声になりました。
パアア!
光が眩しくて目を閉じる。
遠くでラムラさんたちが観測している。あの人たちがユミを利用しているなんて。
カギ職人になるのは嘘だったのですね。
ユミとサダコさんは光に包まれる。
廃墟と化した住宅街の中で、光が拡散してゆく。
「今度は私があなたたちのお目付け役です」
「よろしくう♡」
そう言って女神様は次元ゲートをくぐる。背中の翼を広げて羽ばたき、ユミたちを両手に抱えながら。
宇宙空間を旅しながら、女神様が言います。
「地球はもう戦争を捨てました」
「あなたたちがキーだと言うのは、地球でも同じですよ」
何十年のようで一瞬の時間のようで、わずかな感覚をおいて学校前の海岸の岸壁に降り立ちました。
「はっ」
「ここは学校前の階段通りの岸壁」
「今日は波がしけっていて臭いでやんす」
今気が付いたのですが、ユミたちは衣服がボロボロで、ほとんど全裸の状態です。
「さあ」
「自分の家へお帰りなさい」
「今はまだ時間が動いていませんから」
「あなたたちの恥ずかしい姿は誰にも見られませんよ」
「女神様あ♡」
サダコさんが抱きつきました。
ユミも抱きつく。
「女神様、ずっとユミのそばにいてくれますか?」
「ええ」
「そのためにあなたたちを保護したんですから」
「女神は天使たちを防衛します!」
「大昔からね」
次の日、学校に登校しましたが。
現地時間はあの迷惑道具博物館の遠足の次の日らしく、ユミたちが体験した惑星チーズの時間はどうなったのでしょう?
ラムラ・ラグさんは何も知らないと言ってました。
「ああ、でも」
「私は多次元に同時存在できるのは本当ですよ」
「なんだか怪しいですね」
「ここに変なもの隠してるでしょう!!」
バ!
「きゃあ!」
「なにすんですか!」
ラムラさんのスカートをめくってパンツ丸見えにしてやりやした。サダコさんがピースサインを出してます。ラムラさんの顔が真っ赤です。
男子達の視線がクギ付けです。いい気味ですね。
あ、海鳥さんですが、ユミの左肩に乗ってます。ユミを主人と認めてくれたみたいですね。
「はーい」
「皆さん席についてえ」
先生様のお時間です。
「今日は新しいお友達を紹介します」
先生様の隣できれいな女の子が立ってます。
「おお!」
男子どもが目の色変えてます。
「ああ!!」
ユミとサダコさんが同時に声をあげました。
ブレザー着てるその子は間違いなく女神様です。
「女神様あ!!」
「女神様、羽はどうしたんですか?」
「ああ、あれね」
「あれは自由にしまえるの」
チョークで黒板に名前を書きます。
カッカッ
「サユリ・ノーマンです」
「お見知りおきを♡」
女神様がウインクしました。
男子たちの歓声が聴こえます。
第一部終わり。
2019.3.23




