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名探偵・藤崎誠シリーズ  ジュリア編

カジノ誘致作戦

作者: さきら天悟

ん~、藤崎は腕を組み、椅子の背に身を預けて小さく唸った。

名探偵と言われる藤崎誠でも難題のようだ。

これまで数々の殺人事件?いや事件、

じゃなくてトラブルや頼まれごとを解決してきた。

その武器となるものは物事の本質を推理する頭脳だが、

キャリア官僚時代の人脈もその一つだ。


さて今回はジュリアからだった。

依頼ではなく、相談だ。

だから、無報酬。

それでも、嬉しかった。頼られて。

藤崎はジュリアに惚れていた。

女性的にもそうだが、特に人間的にも。

彼女は30歳で起業に成功すると、

祖父の住む新潟で地域活性化の貢献がしたいと語った。

真剣な目で藤崎を見つめて。

そんな彼女の期待に応え、藤崎はいくつかの企画を提示し、

それらをジュリアは見事な手腕で軌道にのせたのだった。



今度はなんと・・・

「カジノを誘致したいの」と彼女は言った。

2016年カジノ法案は成立した。

東京、大阪、沖縄、愛知などが手を上げている。

新潟に誘致するのは至難の業・・・


ふ~、と藤崎はため息をつく。

腕を組んだままブツブツ呟いた。

「カジノなんて・・・」

「・・・愚かな・・・」

「・・・あきれるな」

藤崎は苛立っていた。

そもそもカジノを新潟に誘致するなんて不可能・・・

とは微塵も思わなかった。

藤崎の苛立ちは政治家や官僚それにカジノに参加したいという企業に向けてだった

ギャンブル依存症なんてどうでもいい。いや良くはないが。

経済の起爆剤となると掲げる奴らに腹が立つのだ。

藤崎は思う。

もっと他に案があるだろう。

カジノに行き着くのは無能の証拠だ。

それに外国資本を使い、ラスベガスのようにするという。

それなら利益が外国に流れるだけだろう、と言いたい藤崎だった。


とは言ってもジュリアの頼み事である。

藤崎はメールを打つ。

最後にいつもの文句を添えて。

『名探偵にお任せあれ』





1年後、驚愕のニュースが日本中を駆け巡った。

新潟が大阪を押しのけ、カジノの誘致に成功したのだ。

それは日本らしいカジノだった。

日本のテクノロジーを活かしたカジノで、

またこのカジノがキッカケでさらにその技術開発が進むというのだ。

その正体は・・・

ロボットカジノだった。


しかし、この誘致には、裏があった。

藤崎は親友の経産大臣の太田を動かしていた。

今までの借りを返してもらうと言って。

ただ、太田は友人の言葉だけで動く男でもないが。








3年後、カジノは完成した。

大レジャーランドといったものはなく、

巨大なホテルが数棟建っただけだった。

しかし、県内には多くの工場や研究所が建設されていた。

とは言っても、ホテル付近に肝心の外国人観光客の姿は見えなかった。

新潟は、ハブとなる国際空港から距離が遠すぎた。





ルーレット盤が回転する。

ロボットが玉を落とす。

『ミナサン、オ賭ケクダサイ』

このロボットがディーラーだ。

これがロボットカジノ?




『黒ニ賭ケマス』

タキシードを着たロボットが台にチップを積み上げる。

数台のロボットが競い合うように台にチップを並べていく。

そして、数字が書かれたルーレット台はチップで埋め尽くされた。

合計数千万の金額、このロボット台は富裕層向けだ。

そう、ロボットを操っていたのが、自国にいる富裕層らであった。

彼らがロボットを操作しているのだ。

バーチャルリアリティー技術を使うと、簡単に操作できるのだ。

『家にいながらカジノが楽しめるロボットカジノ』、

これが藤崎が考えた外国人富裕層向けのカジノのコンセプトだった。

日本らしい技術を活かすのに藤崎は重点を置いていた。


だが、家にいながらというと、ネットカジノがある。

でも敬遠されている。

勝っていると、突然、変な目がでるのだ。

赤が20回連続で出ると言うように。

だから作為があると勘ぐられてしまう、と経験者の藤崎は思った。

その心配を払拭させるには、人とロボットが同じ台で行う必要があった。





「ちくしょう~」

藤崎は両手を上げた。

最後の1枚、藤崎の望みを託したチップがロボットディーラーに吸い取られていった。

藤崎は顔をしかめ、出口に向かった。

おもむろに振り返る。

会場は人とロボットで大盛況だった。

藤崎は微笑んだ。

ジュリアの喜ぶ顔が目に浮かんだ。

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