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七人目は偽勇者?  作者: 木南
第三章
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第三十五話

早く戦闘終わらせるために説明はすっ飛ばしました。どのタイミングで入れればいいのか分からなかったとも言う。




 迷宮の壁と天井を赤く濡らした血。

 ……それは、ベルゼウスのものだった。


「ぬぅっ……!?」


 何が起こったんだ。

 俺には、ベルゼウスが爪を振るところしか見えなかった。


 胴体から血を流したベルゼウスが後ろに飛ぶ。再び愉快そうな顔になるのを、俺は呆然と見つめていた。


「ファファファ!良いぞ!まだ終わりじゃなかったか!」


「え?」


 興奮したベルゼウスの視線の先。

 そこにいたのは、傷が治りつつある南条さん……ではなく。


「……はぁ。本当は、隠しておきたかったんですけどね」


 やれやれ、と肩をすくめる二ノ宮さんだった。


「二ノ宮さん……?」


 隠しておきたかった、とはどういう事なのか。

 疑問に思ったが、特に考える事もなくその答えは出た。この後に及んで、まだ晒していない力なんて決まりきっている。


「まさか、固有魔法……?」


「まあバレますよね。その通りです」


 もう隠すだけ無駄だと思ったのか、あっけらかんと言う。

 割り切りが早いというか、何というか。平然としている二ノ宮さんを見て、俺は逆に冷静になってしまった。


 教えて欲しかったとは思うが、そもそも聞かなかった俺が悪いし、北川先輩と一緒に行動している事が多かった二ノ宮さんだ、「なるべく誰にも手の内は明かさない」方針を忠実に守っていたんだろう。

 それでも、流石に命の危機には隠していられなくなったってことか。


「ファファファ、面白くなってきた!第二ラウンドといこうじゃないか、そこの娘よ!」


「そこの娘なんかじゃありません!私には、二ノ宮鶇っていう名前があるんです……よ!」


 いつの間にやら手に持っていた小剣を、ベルゼウスに向かって投げつける。

 虫を払うようにしてそれを払い除けたベルゼウスは、笑いながら二ノ宮さんに突撃した。


「ファファファファファ!」


「はぁっ!」


 ガキンガキン、と金属がぶつかり合うような音が鳴る。

 二ノ宮さんが小剣を、ベルゼウスが爪をぶつけ合っていることは分かったが、俺にはそれを目で追うことが出来なかった。


「……速すぎるだろ」


 かろうじて剣閃が見えるくらいだ。

 先ほどまでは、ベルゼウスが遊んでいたんだということがよくわかってしまった。


「中々やるな!……では、こういうのはどうだ?【ダークネス・ランス】」


「っ!」


 一度距離をとったベルゼウスが魔法を放つ。

 浮かび上がった7本の黒い槍が、二ノ宮さんを襲った。


「二ノ宮さん!」


「【ライト・ブレード】!」


 小剣をしまい、二本の光の剣を握りしめる二ノ宮さん。

 闇を祓うように、襲いくる槍を切り捨てた。


「ほう!」


 アッサリと魔法を消されたというのに、ベルゼウスに失望の色はなかった。

 いや、それどころか、余計に高揚しているように見えた。


「なんとなく分かってきたぞ」


「何を」


「貴様の固有魔法とやらがだ」


 おい冗談だろ。俺みたいに分かりやすい固有魔法ならまだしも、二ノ宮さんの魔法はパッと見てわかるようなものじゃないぞ。


「いくらなんでも、そこの勇者と戦闘力に差がありすぎる。素の戦闘力でここまで対抗はできないだろう」


「それがなんだっていうんです?」


「強化系の魔法だな?」


「なっ!?」


「ファファファ、分かりやすいな」


 どうやらベルゼウスの予想通りらしい。まさか言い当てられるとは思わなかったのか、二ノ宮さんは動揺を露わにしていた。


 ベルゼウスは分かりやすいとか言っていたが、俺には全く予想出来なかった。こいつ、洞察力も魔王級ってことか。


「さて。タネが割れた以上、もう面白いこともなさそうだし……終わらせるとするか」


 ふっ、とベルゼウスが息を吐く。

 映像みたいに姿がぶれたかと思うと、二ノ宮さんがその場から消えていた。


「……は?」


 俺の後ろから爆発音が響く。振り向くと、二ノ宮さんがぐったりと横たわっていた。


 俺の時の、焼き直しみたいで。

 俺の時とは違って、何があったのかすら目で追えず。


「次はお前だ」


 ゆっくりと、俺の恐怖心を煽るように近づいてくるベルゼウスの姿に、どうすればいいのか分からなくなった。


魔王、本気出す。


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